「正直どうでもいい?」

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リングに上がるには、まだ遅くないだろ。 『馬鹿者のすべて』1巻

「まもって守護月天!」まさかの新作に震えた。速攻でP買ってDLしました。

馬鹿者のすべて 1 (ヤングジャンプコミックス)馬鹿者のすべて 1 (ヤングジャンプコミックス)
(2010/09/17)
村岡 ユウ

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   自分が笑う人生を送りたい ヤングジャンプにて連載中、村岡ユウ先生の「馬鹿者のすべて」。 今回は先日発売された単行本1巻について。 ちょっとこのブログらしからぬ作品のチョイスですが、これがなかなかに面白い。 表紙もこれカッコいいんですよね、誰かに殴られてると思いきや・・・!という。 そしてビックリしました。 少なくともこの1巻では、1度たりとも、ニコリとも笑えませんでした、自分。 なんつーハードな話なのかと。 もうちょっと手加減してくれと思いましたよ。 見たくないですもん、こんな現実。全然上手くいかないリアルなんて。


主人公・宇治田は28歳のコンビニ店長。 学生時代に虐められた経験を持つも、特にそれを不思議がることはなく 平平凡凡とした人生を、「それしかない」と思い込んで、レジを打つ毎日。 そんな彼を突き動かす転機は、突然にやってくる。 夜勤を任せたアルバイト店員が、強盗に刺殺された。 自分の判断で夜勤を頼んだため、宇治田が感じる責任は重かった。 彼の葬式に参列し、彼の親に土下座で謝るも、相手は漫画の原稿を彼に渡した。 死んだアルバイト店員は、貧乏な実家への仕送りのためにバイトを頑張りながら 漫画の専門学校に通う学生だった。 彼から尊敬を受けていた宇治田は、その原稿を受け取り、読んでみる。 それは、ボクシングの漫画。彼が一生懸命に書きあげた作品だった。 主人公の決め台詞は「たかがジャブ、されどジャブ」――― これは宇治田の口癖が元となった台詞で、実際にジャブで試合に勝利するその漫画の主人公は、努力すれば夢はかなう、絶対に報われる、小さな積み重ねが勝利を生む・・・そんなことを、高らかに宣言しているかのようだった。 20100922002131.jpg 苦労人だったバイトの男の子が、必死にこの世に残したその物語は しかし全然、面白くなかった。 絵もド下手で、シナリオもありふれてて・・・本当に、しょーもない。 そして夢叶わぬまま、彼はあっさりと死んだ。殺された。 努力と苦労を踏みにじられ、こんなつまらないモノしか残せなかった。 彼にはきっと才能が無かった、自分のように。それは漫画を見て分かった。 けれどこの行き場のない激情が、止め処ない怒りが、宇治田を駆り立てる・・・! でもまぁ、、才能も経験もないド素人が急に一念発起したところで 簡単に全てがひっくりかえるほど、現実は優しくない。 あっさりと宇治田の浅い考えは打ち砕かれてしまう・・・。


この作品のテーマは、タイトルにもある通り、『馬鹿』。 諦めの悪い、向こう見ずで、身の程知らずな馬鹿であることだ。 高校時代に自分を虐めてきた男・南と再会した宇治田。 彼はすでにボクシングで才能を開花させ、TV中継で世界戦に臨む腕前。 女子アナとの熱愛が報道され、街の人々との関係も良好、子供たちにも大人気! 社会的地位、経済力、女、ボクシングの腕前・・・・・・完敗だ。 そんな男に、高校時代の怨みを晴らすべく立ち向かう主人公・・・。 いやぁ、心情的には分かるんだ。応援したくなるのは当然。 でもなぁ、涙が出てくるくらいみじめなんだ。 本人にとってはそれしか目指すべき場所が無いんですよ、南をこの拳をブン殴る瞬間だけを夢みて努力をするんですよ、過去に縛られ続けているから。 でも相手の南からすれば、世界を目指す彼からすれば、宇治田なんてどうでもいい。 今更過去を引き合いに出されて勝負しろなんて言われても、なんだよ今更という感じ。 本気出せば1発KOなんて余裕。宇治田から『貸りてた』金は利子付きで返してやった。 けれど宇治田はまだ諦めてない。 だって目指してるのは、謝罪を受けることでも金を取り返すことでもなく 南をこの手でブン殴ることだから。 それにしたって諦めが悪いな、この主人公! これまでの人生の中で、黙りこくって耐えてきたことの反動か。 でもね、もう全然ダメ。 20100922002112.jpg (クリック拡大) 必死に全身動かして、この拳がアイツに届くように走るけれど、追いつけない。 努力はしているよ、でもダメなんだ。 これが『才能の差』なんだよ。 凡人がどんなに努力しても、一握りの天才たちには、敵うわけがないんだ。 分かってるつもりだよ、そんなこと。 けど、素直に負けを認めるなんて、出来るわけがないだろ。 ってなわけで、28歳コンビニ店員宇治田くん、まだまだ諦めませんよ! だって、馬鹿だからさ! 全然カッコよくない主人公です。いいトコなんてほとんどありません。 けれど、勝負を続ける。続けるしかない。 そうでないと、自分は一生後悔することになる。 みじめなんだけれど、それは本人にも分かっていて だからこそボッコボコになってもリングからは下りない宇治田は、なんだかカッコいい。 まぁ、勝てる見込みなんて、これっぽっちも無さそうなのが現状なんですが・・・。 食らいついて食らいついて、まだ構えは解きません。


今後の展開次第でかなり評価が揺らぐ作品だと思います。 この一巻はかなり凹む内容で、読むのがしんどい人もいるかなと。 負けてばかりの主人公がどうなっていくのか。『馬鹿者』で在り続けられるのか。 かなり続きが気になるシリーズであることは間違いありません。 20100922002137.jpg 立ち上がれ、何も言えなかった男たち。 リングに上がるにはまだ遅くない。 他人に笑われてもいいだろ。 自分が笑える人生送るために、馬鹿になれ。 『馬鹿者のすべて』1巻 ・・・・・・・・・★★★★ 不公平に立ち向かえ、不器用男子!と言う熱い漫画。馬鹿になるのもいいじゃないですか。


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