「正直どうでもいい?」

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デッドデッドデーモンズデデデデデストラクションが完結したので

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション最終巻となる第12巻が発売され、しばらくが経ち、もう今更という具合だがなんとなく考えがまとまってきた。いや嘘、あんまりまとまっていない。ただ少し感想を書き残しておこうと思う。この3連休とくになにもないので。

ネタバレを含むので未読で気にするかたは注意でお願いします。

 

 

 

 

この作品、前のFC2ブログ時代からずっと感想を書き続けてきた作品だった。コミックスが発売されるたびに。最後のほうはサボってしまったけれど……個人的にすごく思い入れの強い作品だった。連載中は、たぶんすべての現行連載作品でもTOP5に入るくらい続きを楽しみにしていた。その完結とあれば何かしらが書き残しておくかという気分だ。

スピリッツで第一話を読んだときから「俺が本当に読みたかった浅野いにおが来た!!!!」と鼻息荒くなったのを覚えている。風刺的なとげを残したエッジの効いた作風が、漫画表現そのものを革新させるようなチャレンジと同居してとてもスタイリッシュだった。主人公の女子高生ふたりの会話はすっとぼけていてナンセンスで、でも空元気のような虚しさも漂っていた。青春の終わりと人類の終わりが同時に忍び寄ってくる……そんなセンチメンタルいにお汁がブシャブシャとあふれ出ていた。そして世界の終幕を目前とした暗澹たる設定。「最終兵器彼女」のアシスタントとしても参加していた事があるという浅野いにおが満を持してド直球のアポカリプス物・セカイ系を描こうと取り組んでくれていた。最高だった。

 

最終巻の感想を率直に書くなら「ちょっとだけ、思てたんとちがう」だった。
付け加えると、それでも好きな作品であることに変わらない。まったく。

 

最終話は文句なしに素晴らしかったと思う。門出とおんたんのたどり着いた未来は思ったよりずいぶんとちゃんとした大人になっていた。

3巻で「私たちちゃんとした大人になれるのかな」と語らうシーンは、もはや人類に未来はあるまいという状況を知らずにその言葉が紡がれたものだからメチャクチャ心に突き刺さるシーンではあったのだが、彼女たちはそんな未来をちゃんとかなえる事が出来たのだ。

 

引っかかる点としては、その未来というのは別の世界線での出来事だという事だ。

いや、もう、「人類滅亡」したんだから……もう未来というのは無いんだよ……とは思う。思うのだが、11巻クライマックスで門出のお父ちゃんが目を覚ました後からこの12巻はながいエピローグが紡がれていく。日本だけではなく世界中で起こった大混乱。あたらしい戦争。荒廃。

まるでこれまで描かれてきた宇宙人VS地球人を逆サイドからなぞるように、立場を逆転された人類はかるがると命も棲みかも奪われ続ける地獄。ここらへんは作品中盤からにおわせていた構造だったので納得感がある。まさに伏線回収だ。

 

自分がモヤモヤしている原因としては、「おんたんが門出を助ける為にタイムリープして捻じ曲げた世界」が本作の舞台であったのだから、人類滅亡後の彼女たちの行く果てはしっかり見せてほしかったという所が本音だからだ。

人類滅亡は、少なくともこの世界線では、おんたんがそのトリガーとなったから、それは必要なことのように感じた。

記憶を取り戻したおんたんが罪悪感にさいなまれる描写も度々されてきた。その終着点として荒廃した人類や世界を描写してくれるのに、とうの主人公であるおんたんと門出がどのように生き延びているのか、あるいは出来ないのか。

「おんたんが選んだこの世界線」をその未来ごと描ききるこの作品の責任。そこで生きるおんたんの姿を描くこともまた同じくこの作品とおんたんが背負う責任。そんんなことを考えていた。

それに固執した視点で言うならば、どちらも中途半端になってしまったと感じる。

 

 

終末世界は執拗にこの12巻では描かれている。人類がしぶとく戦い続けている中でわずかな希望も見えるような描写。もともと主人公をとりまく半径5メートルの外側にもリアリティを追及していた作品だけに、それが最後まで徹底されている。ほとんど救いは無いんだけど……。

その世界線で描かれる「救い」は、タイムマシンによる世界線移動だという事。ここの部分について議論がされているように感じる。本作ではその存在を知り、門出の父親は娘と再会するために世界線を移動した。

肉体的な移動ではなく、意識というか正解へのヒントを少しもった状態でゲームを最初からプレイできるような感じなので、かなり運にゆだねられている形ではある。が、じゃあこの壊れた世界はどうなるんだ?こんな世界でなお目的をもって生き続けていこうする人々がいる。なんというか最終的な結論としての「こうなっちゃったらもう仕方ないよね」という感覚が、緻密に積み上げられてきたこの作品を最後ちょっとだけ陳腐にしてしまったような気がしている。

終末世界でもおんたんと門出が生きていて、生き続けていこうとしているという姿を描いてくれていたらなら受け止め方も違ったという思う。

それであればおんたんが苦しみと決断が、本作1巻~11巻までの長いみちのりの果てに得られた、この世界線でしか成しえない数少ない結晶であったと信じることができたはずだ。

 

人類滅亡への大きなうねり、その発端を担う運命の少女たち。ただ翻弄されるがままで終わってしまったのだとしたら少しばかり虚無感はある。エンタメ主義的すぎるかもしれないけれど。

いろんな含みを持たされているエピローグだから、2人の今かあるいは遺したものか、世界になんらかの影響を及ぼしているような示唆はある。明言されないがtypeDの2機というのは作者的には匂わせのサービスかもしれない。少女ふたりがこれに乗り込んで戦ってるような夢のスピンオフだって、夢じゃないのかもしれない。
見たいか?と言われれば…………見たいだろそれは!!

 

 

個人的には「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」という作品は11巻でエンディングを迎えている。見たかったものはおおよそ11巻で描かれいた。
12巻はアンコール公演、ちょっとした蛇足感もまた愛おしい。

それでも、
別の世界線の断片をたどってどうにかたどり着いたクライマックスだ。竜騎士07ワールド的にいえばカケラ遊びの最果てにあるハッピーエンドである。

最終話、聞こえてきた別の「おんたん」と「門出」の声。世界と世界は干渉しあう。あっちの世界で戦い続けている彼らは、いつかこの世界で再会できるだろうか。

 

デデデデは2014年から連載が始まって完結までおよそ8年。著者のキャリアのなかでもわりと異質な作品でもあって、初のアニメ化に至ったというのも納得のキャッチーな要素てんこもりな作品だったと思う。

世相を反映したシニカルな登場人物たち(わりと多方面に冷笑的)が描かれたり、漫画表現の実験場として執念じみたカタストロフ描写などオルタナな要素がうまくポップに溶け込んでいたのも大きな魅力だった。

とくに11巻の崩壊シーン、12巻の再編(タイムマシン)の表現はひさしぶりに漫画表現というもので背筋が凍るような、神々しさのようなものを突きつけられた。

あとはこの作品をどう映像に落とし込むのか、アニメ化を楽しみにしたい。

dededede.jp