「正直どうでもいい?」

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世界が君で光った。『花と落雷』1巻

花と落雷 1 (マーガレットコミックス)花と落雷 1 (マーガレットコミックス)
(2013/01/25)
渡辺 カナ

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   それは雷のように一瞬で あらがえる暇もない 「花と落雷」1巻が発売されたので感想を! 渡辺カナさんといえば前作「星屑クライベイビー」がかなりお気に入りの短編集でして、何度も読み返したりしてます。新作ってことで今回の「花と落雷」ももちろん購入。 タイトルがいいですよね。あまり一緒になることのない単語同士で、シンプルかつ印象に残るタイトルです。英語にするとフラワー・アンド・サンダーボルト。やだ、カッコいい! 自分はまず表紙でドキッとしました。カラーイラストとしての美しさもお見事ですが、一枚絵としてバッチリ決まってる。キラキラしててオシャレでかわいくて、うーん・・・見惚れる! 前作は短編集ですが、1巻と打たれているように今回は長編です。 前作→ほんとは寂しがり家のあなたに届くように。『星屑クライベイビー』


主人公の海美帆が、「有言実行委員会」をなのるちょっと不思議な女の子と出会うことから、ストーリーは動き出します。 その娘は八千代といい、クラスでも変人と認識されているような女の子。 学校の人々の後押しや手伝いを目的に活動するのが「有言実行委員会」!とハデに登場をキメるも、メンバーは八千代ただひとりという寂しい現状。 人並みに臆病で、踏ん切りがつかなくて、淡い恋を胸に閉じ込めてしまいそうな海美帆。その応援をしてくれる八千代。「有言実行委員会」との出会いは、海美帆をどんどん変化させていくのです。 少女漫画のお約束というか無くちゃいけない恋愛要素をしっかり入れつつ 作品の主題は、不器用な人たちが他者と、そして自分の気持ちとどう向き合うか、ってところにあります。くじけそうになりながらも必死に前進していく。その様子は感動的で、恋愛漫画に収まらない魅力があると思います。 八千代がいいキャラですよねえ。文字通り、人を引っ張っていくパワーがあるキャラ。黒髪おかっぱというのも、彼女に不思議とピッタリな気がする。 強引すぎずでも軽すぎず、真摯に心に寄り添ってくれる素晴らしい友人キャラとして描かれています。 実際、1話において主人公の恋と同じくらいに大切に描かれていると思ったのが、八千代にむける海美帆の憧れのまなざし。「こんな風になれたらなぁ」という願望と、こんなステキな娘と知り合えた、友達になれた、という高揚感。 この1巻の中で主人公の気持ちはけっこう変わっていくんだけれど、その最大のきっかけは八千代ですよね。そのことをわかっていて、海美帆は彼女を大切に思っている。 つまり、海美帆と八千代の友情が素晴らしいのですよって話です! 百合というほどでもなく、2巻の2人の結びつきが楽しみです。 花と落雷12 んでもって恋愛要素。こちらももちろん良かった! 「星屑クライベイビー」では結構ビターな味わいの作品もあったりして、「花と落雷」はどういう漫画になっているか楽しみでしたが、なるほど。 まず1話で主人公は男にフラれちゃうんですね。そこに至るまでの流れは心にグッとくる。フラれても単なる悲劇にならず、あくまでも前向きさを失わない、そのきらめきが素晴らしかった。 花と落雷13 そのあとに真打登場ってふうに新しい男の子の出てきます。四宮くんです。 読みながら懸念したのは主人公の心変わりはやすぎだろ、っていう状況。告白してすぐにほかの男の子になびいちゃうと、ほら。でもこの作品、そこはうまくやってくれていました。そういう人を好きになるタイミングにこだわるのバカみたいですけど、気になっちゃうものは仕方ないじゃないですか。 ストーリーはなんだかんだで、四宮くんと海美帆がラブりだすわけですが、その過程もいちいち愛らしくて敵わない!ゆっくりゆっくりと、四宮くんへの想いが膨らんで、ふとしたことで破裂しちゃいそうなくらい高まっちゃって。 どうすんのこれ。ニヤニヤするしかないでしょうが!! 花と落雷11 でこれまた四宮くんもかわいいんですよー! 海美帆以上の臆病ものなんですけど、少しずつ彼の世界が開けて行って、どんどん四宮くんの表情を明るくなっていく! というか海美帆はいっかい殻を破ったので、あれ以降は結構大胆な行動とってますよね。 人見知り&しゃべりベタな四宮くんの手助けから始まり 気づけば海美帆、八千代、四宮の3人でいつも動くようになっていたりして。 キャラクターたちが確実に世界を広げていっている実感が得られてにっこり。 世界がひろがる瞬間、つまり人と人の心が結びつく瞬間を描くのが上手いですね。ここ!ってタイミングで頭に残るシーンがちゃんとある。漫画として魅力的です。表紙イラストでも思いましたが、絵ヂカラがあります。 2巻の展開についてですが、どうやら八千代の話になりそうな予感。 まだ謎ばかりな少女。何が明かされるのか楽しみです。


そんな新作「花と落雷」でした。 花という静かに綺麗に佇むものと、一瞬だけでも空を強烈に照らす輝き。アンバランスなようでいて、やはりいいタイトルだなぁ!平穏を一瞬で変貌させる光。それは空に強く輝くように、彼らの世界だって変えてしまうに違いない。 落雷とはすなわち恋だったり、友達だったりするんだろう。 雷ってのは自然現象で、ひかったらそういうものと考えるしかない。そこには理由はない。光ったら、心が明るくなったら、それはもう抗いようもない。 キラキラしてて瑞々しくて、恋愛ばかりじゃなくキャラクターそれぞれが紡ぐ成長のドラマが、素直に気持ちがいい作品ですね。 もちろん絵も素晴らしい。この作家さんは内容も雰囲気もいいけど、まず絵の第一印象からして「あ、好きだ」だったもんな。ふわっとしつつ、光がチカチカ舞っているような眩さもまた読んでいて快感! 空気がきらめくかのような星が細かく描かれたコマもあって、小さな雷みたい。 作者のコメントを見るに、どうやら2巻完結漫画?らしいので サクッと読めるコンパクトな傑作になってくれるといいですね。2巻の出来次第ですが、きっと期待に応えてくれるんじゃないかなと思ってます。これまでの短編を読んでいても、ラストの余韻がすばらしい作家さんなので。 『花と落雷』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆ 期待のシリーズ。表紙に惹きつけられたらきっとハズレない、素直な青春ストーリー!