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背徳と情欲で暴走する少年少女に目が離せない!『惡の華』5巻

惡の華(5) (講談社コミックス)惡の華(5) (講談社コミックス)
(2012/01/06)
押見 修造

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   ずっと・・・一緒にいよ 春日くん アガガガガガ!大変だー!「惡の華」が大変だー! 発売した最新5巻を読んだところ自分のテンションがおかしいことに。 単行本派なのでじっくりこの巻を待っていたわけですが、とんでもない展開になって来た。 4巻で再起した2人。5巻ではさらに奥深く、混沌が広がっていきます・・・。 →クソムシたちが再び蠢く… 『悪の華』4巻 深い欲望には、そしてそれをほとばしらせる人の姿には、強烈に惹きつけられてしまう。


『向こう側』に行くことが出来なかった春日と仲村。 しかし今度は町の中に密かに『向こう側』を作ってしまったのでした。 向こう側というのは、常識や良識を超えたその先。自分が本当にしたいことを本能のままに実現してしまうこと。人間には誰しもにきっと恐ろしく気味の悪いものが奥で渦巻いている・・・のかも知れません。 ともあれ夏休みになりました。春日たちは次にアクションを起こすのを夏祭りに定め、それにあわせて行動を始めていきます。自分たちの真実をぶちまけてやろうと。 そんな中急展開を見せるのが佐伯さん。 今回この佐伯さんが、物語を大きく大きく動かしていくのです。 惡1 むき出しの嫉妬心。闘争心。これから少女の本音が、壮絶に撒き散らされる。 5巻の内容には衝撃を受けて、おもわず1巻から佐伯さんに注目して読み返して見たんですけども、前々から着々と感情が育ってきていたんだなと。ある意味満を持しての展開だったのか。もちろん衝撃的であることには間違いありませんが、突拍子が無いわけではけしてなく。 主人公に対して理解があって、どんな状況でも信じてあげる強さがあって、受け入れてあげる懐の深さもあって・・・本当にまるで天使みたいな女の子、それが佐伯さん。 それは彼女の中で春日という男が大切であったからこそ。 3巻第17話で「石ころだった私を宝石にしてくれた」とも言っており、春日と過ごした時間は彼女にとって尊いものであったようです。自分は彼のおかげでかわれたんだという意識が根強い。 仲村のジャマがかなり入っていたりしてめちゃくちゃだったと思うんですが・・・まぁそこは。 しかし天使だった彼女を変えるのは、春日への違和感と不信感。主に「仲村さんとどういう関係なの?」ということで、つまり完全に嫉妬なのです。どんどんとダークサイドへ墜落していく佐伯さん。 3巻の後半でも熱心に春日を取り戻そうとしていましたが、自分を選んではくれなかった彼に失望したかのように見え、4巻ではとてもおとなしかったのですが・・・。 惡2 度肝を抜かれるとはこのことですよ! 最初はあんなに清楚でおとなしかった佐伯さんが、主人公にセックスを迫るという超展開! というか主人公は拒んでいるのに無理やりのしかかったりしてるのでこれはもうレイプ。 佐伯さんが服を脱ぎだしてからはマジでドキドキが止まらなくてヤバかったですよ! でもこれって佐伯さんが狂ったわけではない。 清楚で、おとなしくて、優しくて、天使みたいで・・・そんなのはきっと、主人公のが思い描いていた妄想を自分も共有していただけ。こんなのも、彼女が持ち合わせるもう1つの顔であるだけ。 上の画像で言う「私は人間なの!」も、読者の意識を引き戻す力がありました。 生身の人間と付き合っていくということは、幻想ばかりが通じない世界に行くということか。 とは言え、佐伯さんとしてもこれが極限の精神状態が起こしたものであるはずで 彼女がこれからどんなキャラクターになっていくのか、すごくワクワクしてます。 精神的な意味で彼女もまた『向こう側』を一端を見た人と言えるのかも知れません。というか春日と仲村の行動にあてられたせいでここまで大胆な行動に出たのかもなぁ。 やっぱり魅せられちゃうんですよ、「惡」には。


ということでまさに佐伯さんショックが巻き起こった第5巻でした。 佐伯さんがこんなアグレッシブな行動に出るなんて!という意味での驚きも大きいのですが、なにげに主人公も力強く『選択』をしていて、彼なりに間違いなくちゃんと変化があるのだなと感じましたね。 でも春日は今回も全力で思春期をこじらせてて目も当てられない・・・いや、目が離せない! 思春期・・・自我の芽生えとともに、自分が抑圧された環境に置かれていると感じ、芽生える反発心。何でもいい、この言葉にならない不満をぶちまけてやりたい。そんな思いで。 悪3 馬鹿になって、周りの全てをむちゃくちゃにしてみたい。自分の力で。 成長して世界のいろんなものが見えてきた。自由がきかなくなってきた。大人に少し踏み込んだからこそできることも見えてきて、だからこその好奇心と悪意があって・・・。 根底にあるのは「自由になりたい」という欲求なんだろうなと。 この作品がこんなにも面白いのは、不思議な親近感があるからか。少なくとも自分には。 思春期の少年少女たちを取り巻く、あのちょっと居心地の悪い空気・・・なんだか自分も覚えがあるわけですよ。そんな風に自分をこの作品を重ねてしまうと、途端に「もしかしたら自分も、こんなとんでもないコトができてしまったかも・・・」なんて想像にまで飛んでいってゾクゾクしてしまう。非現実的なものではない。 不信感を持つ親の目、学校の先生たちのざわめき、警察の威圧感といった「大人の世界」もきちんと主人公たちを脅かすものとして存在してて、時折それらが強烈な緊迫感を与える。 この作品に渦巻いている「思春期」は、その負の面をリアルに切り取った、俗悪故の愛おしさがあるように思います。 この作品の変態って、全然笑い飛ばせない。指さして笑うことなんて出来ない。 社会に迷惑かけてるし、きっと現実にこんなシーンに出会えば誰もが怯える。それでもそれが、思春期の彼らの精一杯が詰まった結晶でもあるんですよ。それを笑うなんてとても出来ない。 行き場のない感情をなんとかかんとか吐き出したそれって、ある意味カッコいいんです。 それにしてもこれにて主人公は見事卒業ですか。なんたる事か!もう1巻の頃みたく「佐伯さんは天使だ」とか言い出さないんですね!童貞ロマンティシズムを奪ったという意味で佐伯さんの罪は重いですぞ!童貞に固執するのが童貞に気持ち悪さですけどね。 ちゃんと挿入してから佐伯さん突き飛ばすあたり春日さん策士。(ちげえよ) んでもってラストも素晴らしい。今すぐ続きを読みたくて仕方なくなる! 自分が失望されてしまった無念さと、目標を失った落胆と、迫る国家権力と・・・! やーもうどうなるんだか!佐伯さんショックに惚けてばかりじゃいられない。 止まらない熱暴走。どうなっちゃうんだ第6巻!相変わらず目が離せないですよー! 『惡の華』5巻 ・・・・・・・・・★★★★ 息が止まりそうな緊張感。思春期のよどみをグツグツ煮詰めたような作品。


以降の巻。 思春期の大暴走…もう後戻りはできない!『惡の華』6巻 その目に焼き付けてくれよ、僕らの”惡”を。『惡の華』7巻 怯える幽霊と忘れられない華の影。『惡の華』8巻