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歪み絡まる19歳たちの性。『ヒメゴト~十九歳の制服~』3巻

ヒメゴト~十九歳の制服~ 3 (ビッグ コミックス)ヒメゴト~十九歳の制服~ 3 (ビッグ コミックス)
(2012/03/30)
小学館

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   ずっと、永遠に、秘密だけど。 あーやばい。まじでやばいな。やばいとしか言ってないな頭悪くなりそうだ、もとからよくないけど・・・。こんなに続きが楽しみな作品になってくるとは思いませんでしたよ! そんな「ヒメゴト~十九歳の制服~」3巻。ゾクゾクしっぱなしで読了。 今回の表紙は予想通りで佳人くん。女性っぽい顔立ちのイケメン、しかし実際は女性に憧れ女装して街をねり歩く不思議な人。そして今は、由樹の『女』友達。 17話で鏡写しの自分として女の子を見ていると話していた彼ですが、それを踏まえてこの表紙を見ると、なるほどなという感じ。散らばった女性のアイテムもミステリアスな雰囲気があり。 ヒミツを抱えあう19歳の三角関係。『ヒメゴト~十九歳の制服~』1,2巻


さてさて、今回もいろいろと話しが動いてます。 状況がどんどんと複雑になってきていて、次に何が起こるのか楽しみで仕方ない! 中でも動向が気になるのが、自分の大のお気に入りでもある未果子さんですよ。 ということで2巻の時も大半未果子のこと書いてましたが、今回もそうだよ悪いか。 未だ果実の子・・・そんなちょっと禁忌的な名前をした黒髪ロングの清楚な女の子ですが・・・裏では15歳だと偽ったうえで援交している不良娘。オッサンを踏みつけたり舐めさせたりして興奮しているドSでもあり、そんな裏表の激しい様子もステキ。 けれど彼女が面白いのはそれだけじゃない。 由樹(ユキ)を汚すような、変えてしまいそうな要因は、全力をもって排除する。 由樹を「女」に目覚めさせようとする奴に、自分の身体を差し出して篭絡し、由樹を守ろうとしたこともありました。 由樹のためならいくらでも自分の身体を汚せる。守るためなら自分を武器にしてしまうその意志の力強さと行動力! クセのつよいキャラクターですが、女の子キャラクターとして個人的にかなり魅力的ですよ。 由樹の前だけ、普通の女の子みたいに心がふわふわして、落ち着きがなくなって、ドキドキが抑えきれなくなる――――そんな純情な乙女のようになってしまうのも、むちゃくちゃ好き。 ヒメゴト1 どの口が言うんだよww ・・・なんて思っても、やはり美しい。 身も心もきっと汚れているよ。それは本人だって分かっている。 けれど好きな人の前では堂々と綺麗なフリをする、このしたたかさがたまりませんな!すごいねえ、女の身体も、友人という立場もまるごと利用してくっついて離れないんだ。 清純な思いをつらぬくために身体を利用するという矛盾、2巻のレビューにも触れましたが、未果子のこの生き様はすごく好き。エロいとかかわいいとかそういうのとは別次元の、女性としての強さとか輝きがある気がする。 恋に命かけてるなぁ。卑怯だとは言いませんよ、必死に必死に恋してるんだ。 しかし3巻に入り、由樹と未果子の関係も深く、そしてイビツになってきた感が。 なにせ2人はその関係そのものにも、どうしようもないすれ違いを抱えている。 由樹は女らしくできない臆病な自分を変えたい。だから女友達と女の子らしいお話や遊びをすることに憧れて、未果子とも(未果子からの執拗なアプローチをすこし不安がりながらも)友達づき合いをはじめる。 一方で未果子は、由樹が変わることを望まない。望まないどころか全力で阻止。本当なら女の子はもちろん、男だってもうなくしてしまった「少年性」を由樹の中に見つけたことで、彼女を手に入れようと画策しだしているのです。 ヒメゴト3 男じゃイヤだ。でも女でもない。19歳の由樹にのこる「少年」に心たぎらせる未果子さん。心の中では由樹を「ヨシキ」と男っぽい名前で呼んでいたりしてますし。 未果子は成人男性に向けて憎しみを持っている。その事はこれまでの随所から伺えてきますが、彼女は自分の罪を客観的に把握しているからこそ、純粋無垢な人間に心惹かれるのでしょうか。 そして未果子は、由樹が「女」になることも拒絶する。 ヒメゴト4 「花が開くと、誰かが摘みに来るなら」 「私はこの蕾を、開かせない」 由樹にこだわり彼女を我が物にしようとする彼女の執着心の強さ、そしてその歪みぶりにゾクゾクさせられた部分。ハァー、未果子ちゃんんまじで怖い。そのくせ物語の展開上、どうにも彼女がかわいそうな方向に行っているのが余計にかわいい。不憫萌え。こんなに頑張ってるのによー!ちゃんと幸せになっておくれよ! 3巻は真面目な部分だけじゃなくとも、由樹からの告白(未果子の勘違いなんだけれども)を待ちわびてソソワソワしちゃってたり、由樹とラブホテルに行ってウキウキしまくっていたり、相も変わらず激烈かわいい乙女未果子の魅力が炸裂するシーンも盛りだくさん。 由樹の前での表情だけを見るなら、本当にかわいらしい女の子なんですよねえ。 しかし一方で、かなり恐ろしい一面をも秘めている。このギャップにやられる・・・!! かわいいで片付けられない。なんて言えばいいんだろう。とりあえず、面白い女性だ。 ブラックな未果子ちゃんについてで一番心震えたのは31話のラストですねー! 憧れの由樹と裸で抱き合って、心の底からの幸せにたっぷり浸って。 ・・・けれど濡れない。自分でもなんでかは分からないけれど。 そしていつものように15歳と偽って男たちの相手をした彼女は、いつものようにまた高揚して昂ぶって、身体も反応する。濡れる。 「汚れないと濡れない。」淡々と事実確認をするようつぶやく彼女の表情は無。 すれ違う心と身体。 心が求める憧れと身体が求める興奮は一致しない。本当に欲しいものは、なんだろう。


未果子のことしか書いてない。ちゃんと佳人のことも書きましょう。 超展開はないにしろ、着々とお話は動いている。未果子のことばかり書いてましたが、3巻のメインはむしろ佳人。 >彼と由樹の関係性についてのエピソードは、今回で一つのピークを迎えます。 2巻で起きたハプニング。つい、というしかない、唐突なキスを交わした由樹と佳人。 由樹は女友達として、女装する佳人に心を許していきますが、それと同じくして佳人を男性として意識しだしている。 佳人はそれを敏感に察知に、あくまでも「女友達」であろうと由樹の意識を変えさせようとするのがこの3巻の主な動き。 これがもう、どこにどう着地するのか予想がつかないこの作品だけあって、実にドキドキさせられる駆け引きが繰り広げられるんですよね! 19歳という大人になりかけの不安定な年齢。その危なっかしさが上手く作用する。性別の違いや、心でどう思っているのか、それぞれが抱えるコンプレックス、葛藤・・・いろんなものが混ざり合う。 『・・・あたし達、セックスしたあとも女友達でいられるのかな?』 こんなセリフが出てきたりね。読み返しても緊張してしますわ! そしてこの件で、皮肉にも由樹は女に近づいていく。 佳人のことが好きだ。けれど、これは絶対に明かさない。ずっと、永遠に、秘密だ。 だって私達は「女友達」なのだから。きっとこのままが正解なのだから。 そうした心境の変化と合わせるかのように、作中でも由樹はイメチェンを果たします。 ヒメゴト2 あらかわいい!すっかり女の子っぽくなっちゃいましたよ、やったじゃないか! ・・・でもこれを見た未果子のリアクションがこえええええ楽しみ!!!(どっちだ) それにしても、由樹と佳人のナチュラルな会話は心地いい。 それぞれが遠慮なく、自分の素の部分で接しあっている。 不器用だったり、はたまた逆に器用すぎる彼らですが、この関係は見てて微笑ましい。 ・・・だからこそ、いつでもこの雰囲気が揺らいで壊れてしまいそうなこの作品には、たまらなくドキドキさせられる。この3人、複雑に絡まりすぎだ。


いま自分がかなり熱中してる「ヒメゴト~十九歳の制服~」3巻でした。 書きたいことが多すぎるのに文章まとめる能力がなくてグダグダなことになってしまいましたが、なんか自分の熱意かなにか伝わってもらえればと思います。 決して有名だとは言えないと思われる作品ですし、応援していきたい。 大事件は起きません。ただ丁寧な心理描写を繰り返し、ちょっとした誤解や暴走で転がってどこへ行くのか予想がつかないお話。3人のキャラが立っていてかつ魅力的。 仄暗いムードが色濃いですが、コメディシーンも挿入され読みやすいんですよね。 エロ描写も多いかもしれませんが、直接的で男性的なエロというより、官能的。 2巻まででもかなり面白かったのですが、ここまでくるともう先が気になって震える! でもこれモバMANっていう携帯漫画なんですよねえ。雑誌じゃないのかよ!なかなかそっちに手を出せるものではないので、自分は単行本派のまま次を待つしかない・・・。 罪深くもかわいらしい、美しい背徳ににおいを感じさせる、いい漫画です。 祥がもう再登場しそうにないあたりがマジで容赦ない漫画だと思いました(笑顔)。そのうち出てくるんですかねえ・・・それはそれで面白い状況になりそうで楽しみなんですがw 『ヒメゴト~十九歳の制服~』3巻 ・・・・・・・・・・★★★★☆ 応援したいシリーズ。。綿密に、テンポよく紡がれる複雑な人間模様。性と年齢にまつわるコンプレックスと欲望が怪しく燃え上がっております。メイン3人が本当に面白い!


以降の巻。 友達でも恋人でも足りない気持ち。色めく19歳の夜。『ヒメゴト~十九歳の制服~』4巻