「正直どうでもいい?」

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誰かにプレゼントしたくなる短編全24作。『ストレニュアス・ライフ』

ストレニュアス・ライフ (ビームコミックス)ストレニュアス・ライフ (ビームコミックス)
(2011/06/15)
丸山 薫

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   シーロン公共図書館は また明日の皆様のご来館をお待ちしています 丸山薫先生の初単行本「ストレニュアス・ライフ」が発売されました。 丸山先生は商業ではこれが初単行本で、個人的にはまさに待望と呼べる1作! Fellows!創刊号から巻末で掲載され続けていたファンタジー短編作品たちが一冊になり、この単行本では24もの作品が収められています。 雑誌で読んでたときから単行本になるのが楽しみでしたねぇ。 250ページを超えるなかなかなボリュームで、多彩な物語をたっぷりと堪能できます。 表紙もちょっと独特な感じ(Fellowsっぽいですが)。ではどんな感じの本なのかを紹介。


24の短編作品を収録。そのほとんどが10ページ強ほどで、単行本で読んでると次から次へと新しいお話に出会っていける構造です。 コンセプトとしては「おしごとにまつわる」短編集ということですが、どれもファンタジー要素が含まれていてやたら夢のある作品が並んでいます。 公式?で紹介動画が製作されているのですがこれがとても作風を掴みやすいので どんな作品か知りたい人はこれを見てみるといいかも。まさかのアニメ仕様・・・!! [youtube https://www.youtube.com/watch?v=aIPLnIIIWHc&w=250&h=250] しかも大きく見ると高画質→ なにぶん1つ1つの話が本当に短く、雰囲気を味わって楽しむという側面も強い作品なので、大好きなのにがっつりと語るというのが難しいのがちょっと歯がゆいです。 「秘密にしておきたい、でも誰かにそっと教えたい、宝物みたいな1冊」 とオビにあるのですが、まさにそのとおり。 言葉にはしづらいのですが、絵本のような、宝箱を覗いているような感覚で読める漫画。 ちょっと不思議な風景・世界をいくつも見せてくれるのです。 では特に気に入った作品をいくつか。


・8A ウサギバスちょっと機転の利く運転手。 小さな女の子たちの仲直りのためにちょっ人肌脱いでみたり。 その世界観にほとんどなんの説明もされないのがこの単行本に共通する特徴ですが それが与えてくれるサプライズが、この短編は特にほほえましくて好き。 ところで丸山先生の描く女の子のかわいさは何気に素晴らしい。素朴なような。 ・工場の日々 読んでて一番「おーっ」となったのがこの作品かも。 いつもとある白い物を使っているらしいどこかの工場。そこで1人のバカな男がしたイタズラで、社会は大混乱。でもこういう夢のある混乱なら、ちょっと味わってみたい気も。 20110616001413.jpg ホムンクルス この単行本では珍しい、ちょっとブラックな要素を含んだ一作。 仕組みとしてはわりとよくあるタイプなものですが、単行本で読むとこれだけ毛色が違ってドキッとさせられます。世界のどこまでがホムンクルスなのだろう。 20110616001616.jpg 箱庭的閉塞感が、その中で起こる少し切ないイベントの印象をさらに強めてる感じ。 まぁそれが連続して、どこにでもあり得る研究の1ケースになってしまうのが黒い。 ・雲山の送り狼 少女と狼の2つの視点から描くお話。送り狼くんかわいいですね。 ・小説家助手 ネコの動作が妙に愛くるしいw 無愛想なようでちゃんと主人想いな助手ネコさん。 ・百万像の国 エッセーコミック風に始まる、ラオスを舞台にした作品。 ジャール平原という実在する場所を舞台にしたお話なのですが 現実とフィクションの境目をぼかしてありますね。もしかしたら、なんて気持ちに・・・ ・・・は、あんまりならないのは、このインパクトある見開きのおかげか。 20110616001703.jpg (クリック拡大) これが現実だったら・・・・・・いやいや、それはそれで面白そうかも知れない・・・!? ・セイレーン 時の流れって残酷ですね・・・。でもこういう普通じゃないロマンスの思い出も間違いなく素晴らしいもので。セイレーンさんが色っぽくかわいい。そこからの変化はちょっと残念なようで、でもいい年の取り方したようでニヤニヤしますね。 ベイジル爺さんの現在の情けなさは・・・まぁおいとこう。いい夫婦ですねってことでw


基本はほのぼのしたファンタジーものばかり。 何度も読み返して味わっては、それぞれの世界に想い馳せて楽しめます。 「やばい、超面白い!」と興奮する作品ではないのですが、じんわりと「いいなぁ・・・」という気分にさせられるといえば良いのでしょうか。いや、大好きなんですけど、上手く説明できない! 単行本ラストの「シーロン公共図書館」で、もしかしたらこの短編集の作品はすべてこの図書館に収められた物語なのかも、という形で上手くまとまっているのも好き。 絵の安定感もバッチリ。背景もしっかり描かれていますが、人物絵もシンプルながらいい雰囲気を出しているように思います。女の子もかわいいし、作画の面でもお気に入りですねえ。 24もの作品を収められているので、きっと好きな作品に出会えると思います。 「おお、そうやるのか!」と驚かされる、人とそれぞれの世界の時間。 ポップでファンタジック、色んな世界を一挙に楽しめる短編集。 プレゼントとして誰かに贈りたくなるような漫画は、久しぶりに出合った気がします。 『ストレニュアス・ライフ』 ・・・・・・・・・★★★★☆ 寝る前に気楽に読むのが合いそうな、ファンタジックな一冊。いい夢見れそうです。