「正直どうでもいい?」

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予測不能な恋と混沌の世界を疾走せよ『クラスメート、上村ユウカはこう言った。』1巻

クラスメート、上村ユウカはこう言った。(1) (ガンガンコミックスONLINE)クラスメート、上村ユウカはこう言った。(1) (ガンガンコミックスONLINE)
(2011/12/22)
桜井 慎

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   私を殺して?ロボットのお人形さん? ビバ表紙買い。いやだってムチャクチャ可愛いじゃないですか表紙! 「クラスメート、上村ユウカはこう言った。」(キミを骨抜きにするんだからねっ) と長いタイトルの作品。こういう作品は記事のタイトルも長くなる。 それはどうでもいいとして、こんな表紙を見つけてしまったら買っちゃうじゃないですか。 この表紙デザインからして自分が想像できた内容は、いわゆる巻き込まれ系ラブコメで、当然そういうのを期待して読みました。ところがどうも様子がおかしい。 期待していた感じからだんだんとズレていく。でも、これ面白いぞと! いろいろ予想外にぶっ飛んでいく電波少女×SF×ラブコメストーリーです。


上村ユウカはおかしなクラスメート。 突然に「この世界は病んでいる」とか意味不明な演説をしだす。クラスメートを「ゴミどもが」と見下しながら登場。くるくる変わる態度の表情。面倒くさくてクラスの誰も彼女の相手をしない。 上村ユウカを腫れ物扱いするこの教室を相手に、今日も彼女は元気いっぱいに狂っている。 主人公・白崎修士は気まぐれに彼女に意地悪な言葉を投げかけた。 そんなささいなキッカケが、修士を上村ユウカの誘う世界へと突き落とす。 クラスで浮いているヒロインと、皮肉屋な主人公。教卓での謎演説。 ちょくちょく見かけるシチュエーションから幕開けて、ついつい自分も「こういう作品ね」と読み進めてしまう第1話。しかしそれがトリック。表紙やオープニングからは予想のつかない展開に転がり落ちていくのが快感! おかしいのは果たしてどちらなのか。第1話からグイグイ惹きつけられました。 表紙から予想された展開をさくっと裏切ってみせる、狙いすました仕掛けです。 その全貌はぜひとも実際に読んでいただきたいなと! 予想を裏切る展開に向かいはしますが、立派にラブコメしちゃってるあたり、上手い。 本作の看板娘、上村ユウカがこの作品の最大の魅力。なんにせよ、かわいいのです。 オープニングから彼女の強烈なキャラはフィーチャーされ、そこから物語が転がりだします。 そんな彼女の『予測不能さ』が物語を盛り上げるのと同時に、ラブコメにおいての素晴らしい働きをするのですよ。 次にどんな行動にでるのか、どんな言葉が飛び出すのか。わけがわからないヒロインだからこそ、見ていてドキドキしてしまうのです。 上村2 ここだけ見ればベタベタなラブコメじゃないですかー! 普段は厨二病をこじらせたイタい子みたいで、でもときどき純な表情をみせてくれたり、人を食ったような言動の中に自分の本音をこっそり忍ばせてもいたり。彼女の言動に目が離せません! 他にもうっかりおっぱいを揉んじゃったりしますし、やっていることやそのシチュ事態は王道のラブコメそのものです。 しかし物語への組み込まれ方がちょっと普通ではない。普通のラブコメを楽しもうとする自分をおちょくってくるように感じるのです。それは上村ユウカの、底の見えない性格の影響かも。 そしてラブコメとは別方向に意識を向けさせて、そのまま見事に楽しませてくれる。見事にクルクル踊らされた気分ですよ。でも決して悪い気はしない。むしろ、「こっちに持って行くのか!」とニヤニヤさせてくれるのです。だって、どんな方向にだってすごく青春しているのだから。 物語と同様に『予測不能』。それが上村ユウカの魅力。 上村3 本当にこのヒロインは表情豊かだなぁ!そしてそのどれもがかわいいから困る! 小難しいことは置いといても上村ユウカはかわいいのです! 人懐っこい笑顔を向けてきたとおもいきや、小馬鹿にするかのような笑みを浮かべたり、顔を赤らめ主人公に見惚れたり、はしゃいで引きずりまわしたり、感情いっぱいに涙を溢れさせたり。 子供っぽくもあり、怪しいお姉さんのような風格もあり。なんだろうこの女の子は。 物語に、そして上村ユウカにうまいように踊らされるのが楽しいんだなぁ。 序盤は彼女にいいように踊らされているような感覚ですが、しかし後半から徐々に変化。 主人公が覚醒したかのように活躍を始めると、再び雰囲気が変わります。 理不尽で得体のしれない世界をぶっちぎる熱い叫び。まるで少年漫画! 上村1 お姫様だっこされて、熱っぽく主人公を見上げる上村ユウカちゃん素晴らしいですな! この1巻終盤の疾走感もまた個人的に大変ツボ。そういう方向にもいけちゃうんだ?みたいなドキドきが。でもそれで特に違和感なく通れちゃってるのがこの作品の意味不明な楽しさ。 2巻へのヒキも強烈。すごく気になる所で終わりましたし、これは次も買わざるを得ない。


そんな「クラスメート、上村ユウカはこう言った。」1巻でした。 期待していたラブコメも最高なのですが、どちらかというと予想していなかった方面の面白さにゾクゾクきた作品。予想外だ予想外だと書きましたが、どう予想外なのかは読んでご確認ください。 ストーリーはもちろんのこと、作品の魅力を大きく引き出している作画も素晴らしい! クッキリとした線が好印象のシャープな作画。特にキャラクターの多彩な表情から作中漂う不穏な雰囲気もお見事。なにより綺麗で見やすいんですよね。 ストーリーも良かったと思います。いい具合に転がされました。 ただ、世界観が(今のところ)ふわふわしていることは感じます。「何を信じればいいのか?」は本作のポイントの1つですが、それで作品の軸が若干見えづらくなってる部分はあるかも。それだけなく説明が全体的に足りてない?まぁ、そこは第1巻ですしね。 うまく立ち上がれていないままに走りだしたような作品なので、どこかで一旦歩みを緩めてじっくり舞台をみせて欲しいです。 でもそれがこの作品の行き先不透明な面白さの1つかも。次になにが来るか予想不可能だという意味では、このドライブ感もマイナス点ではないかも知れません。 閉塞感のある世界観と、カラを破ろうと突き進む主人公たちの熱さも見所。 いちいち演技がかったセリフも捻くれていて自分は好きな感じ。 とりあえず、表紙とかを見て絵が気に入ったら購入を薦めたいです。 作画や物語も高水準で、本作を象徴する少女・上村ユウカのかわいさもきらめく。 恋も電波もギュンギュンほとばしる、先の読めない疾走感。これは、いい。 『クラスメート、上村ユウカはこう言った。』1巻 ・・・・・・・・・・★★★★ 期待を裏切らずにさらに斜め上に突き抜けた快作。騙された分、楽しめました。