「正直どうでもいい?」

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連鎖する全力の放物線! 『FULL SWING』1巻

サカナクション武道館ライブチケ確保ー。しかし2階席・・・CD先行だったのにぃぃ フルスイング1 FULLSWING    俊ちゃん・・・ おもいっきり振ったよな ゲッサンにて連載中のオムニバス作品。 その話のチョイ役が次の話の主人公になる、という形式を繰り返していく構成です。 作画担当は今作で連載デビューのマツセダイチ先生。 そして原作は武論尊先生です。 えっ。 恥ずかしながら、これまで武論尊先生が原作を手掛けた作品を読んだことがあまりなかったので、世紀末救世主なんちゃらなどのイメージが抜けきらない自分としては、本作は非常に新鮮に楽しめました。 少年少女の、一番輝く瞬間を切り取った、気持ちのいい作品集です。 この第一巻には第4話まで収録。 せっかくなのでさらりと全話触れてみたいと思います。 あとなんだか今回の記事タイトルは語感優先で日本語が変ですが、まぁそこはスルー。

第一話 藤江俊一

不良少年俊一が主人公。 しょっぱなからガチ暴力・ドラッグ・レイプと、少年誌掲載でムチャやるなぁという印象w どうなるもんかと思いましたが、中盤からはまるで雰囲気が変わり ネタバレに気をつけて言うなら、彼はその世界にはいられなくなります。 精神的にも肉体的にも、彼は傷ついていく・・・。 失われた日常と、自分らしさ。現実に打ちひしがれる俊一。 けれど俊一は、自分がすべきことを見つける。 いつだって傍にいた・・・いようとしてくれた、1人の女の子のために 彼はバットを振るった。 20100911211605.jpg 見事なフルスイング。 別にバットを振るったから、と言うわけじゃない。 彼は全力で何かを成そうとした。だからフルスイング。 やはり、何か決意し、そして大きな行動を起こした瞬間が、その人が一番輝く瞬間だなぁと思います。その瞬間が一番カッコよく、一番人間臭い。だから好き。 切ない、けれど爽快!出だし好調の第一話でした。

第二話 土田一平

俊一の腰巾着、土田に主人公。 方向性は違えど、これも少年犯罪に触れた内容になっています。 そしてやっぱり、主人公が見せる一瞬の輝きは気持ちいい! ただまぁ、正直しんどく感じる内容ではあるかなぁ。 漫画の中で描かれているからと言ってサラリと流せてしまう自分が悲しいけど、 こういう話題はやっぱりかなりデリケートなものなわけで。 描くからには、もうちょっとフォローがあっても良かったかなと思う。 「家族のため」という理由は悲劇的でもあり感動的でもあるけど この結末を受けて彼女はどう変わったのかを、見せて欲しかったかも。

第三話 木暮隆

イチオシはこの第3話! 2話まではやや社会の闇的な描写を描いてきましたが、これは実に健全。 主人公も熱血かつ男前で高感度高いですね。ですが、ですが。 やっぱりですね、この話のメインはヒロインの潤ちゃんですよ! 20100911220300.jpg 黒髪ロングっ娘です!!先日お祭りが開催され、盛り上がっていましたね。 ちなみにこのシーン、隆から試合を見に来てくれと言われ「はぁ?」的リアクションをした翌日です。結局来てるじゃん!しかもちょっと照れてるぞ!!おおい!!!!(落ち着け ツヤベタがあまりないのも、色々自分のなにかをくすぐられる感じで・・・・・・! さて彼女、幼少のころよりバイオリニストとして名声を得ていましたが 世界に羽ばたくチャンスを掴む大舞台で、緊張のあまり演奏に失敗したトラウマ有り。 自暴自棄になった潤は、しかしまだ何か諦め切れてない様子もある。 「何かひとつでも一生懸命になれるものがあれば・・・」と零してたり。 今の彼女には、踏み込むための決定打が足りない。 トラウマのせいで再びバイオリンを手にする勇気は持てなくとも それでも何かをしたい・しなくちゃいけないという意識は、ストレスとして彼女に襲いかかってきている。行き場のない感情、情熱。彼女は、救いを求めている。 ならばこそ、主人公は良いトコみせなきゃでしょう! 20100911211628.jpg バイオリンと、ボクシング。 何もかもが違うけれど、彼は自分が一生懸命な姿を潤に届けようとする。 勝負の世界は、常に「本気」がぶつかり合う場でもある。 再びその苛酷な世界に、潤が飛び込んでいけるように、その勇気を持てるように。 ボロボロになっても、隆は決して諦めない。 この姿が届くまで、この想いが届くまで、そしてもちろん、自分が勝つまで。 20100911211637.jpg そして・・・? という感じ。ハイ、いやもう大好きですこのお話!! ラストの「よっ」の笑顔もたまんない!行儀がちょっと悪いのもまたかわいい! ヒロインが魅力的なら、それだけ読者も燃えるのは自然なことです。 この漫画、基本的にニヤニヤできていいですねw

第四話 間宮陽子

こちらは主人公の彼氏が不良君。 不良の登場率がやたら高いですねwいや全然かまいませんけれど。 こちらは女性を主人公に置いたことで、これまでとはちょっと違った視点。 わりとドライな感触のこの単行本ですが なんとなくこのお話は・・・しっとり?というか、ちょっと違う感じですね。 過去回想を効果的に用いて、終盤の展開をおおいに盛り上げててきます。 そしてこのお話の『フルスイング』は、非常に地味なことです。 けれど誰もが、勇気も持てば出来ることでもあるように思います。 素敵なラストでした。心地いい感動です。 まとめのようなものを。 タイトルの『FULL SWING』については、第一話ですでに触れられていますね。 別にバットを振ることに限った話ではなく、 振らなきゃ始まらない、そして振るからには全力で、ということ。 青春ということで、まぁ言ってしまえば、かなり、いやすごく青臭い・・・! けれどまぁ自分はこういう漫画が大好きだったりします。青臭さ大好物ですよ。 そしてこういう漫画好きな人、結構いらっしゃると思います。 細かなところではアウトローな描写もありますが この漫画の真髄はやはり、少年漫画らしいところ、でしょう。 そのまま読者の想像通りにはいかないにしろ、期待は裏切りません。 今後『フルスイング』でもどうにもならない壁にブチ当たるかもしれませんが (むしろそういうエピソードが出れば、この漫画はまた一皮剥けると思う) それでも主人公たちには、変わらぬ声援を送りたいと思います。 送りたいと思える漫画になってると思います。 苦々しい、青臭い、けれど輝くそれぞれの青春。 少年少女はそれぞれに複雑な思いをかかえながら、がむしゃらに生きていく。 まだまだ連鎖は終わらない。 次の放物線は、どこで描かれるのでしょうか。 『FULL SWING』1巻 ・・・・・・・・・★★★★☆ 主人公は若者たち。みんな苦しんで生きてます。でもみんな輝いてます。いい漫画。 ちなみに今月発売の10月号もいいニヤニヤ漫画でした。