「正直どうでもいい?」

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我思う、故に百合あり。 『百合男子』1巻

百合男子 1巻 (IDコミックス 百合姫コミックス)百合男子 1巻 (IDコミックス 百合姫コミックス)
(2011/08/18)
倉田 嘘

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   百合道とは死ぬことを見つけたり!!! 以前から話題になっていました「百合男子」ですが、いよいよ1巻が発売されました。 自分は百合姫を購読しているわけではないので、これまで本格的にこの作品を読んではいませんでしたが、なにやら百合への熱い想いを叫ぶ漫画があるらしいと聞いて購入。 いやぁ、コレは大当たり。むちゃくちゃ面白かったです。 単行本めくって1ページ目のカラー口絵の笑顔が、カッコいいのにまたウザいw 今日はこの作品について、感想をかいていきたいと思います。


とにもかくにも、主人公・啓介の言動が面白すぎます。 漫画好き・百合好きにとっての「あるある」ネタも数多く交えつつも、やはり彼の真骨頂は、その熱いパトスほとばしらせる様子にアリ! 自分の脳内で「百合名場面名観」を作りあげていたり、ページ見開きで妄想をSS形式で垂れ流したり、女の子に扮して疑似百合を繰り広げる男の子に激怒し服を脱がせたり、女の子の様子を盗み見ながら勝手にモノローグを付けて勝手に悶々してしていたり、その百合にかける情熱にはドン引き、もとい、畏敬の念を抱かざるを得ません。(爆笑しながら) 20110818225618.jpg 他社の作品も伏字無しでがっつり紹介、そして愛を語りまくります。加えて「なんで先生に執筆をお願いしないんだ仕事しろよ編集部!!!」とまさかの編集部批判。もうめっちゃくちゃだw しかし彼をそんな破天荒な方向に突き動かしているのは、百合への愛に尽きるのです。 この作品は、シリアスな笑いを積極的に取り入れたギャグ漫画として、十分に楽しむことができると同時に、真摯な想いが、恐るべき熱量を持って渦巻いている作品でもあります。 「好き」という感情を、こんなに力強く叫んでくれる主人公・啓介。 彼の姿は、ギャグとして笑い飛ばすには、あまりにもカッコよすぎるのです。 20110818225614.jpg 百合を愛するがゆえの葛藤に悩まされる啓介。彼の想いは非常にリアルで切実。 百合が大好きだ。もっと見たい。もって触れたい。近づいてみたい。 けれど百合に男、つまり自分という存在は完全に不要。むしろ害であるとも言える。 百合を世界を覗き見るとき、覗き見ている自分という不純物を意識してしまえば、必然的に「完全なる百合の世界」は成立しなくなっていまう。百合の世界と、それを楽しむ自分という存在は、共存が不可能なのだ。自分という存在が、百合を汚してしまう・・・それでも!愛することをやめられない!壮絶なまでの愛情・・・葛藤・・・百合男子とは、かくも罪深き存在か・・・! しかしこういう作品の捉え方・見方って、考えてみると面白いものですよね。 自分という存在への矛盾と罪悪感を覚えながら百合を楽しんでいる啓介。 作中触れられていましたけど、彼は間違いなく「○○は俺の嫁!」と言う人間では無い。むしろ「自分なんかが彼女たちの邪魔を出来るものか」と言いきるタイプです。 なんか心底めんどうくさい考え方ですが、そうじゃなきゃ満足できないんです。というのは自分はそういう人間だから、というのも正直どうでもいいか。ともかく、彼の考え方は意外なほど自分とシンクロする部分が多くて、そういう意味でもとても面白かった。 例えば秘められた2人の関係にロマンを感じたとしても、その存在を自分が認識した時点で、「対象2人だけ」の関係でなくなってしまう。つまり自分の理想ではなくなってしまう。あれ、俺ってすごい邪魔じゃない?そんなジレンマ。好きなのに・・・! 「百合道とは死ぬことを見つけたり」という格言が作中登場しますが、これは「百合に男は要らないから、俺、死ね」という意味も込められている模様。なんて覚悟だ・・・感涙ものです。 啓介は物語の主人公でありながら完全に「部外者」であり、むし我々読者とほぼ同じ位置から百合を見つめています。ここまで読者に寄り添ってくれる主人公というのも凄いなと・・・! とにかくこの主人公が濃いキャラクターになっているので、彼が好きになれたらこの「百合男子」という作品はあなたにとって素晴らしい作品になると思います。彼の叫びは私たちの叫びそのもの!


と長々語りましたが、他にも魅力的な面があります。 まず先にも話題にしましたが、他社の作品だろうとガンガン話題にしてきます。「少女セクト」「けいおん」「オクターブ」「ささめきこと」などなど。 それらの作品を、一見なかなかのいい男たちが真面目に熱く語りあっている第4話は、個人的にも大のお気に入りエピソード。 20110818225620.jpg (クリック拡大) 自分の意見や「好き」をぶつけあう・・・やや行き過ぎた口論になっても、趣味を同じくする仲間たちとこうして熱く語りあってる姿は、微笑ましくも羨ましい、素敵な一幕に見えます。 口論してる内容はなかなか酷いものなんですけど、本人たちは真剣そのもの。だからこそ笑えてしまうwそしてその内容を読むこともとても楽しいんですよ! というか、すごく他人事じゃない感じです。リアルで趣味の話をしてる時、周りからだと自分たちはこんな風に見えているんでしょうか。胸が熱くなるな(白目)。 内容も文句なしであるのに、巻末インタビューや作者あとがきもとても面白かった。 しかもどうやら5巻分のプロットができ上がってるといいうことで、思ったより長いシリーズになってくれそうです。まだまだ百合男子ワールドを楽しむことができそうで嬉しいですね。 しかもカバーはまさかのリバーシブル仕様。啓介妄想カラーイラストは満足度高し! 20110818225624.jpg カラーが画像だと上手く映らなくて残念ですが、とても素敵なイラストです。 とにかく、ギャグ漫画としても最高に楽しめるのに、ここまで百合への考えや作品への愛をを深く考えさせてくれるとは。病みつきになる面白さです。 「ひらり、」は毎号ですが、「百合姫」「つぼみ」はごくたまに、という具合のまぁしょぼい百合漫画読者ではあるのですが、この作品は百合への愛もまた深めてくれた気がします。 「あるある」ネタも凄く共感してしまうものばかりで、オビ裏の「これ、なんて俺?」は非常に的確。2巻以降への期待も思わず大きくなってしまうシリーズ1巻目でした。 そういえば、こそこそとエロ漫画を持って行く妹さんはナニをしているんだと小一時間。 『百合男子』1巻 ・・・・・・・・・★★★★☆ 最大級に滑稽で情熱的。百合男子たちの哲学と業の深さをご覧あれ。 ワイルドローズうんぬんも最高のバカらしさw