「正直どうでもいい?」

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『秒速5センチメートル』感想。

秒速5センチメートルの感想です。 想いが届かないもどかしさ。日常の哀愁。まさに新海イズムという感じ。 物語はまばゆく切ない「思い出の輝き」に満ちていて、心底酔いしれました。 相変わらず、というか前作より更に映像が綺麗になってましたが、 ハッピーエンドしか望まない人は、見ないほうがいいかもしれません。 一言でまとめると、ものすごくシンプルな映画です。 以下ネタバレを含んだ感想。    *何度か手直ししています。

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あれだけロマンチックに魅せといて、ラストはそうなるか・・・と。自分はなりました。 全3話の短編アニメーション。1話「桜花抄」2話「コスモナウト」3話「秒速5センチメートル」。 まぁ簡単に言うと、いつまで経っても昔の恋を忘れられない男の話。 主人公・貴樹と、ヒロイン・明里がメインです。 桜花抄では、中学生の貴樹が電車に乗って、栃木の明里に会いにいく話。 雪の描写が細かく、そして序盤の桜の描写が圧倒的に美しい。 再開した後のキスシーンもこれまたすばらしく、BGMと合わせて今作屈指の名場面に。 コスモナウトでは、貴樹のことが好きな女の子の話。 波の描写や、ロケット打ち上げ時の心理描写が心に迫る。結局は報われない。 それでも彼女の胸にはこの先ずっと貴樹の存在は残り続けるんだろうなぁ。 貴樹にとって明里がそうであるように。 ちなみに母親はこの話が一番好きだと言っていました。 秒速5センチメートルは、東京に戻ってきた貴樹が社会人になってからのお話。 多分10分くらいしかなかったんじゃないかな。 見所はやはり「One more time, One more chance」のところでしょう! 東京に来ても結局明里とは結ばれず、会社をやめたりと迷走する主人公。 町をぶらつく主人公。行き着いた先は、かつての約束の場所、踏み切り。 そして偶然にも踏み切りの向かいから歩いてきた明里。 桜咲き誇るこの踏み切りは・・・まるで幼き頃の約束を果たしてくれるかのようで。 そして「One more time, One more chance」と共に、カットイン連発ラストシーン。 めまぐるしく様々な情景が走り去っていく・・・。 振り返れば彼女も振り向いてくれる、なんて微かな希望、または別のなにかを胸に振り返る・・・瞬間、2人の間を切り裂く長い長い電車。 それが通り過ぎた後、向かいの踏み切りの前に、明里の姿はなかった。 それを見届けた貴樹は微笑みながらその地を後にする。 ・・・・・・ストーリーだけ抜き取るとこんな感じです。 ハッピーエンドなんかじゃ全然ない。 味気ないくらいになんでもない現実を突きつけてくるアニメ作品です。 前作「雲のむこう、約束の場所」では漠然とした切なさが残りましたが (もちろんあれも強烈な作品ですけども……大好きです) 今作では、はっきりとした虚しさが伝わってくるお話でした。 見終わると思わず沈黙してしまいます。「ああ・・・」と。 なにより、踏み切りを後にする主人公の、最後の表情。鮮烈なラストカットですね。


相変わらず、どこらかさらにレベルアップした超絶美麗背景。 はらはらと舞う桜の花びら、華やかな光に彩られた街、降り注ぐ雪。 強烈にノスタルジックな風景描写は監督ならではと言ったところ。 また演出がとてもよかった。 登場人物とは関係ないシーン(大空を鳥が飛んでいくところとか)をいくつか挿入するなど、暗喩的描写が多く感じられましたね。小説ではない、映像作品ならではの演出。 ロケット打ち上げのシーン、吹き飛ばされる手紙にもグッときました・・・。 BGMの使い方・タイミングもよかったですね。 壮大な映像と音楽、詩的なモノローグと演出で、心に迫る切ない物語を作り出しています。 1話序盤、桜が咲き乱れる踏み切りで「また、ここで桜を見ようね」と約束をして 3話ラストでは、お互い大人になった姿ですれ違い、お互い背を向けて歩いていく。 『子供の頃の約束』なんていうおなじみのシチュエーションをあっけなく裏切り終幕。 意地が悪いことやるなぁ・・・。いや、まぁそこも好きなんですけども・・・。 でも、やっぱハッピーエンドにしてほしかったなぁ・・・と。物語として、やはりハッピーエンドが基本だと思っていますし。 しかしあえてそういう結末を選ばれた監督には、このラストでなければ描けないものがあったのでしょう。実際、すごくいい作品でした。 もしかするとハッピーエンドではここまでの感情は沸かなかったかも。 見た人の性別・年齢・それまで人生によって、かなり感想が違ってきそうな作品です。 自分も過去の出来事とすこし重ねてみていましたが これは、過去の恋愛にダメージを負っている人が観ると、大変なことになるかも・・・。 俺は呆然としましたが、一緒に見た両親は「あれでよかった」といってましたし 観た人ぞれぞれが違った感想を持ち、一緒にみた人と議論する。 物語として、そういう古典的な楽しみもできると思います。 しかしやはり雰囲気が繊細で女々しい…。 そこが自分が好きでもあり監督らしさでもあると思っているのですが 「ほしのこえ」以降続くこのスタイルに、少なからず拒絶反応を起こす人もいるかと思います。 その点やはり万人受けはしないのかなぁ。 こういった映画は常としてマイノリティーであるし、そうあって欲しいですが 監督はもっと多彩な映画を作ることができる人物だと自分は思っていますので 次回作は毛色の違った、世界の開けた物語で魅せて欲しいです。 今の作風に不満があるわけではないですよ!念のため! そろそろ〆。 繰り返し書きますが、背景のクオリティが尋常じゃないです。 この作品を映画館で見れたことは幸せだったと思います。 ・・・ちなみに。 秒速5センチメートルというのは、桜の花びらが落ちる速度。 早いのか遅いのか・・・でも確実に進んでる。そういう速度。


話が変わりますが今回、人生で初めてサイン&握手回というものに参加しました! 新海監督は人のよさそうなおにいさんって感じでした。 パンフの裏にサインを貰って超ハイテンションで帰宅! でも事前にポスター買っておいてそこにもサイン貰うべきだった・・・そこだけは悔しいです。 色紙も買っておくべきだったか・・・?いや、流石に色紙持参とかサイン複数要求とかはふてぶてしすぎるかな。 どっちにしろこのサインは宝物ですね! 201109152116221.jpg (クリック拡大) (明里の手紙の裏面にサインを書いてもらうってのもちょっと複雑でしたが・・・)


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新海誠監督の新作「言の葉の庭」の感想も書きました。 →最高級の、雨ふる楽園の物語。『言の葉の庭』