「正直どうでもいい?」

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手を取り歩いて 『背伸びして情熱』

背伸びして情熱 (まんがタイムKRコミックス エールシリーズ)背伸びして情熱 (まんがタイムKRコミックス エールシリーズ)
(2009/04/07)
仙石 寛子

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   本当に好きだったらいいのにって思うの… 仙石寛子さんの「背伸びして情熱」です。切なさが凄いです。 多くの作品が収められた単行本ですが、今回は長編として描かれた2編について。

背伸びして情熱

男子生徒と、彼に告白されてあたふたする教師の恋物語。表題作。 非常にやさしい作品で、感情の揺らぎが心地いい快作です。 もっとも印象的だったのは、このフレーズでしょうか。 『もしも誰かを好きになるなら 自分から好きになりたいって思ってた』 読んでいた時、なるほどなぁと。 誰かに好きと言われて始まる恋もあるし、かなり多いけれど その「好き」は、相手に好きと言われて流されているだけかもしれない。 「応えなくちゃいけない」という意識のもとで作られた、偽の恋愛感情かもしれない。 そういう不安を持ちたくないんだろう。 実直な須藤先生らしい考えだなぁ。いじらしい!そこがかわいい! そしてラスト。 告白してからというものいつも頭を悩まし笑顔を失った須藤先生。 しかし三咲君の告白をやっと受け止めた直後に 20100527001217.jpg ようやっと笑ってくれました。三咲君も一安心ですねw

赤くない糸

赤くない=運命じゃない 糸=けれど繋がっている、ということでしょうかね。 義理の姉だとかそんな甘いもんじゃなく、真っ向からの姉弟の近親相姦モノ。 恋人であることと姉弟であることは両立できるのか…悩む2人のモジモジ感が実に良いww …でもニヤニヤしてばかりな展開じゃないのがなんというか…。 まず弟は、今の関係が間違っているということが、まず前提にある考え方をする。 「姉が別の恋を見つけたら、自分との恋は忘れていい」なんて言ったりするのです。 姉もいろいろ考えてはいますが、弟のように未来のことを考える余裕なんて無い。 しかし弟も諦めるだけでなく、ちゃんと思春期らしい欲望持っていたりね。 ちょっと大人びたスタンスで、けれど姉より積極的に動いてくれるキャラが弟君です。 こういう男の子はいいなぁ、大好きだなぁ。 と、そんな二人の関係も本作最強の乙女男子・早崎君の登場で一変。 姉に訪れた「普通の恋」のチャンス。告白された姉の心は揺さぶられる。 動揺した姉は、意地悪をしてしまう。 20100527001302.jpg 意地悪だと意識せずとも、これはつまり、弟の想いの強さを測った行動。 彼女は確固たる意志を持って弟に自分の手を掴み続けていて欲しかったのだろう。 つまり、早崎に対する答えを、自分でなく弟に求めてしまった。 その証拠に、手を離されて泣きそうな顔をするんですよね、お姉ちゃん。 弟は姉想う故に手を離したし、なんなのこの切ない展開…。 まぁ結局、弟はまたその手をとってしまうのですね。 20100527001243.jpg 理解の得られぬ道だとも、破滅に続くかもしれない道だとも分かっているけれど 好きなんだからしょうがないだろうという話。 大きな決断をした弟君ですが、姉も大人になります。 最後には、自身の恋の肯定つまりは自分から想いを伝えて見せるのです! いやー清々しい! 中盤からのストーリーの運びはお見事。各キャラの思いや決断がきっちり描かれてます。 きちんとしたエンディングを見せてくれて満足ですw 4コマ漫画にしてはかなりドラマティックな展開を見せる作品ですね。 他にも「夫婦かき氷」は、人間の不在の物悲しさを凄くストレートに描いてて切ないし 「お嫁に行っても」なんかは百合モノ。「お酒さん」は酒擬人化。 「十五夜に、お風呂」は哲学的かつおっぱいな物語が魅力的。 なかなか幅広い作品を楽しめる作品集になっているかと。 ですが、ちょっと疑問。 4コマ漫画なのですが、段ごとにオチがあるでもないので 正直言って4コマである必要が全くない。 どうしても4コマ漫画は読み方が上から下へ…と単調になりがち。 今回メインにした長編のようなドラマティックなシーンが多い作品は このようなコマ割ではなく、普通に攻めていってほしかったなと思います。 もっと大きいコマで読ませて欲しいなーと。 まぁそういうのを差し引いてもいい本でした。 ベッドの上でごろごろ悶えまくりです。俺が美少女ならとんだ萌えキャラですね。 『背伸びして情熱』 ………★★★★ シリアスな恋愛漫画を、読みやすい4コマで挑戦した作品です。切ない!