「正直どうでもいい?」

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深く息をして、僕らは悲しい恋をする。 『ばらのすべて』

ばらのすべて (Canna Comics)ばらのすべて (Canna Comics)
(2013/04/26)
山田 酉子

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   光への憧れだけで焼きつくされそうになる時もある‥・ ッヒョーー格好いいなぁこの表紙!鮮やかに散る赤色。目を奪われます。 山田酉子先生の新作「ばらのすべて」の感想です。これはBL作品。 うちのブログでBL取り上げる事はほとんど無いんですが、この作家さんはがっつり追いかけているのでね。へへ。しかしうちでBL更新していったい誰が読んでくれるのか。でも大好きな作家さんなんですよ!! 著者通算5冊目の本作は、一冊まるっと使った長編。 芸能界の裏側を描く、スリリングな読み心地が楽しい作品。 ジャ○ーズJr(みたいなもん)に所属する.主人公らのドロドロな関係を主軸にしたストーリー。あとがきにも触れられていましたが、銃とかクスリとかヤ○ザとか、アブない要素も詰め込まれています。 作者特有の静寂やもの寂しさ漂うお洒落なムードは今回も健在。 山田酉子作品の青さ、鋭さ、軽さ、冷たさ。今回も魅了してくれました。 海の底で深呼吸しているような。まぁそんなのできないですけど。ゆっくりと心を切なく浸してくれる感覚が素敵すぎる。 過去の作品の感想 刹那的、オンナノコ。『女の子のすべて』 カッコよくて弱くて泣き虫で強がりで 『クララはいつも傷だらけ』 自由に愛して自由に生きよう。『かなしい人はどこにもいない』 「好きだから」の先にあるもの 『ロング&ビューチフルライフ』


内容について。 アイドルの卵として活動する気弱な青年・糸田川。彼が片思いする植芝くんは、1年前に事務所をやめて音信不通になり、そして今はアダルトビデオに出演中。 そのAVを糸田川がたまたま見てしまい、そしてある日再会までしてしまう。 やっと再会できた片思いの相手。しかし植芝はすでに光のあたる舞台を降りて、闇の世界に踏み込んでいる。深い考えをすることをなく植芝に近寄っていく糸田川は、そうして彼の知らない世界へと関係していくことになります。 芸能界を舞台にしているだけあり、個性的かつ作中世界におけるイケメン力(ぢから)の高い連中ばかり登場しています。あんまりキラキラはしていない印象ですが。 そしていろんな男が出てくる。弱い男。強い男。悪い男。 いろんなヤツがいろんな絡み方(物語的に・物理的に)をしており それぞれの人間関係がはらむ緊張感や怠惰や甘酸っぱさがいい感じです。 ばら1 しかし植芝くんが面白いのです。 ビジュアルはカッコいいんですが、その内面が実にダメ野郎で。 優しくない・地も涙もない・大事にしてくれない‥そんなダメ男を好きなダメ男です。ようするにドM!ドマゾである!(どうでもいいがドエムというよりドマゾと言う方がより変態性が増して好き) 自分をきちんと愛してくれない相手“だから”好きになってしまう、その根っからの不幸体質!激しくいたぶられるのが好きだし、キツい言葉を浴びせられるのが好きだし、報われないのが好きなのだ。なんて面倒臭いヤツだ。不憫でかわいい。 ばら2 自分を好きになってくれる相手を、植芝は好きにならない。 人の好意を受け止めようとしない、自分の性欲に忠実でワガママな男なのだ。 そういう残酷なエゴイストであることを彼は自覚しているし、それでも変わろうとしないその決意の強さも魅惑的に見える。 植芝は作中で女性から「ブスな女みたいだ」と言われますが、これ面白い見方だよなーと思って印象的です。コミックス帯にもこのフレーズは引用されてましたね。 しかしまぁ主人公の糸田川君もMですからね! 糸田川と植芝。ふたりしてドM!糸田川は植芝よりはマイルドだけど、好きな人に困らされたい願望はアリと見える。ドM同士のカップリングとか不毛じゃないですか‥お前ら大丈夫なのか‥。でもそんな不安定な関係性もまた面白いんだ。 でも糸田川と植芝、両方とも似たような髪型・顔で混乱したなぁ。このメインの2人は見た目まで似通っている。これはあえてなのかなとも思うけれど、やや不親切な気がしないでもないかな。 2人がラストで掴んだ相思相愛の関係を、ずっと続けられるとは思わないかも。 どこかで破綻しそう。ヒドイ別れ方をしそう。糸田川くんは絶対としても、植芝もなんだかんだで糸田川のことを引きずったりしてさ。 そういう、一生忘れられないってくらいまで相手を心に刻むことが出来るのはそれはそれで非常にロマンチックなことだよなと思う。 それで全く話はあー江夏くんカッコいいなー。コイツはカッコいいよ。 でもあとがきで「江夏くんは中村くんに片思いしてる受キャラ」と裏設定暴露されてて笑ったwww こいつがどんな恋愛するかも見てみたいw ばら3 これがカバー裏面。ビジュアル面でもカッコよさで言ったらコイツ断トツだな。 しかもそれでいて作中で一番の働きものであり、努力をしているし、それを鼻にかけないカリスマがある。どうすんだよこの男!すげーいいヤツじゃねぇか!この完璧スペックで男に片恋しててしかも受というのがいいね(ニコッ


そんな感じの「ばらのすべて」でした。 これまでの山田酉子コミックスの中でもトップクラスにキャッチーな要素が詰まっているんでないかと。いやBLの知識浅いですけどたぶん…だってジャ○―ズだよ…。 でも明らかに影が濃い。漂う空気がひんやりとしていて心地いいです。 どこか仄暗くてお洒落でリリカルで、自分でも不思議なくらい心が澄まされていくのを感じるんだよなあ。気持ちがいい。肌に合うというか。 繊細で、残酷で、優雅で、詩的で。うむ、かっこいい。 ちなみに来月にも山田先生のコミックスが別の所から出るようで、こちらも楽しみ! 『ばらのすべて』 ・・・・・・・・・★★★☆ 推してる作家さん。芸能界のアブない闇をクールに描く。無条件降伏で好きな空気。