「正直どうでもいい?」

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甘く淡くちょっと切なく過ぎる14歳の日々。『14歳の恋』2巻

14歳の恋 214歳の恋 2
(2012/06/30)
水谷 フーカ

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   これが恋でないというなら この胸の音に 何と名前がつくだろう  だいぶ書くのが遅れましたが「14歳の恋」2巻の感想です。熟成させすぎた。 感想書くにあたってまたじっくり読み返してみたのですが、はぁー・・・本当に甘酸っぱい。そして存分にニヤニヤしながら悶絶できる! 恋愛アンソロジー「楽園」で連載されている本作は、そのタイトルどおりの思春期まっさかりな男女の恋がやさしく触れ合って読者が爆発する青春漫画。なんじゃそりゃという感じでしょうが、私は奇声を上げるのをこらえながら読んでいます(断言)。 ノスタルジックで軽やかな空気で満ちており、とても雰囲気がいい。 思春期のいじらしい恋心に、なにげない日常が彩られていく。ああ爽やか。 表紙もかわいらしい。意図しているのかな。2人で作る空色のハートマーク。


「2年B組の田中彼方と吉川和樹は、周りに比べて大人っぽい」 この作品を象徴するかのような一節です。 この巻のオープニングをかざる第6話は、この一節をさらに深める形で、14歳の身体にやってくる変化を、そしてそれに戸惑う彼らを描いた内容。 2人がお互いの身体の成長を感じ取るエピソードで、しょっぱなから破壊力バツグンです! 143.jpg 「いつのまに こんなに変わっていたんだろう」なんて、相手の変化にドキマギする。 少年は少女に、少女は少年に。 小学生のころと同じ感覚で触れ合って、でも相手の意外な柔らかさやたくましさを知ってちょっと気まずくなって・・・あああああもどかしい!かわいい!! で、恐る恐る確かめるように「触っても、いい?」ですよ。顔真っ赤にしちゃって。 相手の身体がこんなに変わっているということにドキドキする彼らですが でも「自分が大人の身体になってきている」なんて自覚はできていないようで。 いやいや、相手もそうだけど、あなたも自分が思ってるより大人になってるんですよ。 そういう意識と身体のすれ違いやアンバランスさも思春期の愛おしさよジ゙ュルリ 彼方が和樹ののどぼとけを見て大興奮する第8話とかも、微笑ましさで爆発しそう。


主人公2人は相変わらずと言えば相変わらずな青春を直進している横で 2巻はサブキャラクターらの魅力が存分に発揮された内容でもあったと思います。 ガラが悪くてクラスメートの大半は近寄りがたく思っている長井くんですが 彼が日野原先生におちょくられるシーンはいちいちニヤけてしまうw 日野原が隠し持つS属性をうずかせてしまうばかりに、長井くんは結構ヒドい目に・・・。 たしかに長井くんはヒネクレ者なのか、クラスで浮いた存在ですけども、14歳のそれなんてそこの知れたものというか。 いやそこがしれない人や場合もあるだろうけど、長井くんは多分チョロい(色々)。そういうのを簡単に見破れてしまう先生だから出来るんだろうなぁ。 しかし!しかしですよ!2巻でもっともニヤけてしまうシーンはこれですよ! 142.jpg ぐもーっ!先生ー!! 些細なことで起きた形勢逆転。けれどそんな時にちょっとだけ大切にされて、この照れ顔であります。なんなのこれ。普段の強気なあの先生がこんな・・・・・・乙女か!!乙女だわ!!! ということで最高にかわいい日野原先生に胸いっぱいになるのです。 そしてここで普段の仕返しなんてできない、根本的な部分でイイコな長井くんにほっこり。 ここにも14歳の恋がある。 そして2巻からの新キャラクター、志木さんも注目したいところ。 周囲にあかせない恋をしているという点で彼方と和樹も切ない境遇ですが、志木のそれはさらに辛いな。彼女のモノローグはいつもチクリと心に刺激がくる。 しかしそれでもひたむきに恋に向かっていく志木さんの姿も、やはり眩しい。 「14歳の恋」というタイトルだけあり、ここにもまた、1つの美しい恋がある。 ちなみに2巻の書き下ろしはこの志木さんが主人公のエピソードで恋におちる瞬間の彼女を見ることができます。このシーンのなんと美しいこと。俺の心のやわい部分がそろそろ悲鳴をあげる。 141.jpg 1コマ1カットそれぞれがハッとさせられるくらい鮮やかにキマる瞬間が多々あって、水谷フーカ先生の漫画の上手さを感じます。なめらかに流れていくような読みやすさと美しさを備えた演出に惚れ惚れします。


水谷フーカ先生といえば「ロンリーウルフ・ロンリーシープ」などの百合漫画群もたまりませんが、個人的には「14歳の恋」は飛び抜けて好きかもしれないなと。 14歳という年齢が持つ不安定さを実に上手に描き出している。悶絶につぐ悶絶である。 主人公だけじゃなくサブキャラたちの活躍も目覚しいのは、記事で書いたとおり。 けれど彼らが特別ではなくて、14歳のみんなそれぞれに変化は訪れている。密かに大きく変わっていく、その只中にある中学生たちは、ノスタルジーを掻き立てられるじゃないですか。 男と女がハッキリしだして、妙に意識しすぎて空回ししてうまくいかなくて・・・そんななんだか痛々しくも甘く懐かしいあの頃が蘇るみたい。あの微妙な空気をうまく閉じ込めています。 この作品はそんなに熱血で膨大なエネルギーを蓄えた作品、というわけではないと思います。あくまで作品事態はとても軽やかで爽やかで、心地いいものです。 けれどこの作品が読者に残していく興奮は、読んだそばから自分自身の中で膨張してはちきれんばかりになっていく。たまらず胸をキュンとさせてくれる。なんかもうたまらなくなる。 14歳の恋は甘くて、苦々しくて、強くて弱くて。素敵。 『14歳の恋』2巻 ・・・・・・・・・・★★★★ この雰囲気、ツボだなぁ。甘く淡く軽やかに、確かに感情を揺さぶる中学生の恋。