「正直どうでもいい?」

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光の行方はその彼方 『恋は光』6巻

 

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恋は光、その最終巻。ようやく決心ついて読み終えた。 というのも俺と同じキャラクタを応援してた人が発売直後にショックを受けているようなツイートをしているのを目撃してしまい、読む前からテンションが落ちてしまうマヌケな事態に。 とは言えいつまでも積読わけも行かず、勝手に失恋したような気分もようやく抜けたこの頃、ようやく読み終えた次第。

なぜ秋★枝先生を信じることが出来なかったのか?という反省しかない。

良い、漫画だったな。 なにを恐れていたのか。北代という素晴らしい女の子の晴れ舞台を恐れて逃げた自分が恥ずかしくて嫌になりますよ。 こんなにもまっすぐに「恋とはなんだろう」という問いを見つめ、慎重に言葉を探し続けた本作だからこそ、たどり着けた境地に感じる。恋愛漫画において非常に綱渡りな結論を出したとしても、なんかこう、腑に落ちる感覚があるというか。 展開を台本として読んていたならきっと不満があったろうけれど きちんと本心からの言葉で登場人物たちが想いを吐露していく。 切ないシーンも続きますが、ドンヨリと暗くなりすぎない絶妙な暖かみもある。

北代ちゃんをどうして応援していたかを自分なりに分析してみると浅はかなもんで

・長年の片思いが報われてほしい ・主人公とフラットに付き合ってきたので未来がイメージしやすくて安心 ・女房感

というね、ある種同情のような、というか「報われてほしい!!!!」ってのが八割ですよ。でも確かにこれ見直してみると、恋愛対象というより・・・保護対象的な・・・。

6巻で暴走告白しちゃったときは、普通の漫画だったら負けフラグかなと思いましたけれども作者の秋★枝さんは結構以外な展開も放り込んでくる人なので、もしかしたら、と。 結果はまぁご覧の通りでしたが、フラれ方がお見事。負けの美学というほどカッコよくはない。けれど二人の歩んできた時間の、その重さを、その価値を、お互いがどれだけ大切に思っているかがしっかりと伝わる。酒で飲み下した苦い感情。

本当に、美しい恋をしてきたんだ。 震える子犬をそっと毛布で包んであげるような。 恋愛とも母性とも依存とも取れるような、穏やかで清らかで、閉じた恋を。

けれど西条は恋とは受け取らず、そこが自分の居場所であると、家族からの無償の愛のように受け取ってしまった。 男女の関係とは程遠い、清潔でオリジナルな関係だった。それはとても得難く、作中でも言われていたように「特別すぎた」。虚しくもなるわ。でも西条はクズい一面もあるがこと結論を出す場面に置いては紳士的だし、本当にその女性との関係ついて思考に思考を重ねたような、熟慮の後が見える台詞回しも好感度が高い。そして北代ちゃんが西条の言葉に、彼女がこれまで過ごした時間が報われたかのような、切ないカタルシスを覚えたのが印象的でしたね。

「ずっと一緒に居たのにそれをフッちゃえる人なんだ」という不満を言う宿木に対して、一緒にいる、ただそれだけしかしなかったと振り返る北城ちゃんの ちょっと困ったようないつもどおりの下がり眉の表情が、グッと来ますよ。

彼と彼女の関係は絶対に間違ってはいなかったし掛け替えのないものだけど けれどずっと二人で生きていくには、最初から近すぎたのかもしれない。

北代ちゃんが好きなだけで別に他のキャラが憎いんではなく 東雲嬢も宿木さんも、この全42話の連載の中でどんどん輝きを増していって大好きでした。ギリギリのバランスで成り立っていた3人の関係が、「恋ってなんだろう?」ってこっ恥ずかしいことをそれぞれを観点と感覚と温度で語りだすのが心地よかった。 お酒で大失敗する7巻の東雲さんなんかは、こういっては本人に可愛そうだけれど、あれがあったからこそ「美しい恋をすることができない自分」を自分のキャパ以上に認めざるを得なくなって、人としての魅力も上がったように思う。カッコわるい自分にクヨクヨ悩んじゃうなんてこと、マイペースに生きてきた彼女にはなかなかない体験だったろうから。そして作中で言われていたとおり恋愛なんてひとりでやるもんじゃなく、ペースを乱されて当たり前なのだから、そういう意味で東雲さんはひとりの女性としての変化が著しく魅力的で、ただしく正ヒロインだったのだな。

改めて最終巻を表紙を見て、思わず泣けてしまう。 作者の祈りのような、みんなのやさしさが手向けられているような。3人が揃って仲良く、そして光を放つ。 もちろんそれはすでに失われてしまった光景かもしれない。けれど 砕け散ったラストのその先にある未来だとしたら、あまりにも暖かいワンシーンだ。 光はだれに灯るのだろう。どこへ行くのだろう。恋とはどんなものだろう。 その光を見ることは出来ても、その思いの行方までは誰にもわかるはずがない。

 

本能でする恋と、学習でする恋。 このふたつの違いをじっくり腰据えて語るという切り口の面白さもあるし、尺も全7巻。ドラマにするとかに丁度いい尺なのでは??

完結巻をよむのにだいぶ経ってしましたが、間違いなくオススメできる作品。 「煩悩寺」もそうだけれど、日常の中でゆっくりと時が経ちそこで感情が高まっていく静かな盛り上がりを形作るのが本当にうまい。そして大変にツボなのです。

草壁さん

http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF01200215010000_68/

もう新連載も始まってましてこれもまーーーーー最高な気配がしますよ。 たいへんえっちです。おっぱい。オススメですね。