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ついに終戦。憎しみの果てに何が残るか 『ブレイクブレイド』10巻

ブレイク ブレイド ? (Flex Comix)ブレイク ブレイド ? (Flex Comix)
(2011/08/12)
吉永 裕ノ介

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   ――そうだ ジルグなら こいつに勝てる 発売されましたブレイクブレイド10巻。 熱く盛り上がってきた王都防衛戦。新装甲をまとったデルフィングが登場した9巻のラストからテンション上げて待っていたわけですが、いよいよ、ライガットとボルキュスの直接対決です。 読んでる最中はもうテンションMAXですよ。いやー、面白い!カッコいいなクソ! ではさっそく感想へ。今回触れたい事がネタバレになる部分が多すぎるので注意。


突如発動した、王都防衛戦のカギを握る超重要作戦「人柱。」 それは、あえて王都に深く敵軍を侵入させ、敵の陣形が経路にそって細長く伸びたところを、城壁に隠れていたゴゥレムが攻撃をしかける、いわば王の首をオトリにした奇襲作戦でした。 悠長に構えてはいられない状況。求められるのは大群の中の敵将をはやくに討つこと。 ライガットはこの作戦のメイン。一気にボルキュスに近づくべく備えた、手裏剣のような新型武器・巨大投擲武器を使い、護衛隊を一掃!あっと言う間にボルキュスとの一騎打ちに! こんな作戦、ライガットとホズルの信頼関係がなければできませんよねえ。 あえて敵に侵入させるなんて、失敗したら最悪な状況になるのに。それでもこの作戦について考えた時、まず自分の聞けんよりも、ライガットに大きな危険が伴うことを恐れていました。 ホズルはライガットの親友として、なにより一国の王として、判断するしかない。 彼がライガットの力を信じていなければ、こんな作戦成り立つはずがないのです。ここにもかつて育まれた友情が活きてきますねぇ。ホズルは表立った活躍はまだありませんが、想像してみればなかなかカッコいい部分を担っていると思います。 まぁとにかく、ボルキュス戦です。 憎しみと殺意でギラギラしてるライガット、新装甲&新武器でモチベーションも最高。 一方、護衛を一掃され孤立してしまった戦争のカリスマは、しかし不敵に笑うのでした。「近づけば私に勝てると思っているようだな。逆だ小僧」。いいよいいよ、啖呵切ってこそだ。 20110824010005.jpg (クリック拡大) 今回のバトルは、これまでこの作品に自分が感じていた数少ない欠点、ゴゥレム同士の戦闘になると動きがやや分かりづらいということが、解決されていたように思います。 ブレイクブレイドという漫画のロボットバトルは、実に重苦しいです。空は飛びませんし、ビームなんてありませんし、敵を鮮やかに真っ二つ!なんてこともありません。ドスンドスン走る。無様に砕ける。それがいい。けれどこのボルキュス戦は、過去最高に鮮やかな戦闘シーンだったと思います。 動きが分かりやすいいちいちハデで面白い。これぞ魅せるアクション! 城壁から飛び出して、ボルキュスまでの距離を敵を蹴散らしながらすごい勢いで爆走していくところとか最初からテンション上がってしまいます。 さらに上に宙で一回転しながらイーストシミターでヒュケリオンの左腕をぶっちぎるところとか素晴らしい!そこからデルフィングの着地を狙って突き立ててきたヒュケリオンの残る右腕を、着地と同時に方向転換して切り落とすところ(上の画像)とかもう!最高じゃないですか! 長く待っていた決戦シーンだけに、やはり相当気合いが入ってました。これは熱い。


そしてここからさらに面白くなる。 ライガットとジルグの繋がりは、ジルグが死んでもなお一際輝いています。 戦闘中ライガットは、自分の身代りに死んだ、1人の男の姿が想っていました。 「ジルグなら こいつに勝てる」「あいつは…止まらなかった。全て速かった」 戦いながらそんな風に、自分の代わりに死んだジルグのために、「ジルグになろう」としていることが感じられますね。戦闘センスや操縦テクニックなど卓越した能力を披露し、ライガットが強い憧れを寄せたジルグ。 ライガットはジルグを処刑したジルグを、シルグの仇として殺そうとしていたと同時に、ジルグになりきって「ジルグVSボルキュス」の構図を本来なるはずであった(とライガットが信じる)ジルグの勝利という形に持って行きたかったのかも知れません。 どことなく今回の戦闘には、ジルグの力を証明して見せたい気迫もあった気がします。それが、ジルグに生かせてもらった自分の使命だと、ライガットが感じているのかもしれません。ジルグの動きを参考にしながら、自分が彼に成りきり、代わってボルキュスを叩き潰してやりたい。 やや妄想入り過ぎてる感はありますが、個人的に一層燃えるシチュエーションに! 戦闘中のライガットのセリフやモノローグは、最低限しかありません。 それでも彼が感じていることや、渦巻く感情は、恐ろしいほど力強く伝わってきました。 そして今回、ジルグが死ぬ前にライガットに何を言い残していたのかが分かりました。 みんなが簡単にできても、彼には難しい、なにか。 20110824010014.jpg それは親孝行でした。 ジルグとバルドの父子の関係は、やや雰囲気を掴みかねるように自分は感じていたんですが、ようやくはっきりしました。これはジルグが心の奥底ではしてみたかった希望なのかも知れません。 彼のその言葉を聞いていたからこそ、ボルキュスの動きを封じ切ったとき、殺すか捕獲するかの選択をジルグの父親のバルドに任せたんですね。 けれどボルキュスの明かされる新事実が、ライガットの理性を完全粉砕。 ボルキュスは、ジルグが黒銀のゴゥレムのパイロットではないと知っていたのだ。 ジルグの死は、ボルキュスを欺けてはいなかった。無駄死にだったとは言わない。けれどジルグが命を賭して見せた決意は、未来へ繋ぐ勇気は、ボルキュスの手のひらの上で踊らさせていたにすぎなかった。それは間違いなく最大級の屈辱だ。ジルグの死を、遊んだのだ。 殺意に堪え切れないライガットの刃は、「生かして捕えろ」の命令を無視し、ボルキュスの身体をつらぬいたのでした。そして叫ぶ。 20110824010017.jpg 咆哮しながらのこの表情。ダークサイドに落ちてしまったみたいな迫力ですよ。 直後にライガットの表情は無くなり、涙を流しました。 戦争は決着。事情を知るものの胸には、猛烈な虚無感をのこして。


思わず無駄に長文で書いてしまいましたが、面白すぎてもう。身震いしっぱなしですよ! これまで長らく積み重ねられてきたものを締めくくる、大満足のバトル。 そして当初から精密に描かれてきた本当の「戦争」の姿は、この偉大な結末にも、もの寂しく切ない足跡を残しています。これぞこの作品の味。気持ちのいい戦争の終わりなんて描かない。 劇場版アニメのラストとはだいぶ味わいの違った仕上がりになりました、 また、ストーリーも大きく動き、変化しました。 じっくりと進められてきた物語が、ここで初めて大きな節目を迎えたのです。 なによりボルキュスの死、戦争の一時終結。これらは非常に大きなものであるはず。 この結末が、この先物語に何をもたらすのか。まだ解決していない点は多いです。 それにしても、みんなカッコよすぎるんですよ。 ライガットの鬼気迫る表情はもちろん、他のクリシュナ戦士たちも、敵であるアテネス軍幹部たちも茶苦茶カッコいいです。ボルキュス将軍とか、最後までヘタれず威厳を保ったまま死にましたね。最後まで戦人らしく。 死者をめぐるその後もしっかりと描いてくれる作品なので、ボルキュス将軍の家族の描写も、今後あるんでしょうか。これも楽しみですね。 しかし影ながらに、実は今回の戦闘で1番カッコいいんじゃないかという活躍をしたと思う人物も、今回ひっそりと亡くなりました。彼の雄姿を忘れるわけにはいかないのです。 20110824010009.jpg うおおおおザンス執務次官殿ー!!! ごめんー!てっきりダメ野郎だと思ってた!撤回撤回!男前すぎだよザンスさんー!! …さてここから10巻の初回限定版のことも少し。

ブレイク ブレイド 10 限定版 (フレックスコミックス)ブレイク ブレイド 10 限定版 (フレックスコミックス)
(2011/08/13)
吉永 裕ノ介

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限定版は、通常版とは違ってシギュン様がお麗しい別カバー。 それと設定資料集vol.1が付いてきます。vol.2は11巻の限定版に付属予定。 登場ゴウゥレムたちのパラメータ情報や、名場面集的コラムも嬉しい仕上がりです。 あの「至高のゴゥレム」ことアキレウスさんの詳細なデータも!テュペル家のファンは要チェックですね。ものすごく偉そうに登場してほぼ2ページでカッコよく瞬殺された名場面を思い出します!こんなネタキャラ&ネタゴウレムにまでしっかりと設定が作ってあるなんて…。 ドクター・ヘパイスの存在が強いのも注目したいですね。シギュンとの師弟関係とか、今後物語に深く関係するようになっても面白くなりそうじゃないですか! それと吉永先生へのインタビューへのインタビューも興味深かったです。 一段落つきましたが、物語はまだまだ終わらないどころか、より盛り上がっていきそうですね。 また、ここでしか読めないであろう書き下ろし漫画が9ページ載っています。 10巻では登場がなかったクレオちゃん。祖国に戻って家族とのどかな日常へ…。 そしてこのオマケ漫画では、お母さんのエレアさんと母子一緒に寝ることに! エレアさんは本当に1児の母かよとというルックスでかわいいですね!さすがは童顔巨乳の遺伝子を継ぐサーブラフ家です。というかエレアさん28歳ですよね。それでこれは反則だ! 20110824010012.jpg 心やすまる、温かな1シーンですね。 しかしこの後、クレオに悲劇が・・・!エレアさんのかわいいけれど危ない1面が初披露される短編になっています。これはサーブラフ家ファンのみなさんは要チェックですね! と、なんだか本編と合わないノリのままブレイクブレイド10巻感想、終わります。 『ブレイクブレイド』10巻 ・・・・・・・・・★★★★☆ 怒涛の一冊!シリーズ最高の盛り上がりです。限定版のオマケ漫画もよかった!