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いまサイカノを語りなおせる幸福。『最終兵器彼女原画展』感想

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最終兵器彼女の原画展がこの令和に催されるとはな。

2023年10月7日。初日に行ってきたのでちらほらと感想を書いていきます。

開催期間は10月22日まで。興味ある人はぜひ。

2018年にアニメのブルーレイBOX発売記念イベントに参加したのですが、その時にオフィシャル最後の祭りかと感じていたので、こういう大きなイベントが今あるとは思ってなかった。しかも今回は原作中心のイベントということで、これは行かざるを得ないというもの。

 

 

楽しみすぎて前日の夜、ちせのケツ画集を拝んで寝ました。

会場はスカイツリーそば、東京ソラマチ

入ると1Fにポスター展示を発見。会場はこの5Fです。

 

会場ブースは巨大ビジュアルが目印。

 

しかし中は当然のように撮影禁止。2箇所だけ、フォトスポットとして撮影OKな場所がある。

基本的にはストーリーを追想するようにハイライトシーンの原画と拡大POPが順路に貼り並べられている構造。

生原画ということもあり、写植がなんども張り替えられていたり、ホワイトで何度か書き直された痕跡が見れたり、なぜか”たれぱんだ”が透けていたり。。。(付箋?マスキングテープ?)そういった創作のリアルな裏側を感じられるのが興味深い。

アシスタントさんとの共有用と思われる、キャラクター設定、部屋や場面の俯瞰図や衣服の作画メモの展示もあり、ついつい会場に居座ってしまった。関連書籍などでも見たことがないものも多い、まさに秘蔵資料といった具合。

 

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客層としては思ったより若い方が多く、大学生とか20代前半っぽい層も目立った。男女比も自分の回だけでいえば半々くらいだったのが驚いた。額に浮かべた脂汗にセカイ系への執着を滲ませるアラサー・アラフォー男性が中心層だと思っていたんだが…?

リアルタイム世代ではない人たちにもこの作品が愛されていることが分かり、感動的な空間だった。

いつだったすれ違ったような”同類”のがっしりとした背中に安心と親近感を感じつつ、しかしみな思い思いに鑑賞していた。カップルだろうか、ふたりで小声で話しながら回っている人。ベテランの匂いを漂わす白髪交じりの人。フォトスポットでちせのフィギュアを取り出し撮影していた人。ときおり鼻を啜りながら、なんども同じエリアを行ったり来たりしている人。

ほとんど声の聞こえない空間で、しかしたしかに一つの作品を愛し繋がれている、ゆるやかで豊かな感覚。これが原画展の魅力だと思う。劇場とかライブ会場とかにも似た、リアルタイムで共有できているという実感。これを漫画というメディアで感じるのは意外と難しい。原画展のありがたさのひとつだ。

初日ということもあり、待ちに待ったというファンが詰めかけている時間帯だったこともあっただろうが、あの空気に触れられただけでも価値はあったと思える。

 

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フォトスポットその1。

作中では描かれることのなかった卒業式の展示。……この企画を考えたひとは本当に性格が悪いし、愛があるなと思う(これが両立するというのが不思議だ)

それにしてもアケミまではわかるが、ふゆみ先輩までラインナップされているのが面白い。ついついヘイトを買うキャラクターではある(青年誌としての意義が果たされているキャラクターとも思う)が、生来の人間くささが色濃くでていて嫌いになれない。中学時代にしこらせて頂いた恩義もある。

……しかしアクスタの「☆はじめて記念☆ シュウジ❤ちせ」の台座が共通パーツらしく、アケミもふゆみ先輩もこの台座にぶっ刺すデザインにしてるの、本当に性格が略。

 

どういう気持ちでこの台座に刺すんだよ、彼女いると知っておきながら男子高校生に手を出す成人女性だぞ?(買わなかったけど今になってほしくなってきたな。)

 

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フォトスポット2。今回のメインビジュアル。

あらためてちせの翼のデザイン見てたら、赤丸が結構インパクトのあるアクセントになっていたんだったな。物語初期の、ちょっとナマモノ混じってるようなデザインの印象が強いが。

今の高橋先生のタッチは当時のまるっこいちせというより、超常の存在かのような神聖さが感じられる雰囲気になっている。

このビジュアルが使われたB2タペストリーと、どう使うんだかわからない巨大な布ポスターを両方購入した。どう使おう。

 

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単純に展示だけ見てもエモーショナルな内容になっているのと、目に焼き付いてきた名場面の生原画を見れる貴重な場になっていると思います。とても満足度の高い展示会でした。

2023年に新規描き下ろしのグッズがこんなに出たというのもありがたい話。

間違いなく、間違いなく人生に刻み込まれている作品だけに、この作品のいまを語れる機会を与えてくれたことが何よりもうれしい。なんならもう1回行こうかな。

 

踏ん切りつかなくて注文せずに会場を出てしまったけど、複製原画がやっぱり欲しくなってしまった。

 

というか今回のグッズの充実度がすごい。

情報が出揃うまえは「お祝いにグッズ全部買うよ・・・」と準備してたら原画展HPをご覧の通り、グッズがめちゃくちゃある。全部は普通にムリ。

展示コーナーに1時間以上つかって挙げ句、物販も30分以上うろついてしまった。幸福空間。ずっと同じグッズの前で悩んでいた人と、ちょっと雑談なんかもできてしまった。

 

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セカイ系(今となっては死語だが、欠かせない一要素だろう)の文脈であったり、あるいは鬱マンガ鬱アニメとしてラインナップされていたり、いまこの作品にアクセスするとしたらそういったサブカルチャーな語り口からというのが主流だと思う。実際、メジャー誌の恋愛マンガとは思えないオルタナティブな要素がたくさん盛り込まれた作品でもあった。しかしただ尖っているだけじゃなくて、普遍的なんだよな。革新性と、根っこの部分にある豊かな人間性、他者を強くこいねがう切実さは、たぶん今新しい読者にまっさらな気持ちで読んでもらっても、なんらか心動かされる所はあると思う。今となっては古い作品ではあるが、俺はいまでもの漫画の演出はかっこよすぎるという話がずっとしたいし、ちせがとてもとてもかわいいんだという話をずっとしたい。1番好きなコマはどこ?ってワイワイしたい。俺は今日の気分だと「最後のデートが、終わった。」ってとこです。

 

連載終了から20年以上を経てこんな幸せな原画展が開かれたんだから、そういった「いつか」の希望を宿すことができた。いま、最終兵器彼女を改めて語れる機会をありがとうございました。