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戦争の傷痕と、喪失を癒すそれぞれの旅。『ブレイク ブレイド』11巻

ブレイク ブレイド11 (メテオCOMICS)ブレイク ブレイド11 (メテオCOMICS)
(2012/11/12)
吉永 裕ノ介

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   貴方は卑怯だブレイクブレイド」11巻が出ました!10巻は去年の8月・・・1年以上ぶりです。 実はけっこう長い間、連載がとまってしまってかなりハラハラさせられた時期があります。 フレックスコミックスってそこらへん結構ビビらされるんですよね・・・と思ったらこのブレイクブレイドフレックスコミックスから抜け出して「コミックメテオ」というWEB雑誌に移籍。というかそのあとからフレックスコミックス自体がコミックメテオに合体したり。なんか複雑です。大人の事情はいいのです。面白い漫画が読めれば! この11巻もメテオコミックスから発売されました。背表紙やタイトルロゴも一新されましたね。まぁ背表紙は1巻だけデザイン違ってたり、もともと統一感あんまりないからいいや! さてテンション上がっていますが内容の話に。感想書きます。 前巻→ついに終戦。憎しみの果てに何が残るか 『ブレイクブレイド』10巻


長らく続いた戦いに終止符が打たれました。 激アツだった10巻からしばらくまたされましたが、別の視点から見れば、この長い空白期間はいい区切りとなったのかもしれませんね。 11巻の内容はずばり戦後処理。激闘の果てにある、現実的な事柄が描かれていきます。 一息付くかと思われましたが、しかしここから新たな戦争の動きが見えたり・・・! ●戦争をめぐる人間ドラマと、傷を癒す旅と 11巻は、自分がブレイクブレイドで好きなポイントがしっかり現れていました。 それぞれの戦士たちの人間ドラマがそれ。 戦争を終えた今、一時的に安らな空気が流れる。けれど戦争で傷つけられた心はそのまま。脳裏に焼き付いた凄惨な光景。戦士たちの苦悩は、戦いを終えてもなお続く。 戦争に身を置く人間たちのそれぞれのドラマは熱く重厚で、切ないものが多いです。 みんなボロボロになっていく。そうだ、だって戦争だ。 ブレブレ111 イオ大佐が・・・。あの勇ましい男が・・・。 主人公サイドの敵国の人間でありながら、筋の通った信念と行動力、そして実力を兼ね揃えた、格好いい男でした。愚直に将軍を慕っている、まさに軍人。 そんな責任感ある男が、自ら軍を抜ける選択をする。 ボルキュス将軍の死より彼を動かしたのは、部下の死だったことが伺えます。ニケのことを脳裏に描きながら、彼は軍人であることを捨てた。 ニケは死の間際までイオのことを想っていて、想いながら死んでいます。 切ない・・・。上司と部下だけでない、男と女だけでもない、人と人のドラマだな。 あと11巻限定版の小冊子、ニケのキャラプロフィールを読むと、さらに泣ける・・・。 「ずっと気づかないフリをしていただけだよ」というイオ大佐の言葉にしびれる。 戦争に傷つき背を向けた、かつての英雄の言葉。自分を騙してなんとか歩いてきたけれど、ここでもう、限界なのかもしれない。もう1度彼が戦場に立つことはあるのかな。あったらもう、大興奮間違いないんだけど。 ああ、そうだ。この作品の好きな理由をもういっこ再発見した。人物の死をながく引きずことだった。 その死を辛く思う人が必ずいる。立ち直れないくらいに心くじける人がいる。そこを描いてくれる。死が無意味にならない。 湿っぽくて女々しいことかもしれないけど、そこがとても人間くさく感じるんですよね。人間くさいからこそ物語にのめり込める。ロボット漫画ではありますが、自分はそこが気に入っている。 「戦争」を通じて描かれる、傷ついていく人間たちの心のドラマが好きだ。 イオ大佐だけではない。戦争をした両国家で、人々の苦しみが描かれます。 ブレイクブレイドは戦争の合間に、こうして人々の喪失の苦しみを挟み込んできています。11巻ではそれをこれまで以上に大切に描かれている気がしました。 戦争の緊張から開放された、ひと時の安息。けれど傷がうずく。うづき続ける。 そしてついに病んでいく。ライガットは・・・ふだんはあんな明るいのに、ダークサイドに落ち込んでからのギャップがすごくて、恐ろしいですね。主人公でここまで不安定になってしまうとは・・・! 戦争を語ればジルグ、酒が入るとジルグ、夢を見るとジルグ。 ライガットにとってシルグがどれだけ大きい存在か改めて感じます。 「俺がいなければ、ジルグは今頃まだ生きていたんだ」「俺さえいなければ」 後悔が染み付いて取れないライガット。ある意味、呪縛だな。 この作品、意外なくらいにあっさりとキャラを殺します。 けれどその後が長い。喪失の傷を癒す旅をみんなが辿っていく。 そう簡単に癒せるはずがない。けれどそれぞれが、その傷を向き合って決断をする。 ある者は歩みを止め、ある者は混乱し復讐者になり、ある者はそれでも正しく歩む。 ブレイクブレイドはその人間描写がしっかりとされていて素敵ですわ、本当に。 ゴゥレム同士のド迫力のバトルも楽しい。しかしこの叙情的な人間ドラマにも強く心惹かれます。


●シギュンの決断 11巻の最大の見どころと言えるのは、シギュンの決断と動きではないでしょうか。 シギュンさんはメインヒロインでありながら、人妻なんですよ! でも夫のホズルとシギュンの夫婦仲は謎であり、結婚指輪は外してるし。 「結局この2人はなんなの?シギュンとライガットの関係はどうなるの?」 とストーリーの初期から読者をヤキモキさせた部分が、ついに動く! ブレブレ113 イメチェンしたシギュン様。ツインテールになりました。 最初は違和感ありました、が・・・ッ、これは・・・かわいい・・・ぞ!! 髪型を変えたのは、彼女の心境を現れでしょうね。 念願かなってライガットとの2人きりの生活が始まるぞ!と表情には現れていませんがワクワクしちゃってる様子が見えてしまっているシギュン様を眺め、ほっこりするのが俺の仕事。 ブレブレ112 しかしこのシーンにはヒヤリとさせられた・・・。ああーついにか!うわーッ・・・と。 ホズルの内面の描写ってほとんどされていません。更に彼がシギュンをどう思っているかなんて、ほとんど見えてこなかった。この一連のシーンは、ホズルの本心を覗ける貴重な場面。 夫として、男としての感情があったんだろう。けれど昔からシギュンの眼がどこを向いているのかも知っていたのだろう。シギュンとホズルのあいだに夫婦生活はあったのか・・・というひどい膜論争は置いといても、ここはホズルという男の複雑な思いが溢れ出ているシーンでもあります。 やはりもっとホズルについての描写がほしい・・・!これから物語が佳境へ進みにあたり、描写が深まっていくとは思いますが、どんなものが描かれるのやら・・・。 そもそもホズルとシギュンが結婚に至った流れを、漫画で読みたいなぁ。


ほか、次の展開で重要になりそうなシーンはかなりありました。 ついにまたゼスとライガットの一騎打ちが見られそう。予告でモロにそのシーンありました。 あとアテネスの新型ゴゥレムが登場し、それを操縦する少女もお目見えしたり・・・。 ああーいいねいいね!次のバトルに向けて、各方面で盛り上げている感じ! 純粋にロボットアクションもカッコいいこの作品。11巻はそういう描写はほとんどなかったので、12巻は期待したいなぁ。11巻は本当に「軍人」を掘り下げた内容だったと思います。

ブレイク ブレイド 11 限定版 (メテオCOMICS)ブレイク ブレイド 11 限定版 (メテオCOMICS)
(2012/11/09)
吉永 裕ノ介

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途中ニケの話題のときにも書きましたが、11巻の限定版はキャラクター設定資料付き。 この設定資料集がまた面白いんです。各キャラの年齢やバックボーンはもちろん、好きな異性のタイプとかまで書いてあるwサブキャラまで結構細かく拾って取り上げられているので、みる価値十分にアリ! しかもバックボーンの欄では、本編では描かれていない秘められたエピソードも公開。 そのせいでニケの死がここに来て一気に心に重くのしかかってきたわけですが・・・ 深い人間ドラマも見どころな本作。キャラクターをより知ることができるこの設定資料集は、持っていて損はないはず。描き下ろし漫画もあります。 ・・・ところで資料集を読んで、改めてクレオの12歳設定は凄まじいと思う・・・なんだあの身体・・・。 そんなこんなの「ブレイクブレイド」11巻。 戦争が終わったからこそ見えてくる戦争の恐ろしさ。人は歪んでいく。挫けていく。 喪失の傷を癒す旅はひたすらに続く。今はただ、戦いから遠ざかろう。 とは言ってもすぐに戦いが始まりそうな予感がビンビン。どうなるのかな。 静かに去る者がいる。戦い続ける者がいる。この作品の大きなテーマは、「運命に抗おう」。ライガットたちはどのように抗っていくのだろうか。相変わらず続きが見逃せない漫画。 『ブレイクブレイド』11巻 ・・・・・・・・・★★★★ 戦争が残したさまざまな傷痕をじっくりと確認していくお話。しんみりとしつつ、次の大きな戦いへの盛り上がりも気持ちいい。主役4人それぞれの動きも気になりまくり・・・!