「正直どうでもいい?」

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その目に焼き付けてくれよ、僕らの”惡”を。『惡の華』7巻

惡の華(7) (講談社コミックス)惡の華(7) (講談社コミックス)
(2012/12/07)
押見 修造

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   さようなら!さようなら!すべてのクソムシども!!惡の華」7巻発売きたああああああっと読んでその日に感想書く!日付的には翌日になってしまいましたが。 待ってましたよ7巻!自分は単行本派なので、前巻の衝撃的すぎるラストからドキドキしっぱなし。いったいどんな事が起きるのか!? と思って書店でコミックス手にとったら裏表紙のあらすじでさくっとネタバレされちゃったんですけど。ああ、うん・・・そういえばこのシリーズ、結構その巻の突っ込んだ内容まであらすじで書いてあったね・・・へへ・・・。 ともあれネタバレ踏もうともこの面白さ揺るがず!心震わせてくれる、とびっきりにこじれた思春期の淀みと、暴走。 まさにクライマックスのまま終わった6巻。ぜひ、6巻をもう一度読み直してその勢いで7巻を読み出して欲しい。しょっぱなから、ハンパない大興奮・・・!!表紙も素晴らしい! 春日と仲村からクソムシどもへ向ける、魂の絶叫。そして彼らの未来とは。 前巻→思春期の大暴走…もう後戻りはできない!『惡の華』6巻


●ページをめくる手が止まらない! 夏祭りの夜に、二人は舞台に上がった。 全て捨てる。これからの人生のなにもかもを、捨ててやる。その覚悟で。 手には包丁。向けられる大勢の人の目。テレビ中継もされている。 もう後戻りはできないさ。「向こう側」へ2人で行くんだ。 意気揚々と、この世界のクソムシどもに見せつけるように、死ぬんだ。 しょっぱなから、本当に、凄まじい展開です。 第33話「翔び立ち得る者は幸なり」。安い言い方をすれば神回! シリーズ最高潮のハイテンション。ハイというかダメな躁状態。ダウナー極めてハイになってるあの不安定な恐ろしさ。 思春期をこじらせた子供たち、とかわいらしい表現で言える段階はとうに過ぎた。 彼らは罪を犯した。犯罪者だ。 そして今まさに、命をとした犯罪をしようとしている! 社会的に、彼らはとんでもないことをしている。取り返しのつかないことをしようとしている!そんなリアリティがとことん胸をいやらしく窮屈にして、ドキドキが止まらないのだ。 もともと少年少女を圧迫するものとして、警察や学校など「社会」の脅威はリアルに描かれてきた本作。だからこそ、それを振り切ってことに及ぶ春日と仲村の姿は、心配を通り越して恐怖の粋。しかしそれ以上に、圧倒されそうなくらい、眩しかったりする・・・。 ああ、どうなってしまうんだ!この2人はどこへ行ってしまうんだよ!! とにかく読み手を心を揺さぶる、エネルギッシュな作品であることを再確認しましたね・・・こわい漫画ですよ。 読みながら焦燥で胸がかきむしられる感覚。 じっくり読みたいのに紙をすべる目の動きは止まらないし、手はページをめくり続けるし、とにかく先が気になって仕方のない!むしろじっくり読もうって意識が働くヒマもなかった。待ったなしの凄まじいスピード感を体感しました。 本当に夢中になってしまうとこういう現象が起きるんだよな。


●2人の最後の言葉 6巻の最終話で、彼らは最後の言葉を考えようと言っていていました(165P)。 いざ舞台に上がった彼らの口上から幕を開ける、衝撃的なこの7巻では まさに彼らが心から叫びたかったものの全てがぶちまけられています。 惡の華71 クソムシが!! クソムシが!! クソムシが!! クソムシが!!! 口汚く叫ばれる言葉が、泣きたくなるくらいに頭に響く。 こんな気持ち、いつまでも心にいさせちゃ苦しくて仕方ないよな。胸が張り裂けそうな悲痛。その叫びはもはや悲鳴だった。 読んでいるあいだ、体がブルブル震えていた。 壮絶。それに尽きる。 意味はわからないんだよ。具体的にこれがイヤだあれが不満だ、といった言葉はないから。でもそんな具体的な言葉をあげられるくらいだったら、最初から暴走なんかしてないんだ。 何もかもが嫌なんだ。自分も世界もみんな。 彼らの叫びを聞いていると、どこか恍惚とさえしてくる。 1度でもここまで心から吐き出しきったら気持ちいいだろうなぁという、憧れの思いすら抱く。春日も仲村も晴れやかさはないけれど、全力で戦っているその姿は、たしかに神聖なくらいの眩さがある。 思春期に悩みの1つもなかった人はきっといない。 少年少女は叫びたかったんだ。泣きそうな夜に、心が凍えそうな夜に、どうしようもなく全てを壊してしまいたくなる夜に。 無力感と怒りで狂ってしまいたかったんだ。 それが現実味のある形で実現されるのがこの一連の場面なんだな。 「向こう側は無い!!」と彼らは口にした。 なんだ、分かっていたのか、とここでついに涙が出た。 「私もクソムシだ!!」「ニセモノの変態!!!」 そんな風に、自分たちを否定しけなす言葉も吐き出した。 なんか意味わかんないけど、吐き気がするくらいスカッとしたのが事実。こんな言葉を望んでいたのかぁ俺は。でも、彼らがその言葉を言ってもなお諦めず戦っていることがすごかった。この結論に至ってこの舞台に上がったことに賞賛したい。 行き場をなくしたからこそ死を目指したのだとしても、こんな苦しみを抱えた人間がいることを、知らしめてやりたかったんだ。 叫び終えたあと、2人とも燃え尽きたような顔をする。自分もきっとこんな顔してた。 惡の華72 そのとき、惡の華は咲いていた。そして彼らを見ていた。 あの山のおく、「向こう側」で、確かに華は咲いていたんだ。 それを見た春日は涙を浮かべ、満足したように「仲村さん、いこう・・・」と呟く。 強烈なインパクトのこの見開きは、この作品通しても重要なものなのではないでしょうか。


●高校生編スタート。 えっ、高校生編・・・? というのが第一印象。でも仕方ないか、あそこまでしたらこうして舞台を入れ替えざるを得ない。春日の両親はもともと引越しするつもりだったし。 春日は高校生になりました。田舎を離れ、都会で学校に通っています。 普通の生活にもどっていたように見える。けど全然違うな。 彼はまだ「惡の華」にとりつかれている。仲村の姿を探している。 詳細は語られませんが、きっとすぐに引き離され会話もろくにできていないんじゃないかな、仲村と春日は。あれだけの凶行に及んだ2人がまた一緒にいることを、大人たちが許さないだろう。 この新章、だいぶ説明不足のまま始まりました。 事件のあと、二人はどう制裁を受けたんだろう?それに佐伯さんは? そこはすっきりカットするのか、これから描かれていくことになるのか。ううむ、佐伯さんに関しては「さよなら」の決別をしたわけだし、もう描かれないかもな。 しかしだとしたら佐伯さんは・・・不幸と言えばいいのかなんなのか。とにかく振り回し振り回された。彼女もまた惡の華を携えた人だったけど(6巻の感想で書いたやつ)。 さて、新舞台に合わせて新ヒロインが登場しました。 名前は常磐さん。リア充グループにいるけど、読書の趣味は春日と合った。 彼女が詩集「惡の華」を手にとったことから、春日との交流が始まりました。 またあの詩集かいな・・・やはり春日はこれから逃れられない。 この常磐さんがこれからどんな混乱に巻き込まれていくのか楽しみですよ!(混乱が起きることはもはや前提として話を進める) 惡の華73 しかし常磐さん、かわいいですわ!惡の華」初期からどんどん押見先生はうまくなって女の子も可愛くなってきていますが、ここに今1つの結晶を見た。 リア充っぽいけど趣味はサブカル臭満点だったりしててナイス。怖いのは彼女の年上の彼氏さんですが・・・こいつから絶対話動くよなぁwうわぁどうなるんだ!


●新しい表紙デザイン惡の華」は1~3巻、4~6巻で表紙デザインが一新されてきました。 3巻ごとに新しいデザインになるんですよね。紙質も変える。 こういう遊びはすごく面白いし、それぞれのデザインに特徴があって好きです。1~3巻はモノクロ・デカデカと吹き出しが載る珍しいでザインで目を引きました。 4~6巻はストーリーが混沌としてきたのに合わせたかのようにブラックなムードに。各キャラの眼力がハンパなくて、本棚に並べるとムチャクチャかっこよかった。 それで今回から新デザインです。今回は水彩! 最初見たとき、一瞬「惡の華」の表紙って気づきませんでした・・・ガラッと変わった! 新章に入ったことでキリがいいですし、なにより素晴らしく美しい。 惚れ惚れします。これ書きながらじっとり見つめて味わっています。 このキャラは仲村さん・・・だと最初は思いましたが、常磐さんですね。 仲村さんと常盤さんが似ているのは色々うまいよなぁと感じます。 まとった雰囲気とかは全然違うんですけどね。この表紙が仲村さんだったらなんて安らかな表情をするようになったんだ・・・ホロリ、とかなっていたころだった。危ない危ない(?


そんな「惡の華」7巻でした。 中学生クライマックスと、気になる高校編のオープニングが一緒になった一冊。中学編の怒涛の展開については、上で書いたとおり。 新章で心機一転!とは行かず、再度どんよ~りとした高校生活・・・。 やはりこのドロドロしたムードは、町を出た程度じゃどうにもならない。 高校編なんてものに突入するのは結構予想外ですが、楽しいですね。過ぎ去った過去をとおく見つめるような視点が生まれて新鮮。 テレビアニメ化も決定しましたね。大丈夫?「惡の華」だよ? しかし映像で見てみたいシーンとなれば山ほどあって、どんなアニメになるのか今から楽しみです。ノイタミナっぽい?作品かなと思うのですがさて。 目を閉じたはずの惡の華は、まだ胸の中に秘められている。 またいつか目を開くときが来るんじゃないか。 そんなことを、不謹慎だけど、とてもワクワクしながら待っている。 だってそういう漫画だもの。惡の華を咲かせる瞬間が、待ち遠しい。 『惡の華』7巻 ・・・・・・・・・★★★★☆ 冷静になってる方がもったいないなこの漫画は。一緒に飲み込まれてしまおう。


以降の感想 怯える幽霊と忘れられない華の影。『惡の華』8巻