「正直どうでもいい?」

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熱狂がぼくらの背中を押す『四月は君の嘘』2巻

四月は君の嘘(2) (講談社コミックス月刊マガジン)四月は君の嘘(2) (講談社コミックス月刊マガジン)
(2012/01/17)
新川 直司

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   君の音が聞こえる    出てから結構経ってしまいましたが「四月は君の嘘」2巻が出ています。 1巻が出てるだけの状態で2012年度マンガ大賞にノミネートされ、注目度を上げた・・・ような。実際、ノミネートされるのも納得の作品です。 特にこの2巻では開始以来、最高の盛り上がりが到来。大興奮で読み終えましたよ! 名作への階段を駆け登ってきた気がしました。いやあ、熱い熱い。 輝きだした、かけがえのない春。 『四月は君の嘘』1巻


コンクールにでるかをりの伴奏を依頼された公生。 トラウマから長らくピアノの表舞台から姿を消してきた彼が、再びステージに上がる。 男の意地を見える形でここにやってきた公生ですが、果たしてどんな演奏をするのか。 読んでいてドキドキが止まらない展開。そして彼らの版がやって来る・・・! ●2巻最大の見所はなんといっても、かをり・公生の演奏! この巻とても早く読めてしまったんですが、それはこの緊張感とスピード感と、なにより物語の面白さで一気に読んでしまったから。そして胸に残る満足感の凄まじいこと凄まじいこと! 今回で間違いなくこの漫画に魅了されてしまいました。 頭から背筋へゾクゾクと走る痺れ。こんなに興奮させてくれるなんて、幸せです。 引きずりこまれる。震えたつ。 表現するならそんな感覚が、もうずーっと続く恐ろしい内容。 一気に駆け登っていく興奮。緊張が身体を縛り付ける。しかし体の奥から渦巻き膨れ上がる力が、強い熱を帯びなが面倒くさい感情を吹き飛ばす。ステージの上で、鍵盤の上でで開放される音楽。それがどんどん人の心を動かしていく。 4月 演奏中の2人は直接言葉を交わしません。演奏中ですしそれは当然。 けれどお互いの目で、そして音楽で意思を通じ合わせる。 言葉でなくてもつながりあえる。応援や叱咤が音楽となって心を震わせる。 お互いに全力をふりしぼりながら間違いなくパートナーを意識している、この極限の信頼関係。いや、信頼というかもう闘いですこれは。その目は語りかけるのです。「もっと上へ、もっと先へ行くぞ」と。 互いが互いを挑発するように、どんどん高みへ登っていく。そして2つの音色は音楽として高密度に絡み合って、恐ろしい迫力でもってコンクールを支配する。 加えて公生はかをりの背中を見つめます。戦うかえおりの背中は、同じステージに立つ自分に諦めることさえ許してはくれない。公生は彼女に食らいつくように突き進んでいく。 1度は諦めて演奏をやめてしまう公生ですが・・・ああ、そこからの流れが壮絶!作中でもあった表現ですが、2人はまるで殴りあうように音楽を奏でる。 公生も伴奏という立場でありながら、主役のかをりを脅かすような存在感を発揮しだし、会場もどよめく。 あまりにも力強く光を放つ2人。本当に眩しくて、最高にテンションが上がる! ●痛快ですらある清々しいその演奏。 歓迎してくれるのは観客たちの歓声。絶頂に突き進んでいく観客たちの姿もまた魅力的! そしてただ湧き上がる歓声を描くだけでなく、その演出もお見事。 公生が何度もその光景を思い出すように作品内でも繰り返し描かれる歓声は、そのたびにあの演奏シーンの興奮を自分の胸に甦らせてらせてくれる。どれだけ公生がその光景を大きく受け止めたのかも分かるここ2巻一連の流れはすばらしいものだったなと。 音楽漫画における「観客」の描かれ方って実はとても大事だよなぁと思います。 読者はもちろん主人公に感情移入しながら読むことが多いんですけど、物語を外部から見ている立場からすればむしろ観客に近い。そして音楽の凄さってのは具体的な把握は難しいので、観客がどんなリアクションをとるかって部分で自分は感情を高めることが多いです。 他作品ですが「爆麗音」なんかは湧き上がる観客の描写が凄まじく、好きでしたねえ。 そしてこの作品も、観客の描かれ方が印象的でした。上手い。順調な奏者にまずは期待をよせ、途中の挫折から不安・不満を抱き、そこからそれを一気に解消させるカタルシスに我も忘れる様。それがスムーズに展開されるのです。 同時に観客のすさまじい沸きぶりに違和感もない、雰囲気作りと盛り上げ方も上手い。 みるみる高まっていく作品の熱に当然のごとくあてられて、自分も拍手喝采ですよもう! 4月1 拍手喝采で称えられる。それはコンクールでの評価とは別の栄光であり ふさぎこんでいた公生が掴み取った、1つの勝利の証なのかも知れません。


●コンクールを終えてからも、登場人物も読んでる自分も、あの興奮が忘れられない。 そんな中でやってくるのは、次なる課題の布石。 一回きりステージに立って拍手を浴びただけで満足か。違うだろう。あの熱狂に身をおいたら忘れられない。忘れられるわけがないんだ。 ボロボロになりながら歯食いしばって、泣きながらも這いつくばって必死にしがみついて、それを追っていく生き物なんだ。そんな演奏家としての力強いメッセージがガンガン飛び出す後半。 あの主人公がこんなにカッコよく変われたのだからすごいなぁ。まだ成長過程というか、乗り越えなきゃならないものはたくさんあるけれど、心底応援したくなります。 内容としてはよくありそうなものですが、この作品はなんでこう、次に何が起こるのかってワクワクしてしまうんだろうか! ●この2巻でキャラクター同士のつながりより見えたというか、強調されてきました。 男2人女2人がメインキャラで、それぞれが恋愛感情なり友情なりなんなりで関連しあっているんですが、それぞれの感情がより深化してきたことでさらにもどかしさが出てきました。 これぞ青春!な4人の今後の展開にも注目していきたいですねえ。 「もしかして好きなのかも?」なんてついオーバーな期待をしてしまう。そんな思春期男子くささもナイス。でも公生とかをりの関係は、恋愛抜きだからこそ面白いのかな。 色っぽい感情よりもっと野性味あって荒々しい、音楽家としてのつながりがある。 かをりの考え方は常に公生に影響を及ぼしてして、縛り付けの公生を解放させます。 今回でも、もともと性格な演奏がウリであった公生に向けて楽譜を「五線譜の檻」と言い放っちゃうところとかカッコよかった。公生はそこに必要なものはそこにあると教えてられてきたのに、楽譜を「檻」と言い切るその発想の自由さ!そしてそれを実現してみせた公生もよかった。 でもかをりがどうやら体が少し弱い?ことも示唆する描写も見られましたし、そこも今後気になるポイントでしょうか。


ざわざら書いていきましたが「四月は君の嘘」2巻感想でした。 そういえばこのタイトルに関するヒントみたいな描写も今回ありましたね。「嘘」というワードが登場しました。もう作中では4月は終わりそうですが、春という季節は今後も印象的に描かれていきそうな予感。あとは「君」は誰なのか気になるところ。 公生とかをりは互いに「君」と呼び合う場面がちらほら見れるので、やはりこれは主人公2人を指すダブルミーニング的含みがあるのかなーと妄想してます。 今回のオビには森川ジョージ先生が「音が視える。」とコメントを寄せていましたが、これにはなるほどなと思わされました。 この作品、音楽の音色に関して作中で擬音や効果音は登場しません。 しかし、その瞬間その瞬間に鳴り響いている音がハッキリと感じられるほどの臨場感! 常にモノローグや絵でどんな状況かを示してくれるし、暴れるような迫力を見せつける演奏描のおかげで、効果音無くとも淡白になっていない。この爽快な演奏描写も大きな魅力です。 モノローグも最初はクサいと感じていましたが、ここまでくると何から何までカッコいい・・・。青春の匂いを強く感じさせてくれる日常パートでの雰囲気もすばらしいです。 ストーリーにも繊細な心理描写にも大迫力の演奏にも、爽やかでかつ最高に熱い! 圧倒されそうなほどの熱量で描かれた物語で、読むものの心を震わせます。 1巻は導入をじっくりと描いた内容でしたが、いよいよ本筋が動きました。 3巻以降どうなっていくのか本当に楽しみ。 『四月は君の嘘』2巻 ・・・・・・・・・★★★★☆ 震えっぱなしの第2巻。最初の山を超えた感じです。期待がうなぎのぼり。