2巻を新刊売り場で見かけて買ったら大当たりした。久しぶりにクリーンヒットした新人作家さん。大学を舞台にしたラブコメ作品としてバッチリ面白いし(特に2巻から)さらに個性強めの主人公の空回りっぷりとか、ダメ男なのに周囲を引きつけてしまう天性の魅力を持っちゃってる感じがひたすらに面白い。
個人的に大学を舞台にしたぬるーい漫画がすきだってこともあってハマりましたけど、いやこれラブコメ的にもめちゃくちゃ面白いぞ!!なんで今まで見逃してたんだろ、悔しい。きららフォワードを雑誌を追う習慣がないからか・・・!
http://seiga.nicovideo.jp/comic/32745
ニコニコ静画で試し読みができる。1話も読めるのでぜひぜひ。 というかフォワード本誌からニコニコ静画へ移籍している。せっかく面白いのに、もしかしてこれってピンチなのだろうか・・・わからん。そうだとしたらとてもとても勿体無い・・・!
江波くんと同じく大学は文学部だったってこともあり個人的に共感するところが・・・・・・あるような無いような・・・・・・。大学モノのラブコメって絶対数が少ないという意味でありがたいですし、そのうえこんなキャラもぶっ飛んでて面白い漫画があるとはな。
とにかく主人公の江波くんのキャラがいいんだ。見ているだけで楽しい。 最初のうちは1話完結形式で、いろんなヒロインたちが登場してそれぞれと絡んでいく。けれど江波くんは文学青年で、小説を書こうとしていて、その題材のために劇的でロマンとセンチメンタルあふれる学校生活を送ろうともがいている。運命に導かれたドラマチックな瞬間を目指している。そのことのこだわりが強すぎて肥大化した自意識に絡め取られまくりなのだ。ようするに、イタい・・・!
ドラマチックな人生を演出するためのヒロインを探して入るものの、ちょっとでも出会い方を間違えると「あれは運命なんかじゃなかったんだー!」と発狂して関係を絶とうとしてしまう。 それ以外にも弱点が多すぎる。カラオケが苦手。集団が苦手。いざという行動が意味不明になる。こだわりすぎて小説をまったく書けていない、などなど。
こうして挙げてみると大体やべーやつなんだけど、そういう不器用で狭量で理想化でナルシルトなところが全部彼の魅力でもあり、読者をイラつかせないバランスに保てているのも何気にすごい。ヒロインとのフラグをびみょう~~~に立てながらも自分でバキンとへし折ってヒロイン置き去りに走って逃げてって、「お前なぁ!!」って言いたくなる、それが楽しい。
ひとりで高まって、ひとりで怖気づいて、ひとりで挫折して、ひとりで憤ってる。 もう全部ひとり。彼だけの世界で完結してる。 最初っから最後まで、相手のことなんてお構いなしで失敗していく。
それが面白おかしくて、ああコイツ面白いな愛らしいなって思うのに、ふとしたときに自分から距離を撮ろうとする時の彼の表情や言葉だったりがやたら切なくて寂しくて、胸かきむしられてしまうのだ。
本当に自分勝手だし相手を見ていない自己憐憫のくだらない真似事なのに、残念なことにわかってしまう・・・こいつのやってることやりたいこと、分かってしまう・・・!!!この共感性・・・!!!
女性に理想を抱くのと同じように、いやそれ以上に自分への理想が強すぎるせいで生きづらさが爆発している。作品タイトルに「生きるのがつらい」は重すぎやしないかと危惧がまずあって、その上で読んでみると生きづらさがギャグ的に消費されているシーンも多々あるので、薄っぺらに感じられてしまう可能性もある。
でもじっと読んでみると、やはり節々に彼の等身大の「生きづらさ」はそこかしこにある。自己実現に苦悩して、みんなができるいろんな物事が下手くそで、鬱になるとか自殺するレベルではないんだけれど、こういうちっぽけな悩みの連続が学校生活には当然のように満ち溢れているんだよなーって、思い出して甘酸っぱくなってしまうのだ。
友達もいないしもちろん彼女だっていない江波くんだけど、しょぼいなりに青春です、間違いなく。
ふざけてるみたいだけど江波くんは真剣に自分の創作へ情熱を燃やしている。そしてゆっくりだけどそれは進んでいく。失敗だらけでも、理想通りじゃなくても、彼は進んで行けているのだ。
そしてそんな江波くんを見つめるヒロイン。本作のやべーやつ第2号。 ほとんど江波くんのストーカーみたいなことしちゃってる清澄さん。
江波くんのイタさを見抜き(いや見抜くまでもなくダダ漏れだが)、以降ひそかに彼の動向を置い続けている彼女。せっかく美人で引く手あまたのに、なぜか江波くんを追いかけちゃってる。彼女の願いは「江波くんをいじめたい」である。
いろんなヒロインが登場するけれど、彼女はちょっと違う立ち位置。江波くんの日常をかき乱すトリックスター的な役割を担う。 江波くんの日常をかき乱すようにストーリーを動かしていくんだけれど、第13話では江波くんの初小説をはじめて読ませてもらえるという絶頂モノの役目をいただくことに成功している。
今後は江波くんの理解者、協力者としてのポジションを負いながらも、ひそかに彼女自信の欲望を追求していく感じだろうか。江波くんをいじってるときの清澄さん、メチャクチャ楽しそうで見てるこっちもにこにこしてしまいますよ・・・!
清澄さんの手伝い?もあって文芸サークルに入ることになった江波くん。いろんなヒロインが登場する本作ですが個人的イチオシの娘がこのサークルの宇家さん。
いっけんクールなのに地味に妄想爆発型のヒロインでして、この第12回のエピソードはアンジャッシュのコントみたいなすれ違いの会話劇がメチャクチャつぼでした。むしろ江波くんと似ている部分がかなりあるような気がする女の子ですね。
でも出てくる女の子みんなかわいい。それでいて、この記事内ではあまり触れなかったけれど、創作へのアツい思いもしっかりと閉じ込められている作品なのです。応援したいなぁ。あとこういう主人公が好きなのはもう趣味で性癖なので、どうしようもないですね。主人公のキャラの濃さが好き嫌い分かれるかもしれないとも思いつつ、コメディとしての出来がなにぶんいいので広くおすすめしたい。