「正直どうでもいい?」

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紡がれる人と戦艦の新たな絆。『蒼き鋼のアルペジオ』5巻

サカナクション新曲「僕と花」、CW曲の「ネプトゥーヌス」共に素晴らしい!

蒼き鋼のアルペジオ 5巻 (ヤングキングコミックス)蒼き鋼のアルペジオ 5巻 (ヤングキングコミックス)
(2012/04/28)
Ark Performance

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   我々人類は・・・17年ぶりに海を渡ります 「蒼き鋼のアルペジオ」5巻が・・・一ヶ月前に出てます。もっと早く書きたい。 今回の表紙は蒔絵ちゃんです。人間が表紙になるのは初めてかー。あと右から伸びているのは・・・なんだろう、侵蝕魚雷かな。戦艦じゃないですし、今回の表紙はこれまでの流れからみても新鮮な仕上がりですね。 掲載誌アワーズでも結構表紙になってますし、ドラマCD化したり、勢いあるみたいです。 個人的に4巻くらいからメンタルモデルの人間臭さがフィーチャーされてきたあたりから、一気に面白くなってきたように思っています。そしてこの5巻も、メンタルモデルに注目したい内容。 →かわりゆくメンタルモデルの少女たち 『蒼き鋼のアルペジオ』4巻


401クルーの出番がぜんっぜんない第5巻! 彼らが出港準備をやってる間に、陸で大事件が起きていたっていう話なのです。潜水艦とかが出てくる場合じゃない。4巻ラストから引き続き、デザインチャイルド編でまるっと1冊! 蒔絵・ハルナ・キリシマという人間と戦艦メンタルモデルの3人組で危機から逃れようという展開で、これまでの「蒼き鋼のアルペジオ」にはなかった、新鮮な陸上戦がたっぷりと。 もちろん海での繊細かつ大胆で迫力満点な戦艦バトルも面白い本作ですが メンタルモデル・ハルナの変化と合わせての陸上戦がとてもおもしろい! ●大迫力の陸上戦! アルペジオ 問答無用にカッコいい! 作画のレベルはもともと高いのですが、この陸上戦はスケール感がこれまでと違う。 見た目としては「人間VS人間」という構図になるぶん、メンタルモデルがいかに強大な力を持っているのかが今回アピールされます。 まぁ海って周りに何もないんで、どれほど大きな衝撃か等がパッと把握できないなぁってのを、この作品を読みながら自分は思っていました。しかし今回は陸上戦。自分にとって身近な世界観になったことで、一気にメンタルモデルの凄さを理解することができました。こりゃ人間敵わねえわ。 それは戦艦VS戦艦がメインだったこれまでではありえなかった状況であり、本作の新しい魅力を発見することにつながったなと。 幼い少女のような外見のメンタルモデルたち。しかし、鍛えあげられた兵隊も最新鋭の兵器も物ともせず無双状態!単純にバトルの爽快感といった意味でも十分に魅力的なのです。 一方で、「なぜハルナたちはここまで身体を張って蒔絵を守るのか。」その問いかけは読者も、そしてハルナ自身も自問自答する。 これまで敵として描かれてきた彼らが、人間の女の子をまもるヒーローになる。 メンタルモデルの葛藤を強く描き出される内容。だからこそ、この5巻は熱いのですよ! この陸上戦でこの作品一気に好きになったもんな! アruペジオ2 クマのぬいぐるみに憑依してしまったキリシマの大活躍がかなりシュールなのも見所かw メンタルモデルらの葛藤、という複雑な面を描かれますが、一方でバトルはシンプル化。 これまでの海上戦は確かにちょっと複雑でもあって・・・専門用語がたくさん並んだり、緻密な計算とギャンブルの末の勝利というイメージが強かった。しかしこれまでとは違い、陸上戦はそれ自体実にシンプルになっている。人間が凄まじい戦力を小さな身体に宿した少女に翻弄される。 潜水艦漫画としてはイレギュラーなはずですが、これはこれですごく魅力的でした。


●人間と戦艦との友情 今回とあるキャラクターが死亡します。それが引き金となり、ハルナは暴走を起こす。 誰かの死を悲しむという、至極感情的・人間的な理由で我を失うのです。 メンタルモデルは人間ではなく、おそらくは何ものかにプログラムされて生み出された存在のはず。しかし今回のハルナにかぎらず、これまで登場したメンタルモデルの少女たちも、何者かに操作されているという感じは一切ありませんでした。完全自立型。けれど時折自我に関係なく作動するシーンもあったりで、「コード」と呼ばれる命令を受け取るとそれに従わざるをえないことがあるようです。 アルペジオ3 ハルナ暴走シーン。人間との関係にここまで思い悩んだ戦艦は過去いるだろうか。 こういう場面をみるとますます思いますねえ。こいつら本当に人間みたいだ。 彼女らもそういう感情に戸惑っているようですが、しかし最終的にこの5巻で交わされた「約束」は、メンタルモデルと人間の間に交わされた友情を確信させるものでした。 自体が一段落してみれば、今回はメンタルモデルらの秘密に迫る意味合いもあった章だったようにも感じます。けれど考察ぬきにしても、この5巻はアツい。人と戦艦の新たな絆ですよ! そして気になるのが『アドミラリティ・コード』。 すべてのメンタルモデルに送られた強力な上位命令コード、とでもいうべきもの。 ADMIRALITYの意味は、海上における権力や支配権とかそういうことっぽい・・・? 5巻で初登場したキーワード、だと思います。どの上位戦艦も反応をしめしたあたり、今後のカギを握るものなのは間違いないなさそう。でもこれ、誰が発信したんだろう?あの女は何者? と考えてみればクエスチョンは小難しいことばかりでなく、「メンタルモデルってどこから来たんだ?どうやって出来た?」という根本的な疑問もぽんぽんでてくる。 メンタルモデルはこの作品を彩る重要キャラですが、どんな秘密があるんでしょうね。


というわけでさらーっと書いてきましたが、他におっと思ったポイントなんぞ。 今回でさらに、丁寧な作品だなぁという印象を強めたということがまず1つ。 陸軍と海軍の関係とかもきちんと説明がされる。物語の細かな背景に加え、「なぜこんなアクションが起こるのか?」ということをちゃんと論理的に、そしてこの作品らしく政治的な理由付けが行わている。 ガシッと安定感を出しつつも、躍動感ある展開は素晴らしいですね! ドハデなバトル、華のあるメンタルモデルの少女たち・・・とキャッチーな要素の裏で、綿密に構築された世界観もステキだと思います。 そして30話でのタカオとイオナのやりとりも面白いですねえ。 イオナが実はメンタルモデルの中でも最初期に誕生していたり、それを伏線のように仕掛けてくる何気に重要なエピソードですが、イオナのイタズラっぽい笑みがとても印象的。 そうかーイオナってこんな表情豊かだったんだな。メンタルモデル同士だからか?それとも変化する決定的な理由がこれまでにあったのか?・・・なんにせよ、さらっとこういう描写を仕込んでくるあたりも、侮れない作品だなぁと思うのです。 あと、メンタルモデルたちもだいぶ増えてきましたねえ。新キャラもいますし、これからも増えていきそう。しかしまだがっつりと語られていない娘たちも多くいます。気になる。 これからどんな展開が待っているのか。『蒼き鋼のアルペジオ』5巻は、様々な面で今後の展開におおきく期待させられる内容だったと思います。 単純に「人間が味方、霧は敵」と割り切れなくなったことで、状況は複雑になりましたが漫画の面白みはグンとアップしたかと。誰が味方で誰が敵なのか。 個性豊かなメンタルモデルの少女たちに注目しつつ、戦艦タカオの恋ははたして実るのかを見守りつつ、この力強い物語を楽しんでいきたいですね。 5巻まできて、多彩な魅力を放つ作品に成長しているこちは間違い無い。 『蒼き鋼のアルペジオ』5巻 ・・・・・・・・・★★★★ 人とメンタルモデルの絆を描いた、世界を変えるための一歩を踏みしめた一冊。 「潜水艦マンガ?なんか小難しそうだなぁ」という人も、ぜひ読んでほしいシリーズ!