「正直どうでもいい?」

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このクラスに神様を作ろう。 『よいこの黙示録』1巻

よいこの黙示録(1) (イブニングKC)よいこの黙示録(1) (イブニングKC)
(2011/03/23)
青山 景

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   森ユリカを教祖にして このクラスに宗教を興す 待ってましたの青山景先生新作「よいこの黙示録」第1巻、発売されました。 オビには「ストロボライトの」と作者紹介がされていましたが、そんなに有名でしたっけ。いや、大変好きな作品ですので嬉しいのですが!レビューも書きました。 本作のテーマは小学児童と「宗教」。…なんだかミスマッチかつ危うそうな組み合わせですが、そうして出来上がったこの物語は不思議と新しい読み心地に仕上がっています。 今回はこの作品の感想でもー。


もともとの担任が産休を取り、新しく4年2組を受け持つことになった新米教師・湯島朝子。 はりきって子どもたちの前に立つ彼女ですが…早々からクラスはおかしな流れに。 地元の川にホタルはもういないのだという主張する女の子グループと、クラスの中でも目立たない部類の無表情な女の子・森ユリカが、不思議な力を使ってホタルを川に呼び寄せた、よってホタルはあの川にいると主張する(ちょっと冴えない系)グループが対立。 いきなりな展開に戸惑う湯島先生ですが、ひっそりと会話に参加して流れを形成し、クラスを対立へと導いた、裏方の支配者がいたことに気づく。その少年の名前は、伊勢崎大輔。 この騒動を意図的に作りだした彼の目的は、小学生離れした恐るべきものだった。 20110324161404.jpg 4年2組全体を、1つの宗教でまとめあげること。小規模新興宗教の立ち上げだ。 よりよいクラスにするためには…と、苦汁をなめる思いで彼につき従うハメに。 10歳の少年少女を巡る、教育と宗教の新しい形の学園ドラマが始まりました。


キーとなる人物は、宗教成立を企てる謎の少年・伊勢崎と 彼が教祖に仕立てあげようとしているミステリアスな少女・森ユリカ。 宗教と聞くと、私はなんだか近寄りがたいものと感じてしまうのですが 小学校を舞台にしつつ、また主人公として憎めないドジっ娘先生に置くことで、マイルドで親しみやすい作品へと雰囲気をよくしてくれています。 かといってぬるい内容というわけではない。まだまだ物語の序盤だと思いますが、宗教が成立していくためのステップをあえて作りだしていく様子には感心。読ませるものがありました。 小中学校には、というかクラスには独特の社会構造が成されていたなと、今になって自分は思い出すわけですが、当時のことを思い出しながらも読んでみるのも面白いかも。 宗教を作るというのは、いわば全く新しい社会構造を生み出すことなのですね。 本作が1巻のうちに辿った宗教形成までの道のりは、非常に理にかなっています。 特定の人物(森ユリカ)が、どこか特別な人間であるということをアピールし、またそれをクラス全体の共通認識にさせる。そうなると当然反発を覚える多くの人間からはユリカは良くは思われません。恐れにも似た感情で、疎まれるようになります。 クラス内としてはそれはいじめという形になるのですが、そうして特別な感情で持って行われる迫害行為は、きっかけさえあれば恐怖を崇拝にすり替えられる。それは史実が証明している。 先にも書きましたが、小中学時代にはクラスごとにやや違った雰囲気があったなぁと自分は思い出しました。複数の人間が一か所に集まり長時間を共に過ごすなら、その集団の中にささやかでもルールのようなものが発生するのでしょう。そして本作は本来なら自然に生まれてくるであろうそのルールを、人の手で故意的に生み出してやろうというお話。その「ルール」を言い変えて「宗教」としている、と。なかなか斬新な学園漫画だなぁと感じます。


本作の重要人物・無理ユリカちゃんは面白いキャラですねぇ。 伊勢崎によって教祖に仕立て上げられそうな少女なのですが、彼女自身やはりちょっと他の子とは違う雰囲気をかもしています。 20110324161442.jpg ファンタジーなようで、非常に現実的なこの作品。でも彼女には秘密もありそうです。 最初にホタルを呼んだ件でも、恐らくは周囲の人間がそう信じ込まされたものなんだろうとは思いますが、もしかすると超常の力を本当に持っていたりして。 そして表紙イラストにも表立っては出てきてない辺り流石な伊勢崎君の真の目的とは何か。 宗教を興した先に、なにを目指しているのか。まだ明かされない部分が多い男の子ですね。 そして忘れてはならない主人公の湯島先生。影薄いけど、がんばってますよ! 黙示録 パンチラやシャワーシーン等、サービスをたくさんしてくれる大変ナイスな新米教師。 しかし本作中最もアツいのは、彼女と伊勢崎君のやり取りであるということは言うまでもないことなのです。完全にイニシアチブをとられており、どっちが年上でどっちが先生だ状態。 社会人女性が小学生の男の子に完全に手玉に取られてしまっている様子にはほっこりせざるを得ない!オネショタってヤツですかぁー! もともとかなりなドジっ娘体質なようで、今後どんなことをしてくれるのかも楽しみ! 面白いキャラクターが多いのも本作の好きなところですねぇ。


ではまとめ。 これまでの学園・教師漫画とはまた少し違った切り口で教育現場を捉えてる作品。 宗教という言葉に身構える必要はありませんが、しっかりと内容で読ませる、深さのある物語となっていると思います。今後さらに大きく揺らいでいくであろうクラスの内部構造がどう描かれていくのか、今からとても楽しみだったりします。 子どもたちがたくさん登場しますが、しっかり描き分けはされていますね。 作画のクオリティはなかなか高いと思います。キャラクター可愛いですしね! そんな感じで結構お気に入りの新シリーズ。冬発売予定の2巻が待ち遠しい。 混乱する人間関係の裏で立ち回る少年伊勢崎と、ドジっ娘先生朝子の活躍を楽しみにしています。中島君とユリカ、湯島先生と伊勢崎君と、期待できるペアが2つも・・・! 『よいこの黙示録』1巻 ・・・・・・・・・★★★★ 独特のテーマですが読みやすい学園・教師漫画。先生もっとドジになってください!