「正直どうでもいい?」

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人も星も想いも、すべてめぐっていくんだ。『彗星★少年団』

今日やった更新がいつもより短めだったので、短め更新ふたつめ。

彗星★少年団 (ぶんか社コミックス)彗星★少年団 (ぶんか社コミックス)
(2012/02/17)
倉薗 紀彦

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   全部めぐるよ 倉薗紀彦先生の「彗星★少年団」。1巻完結の作品です。 元気な子供たちの日常をまったりと、しかしノスタルジックに描いた日常漫画! 倉薗先生といえばサンデー超で連載していた「魔法行商人ロマ」が、現時点では代表作になると思いますが、この作品はロマの連載が始まる前から続いていた作品。 1話6ページととても短く、しかもそれで月刊ペースだったので、4年もかけた連載です。 小学生の男女が主人公の漫画ってそれだけで好きなんですが、この作品も例外でなく好みだったので、感想をかいていきたいなと。とは言ってもさらりとですが。


作品の性質上、あまり長文を書き連ねるというのも逆に難しくて。 というのもこの作品、メインの小学生の5人の学校生活を淡々と描いていくもの。 1話完結形式でページ数も6ページと少なく、そうそう大きくストーリーを動かしません。小話をひたすら連続させていくようなスタイル。 しかしその小話には小学生ならではの生活習慣や、季節ごとの特色を強くフィーチャーした内容が多く、実に風味豊かな読み応えを与えてくれます。 しかしサザエさん形式ではなく、5年生の春から始まったこの物語は、少しずつでも確実に時を進めてゆくのです。その感覚がなんとももどかしいというか、キュンとくるというか。 この作品は本当に、特別なことはしないんです。 けどそんな日々の連続が、より「日常感」を強調してくれるんですね。 等身大の小学生!って感じがまたツボでした。 大冒険はないし、大事件もないけど、彼らが大人になってから少年時代を思い出したら、きっといつだって胸をあったくしてくれそうな。かけがえのない「日常」が広がっているのです。 そしてそんな「日常」は終わりへと向かい出す。 ものすごく居心地のいい世界だったものだから、終盤なんて自分も寂しくなっちゃって。 ダラダラと続くように見せかけて、実はクライマックスに向けてタネを巻きながら進行し、とっておきの展開へと着実に心を盛り上げてくれる。 なんでもないような日々を積み重ね、その大切さを感じさせてくれていたからこそ、それが終わってしまうことへの切なさにグッと来ます。 彗星 この終盤がやはりハイライト! アルバムを一気にめくっていくように、それまでのいろんなシーンがフラッシュバックしてゆく。 なんでもない話の積み重なりが爆発し、、ラストで一気に切なくなる・・・! 正直このラストにやって来るまでは「普通の漫画」という気持ちだったんですけど、その「普通」の尊さというか眩しさというか、そういう想いがラストシーンで甘酸っぱさと一緒に胸いっぱいに広がる感覚に、思わずためいき。 そして最終話も秀逸。まぁ王道中の王道なんですけれども、彗星をモチーフに「すべてがめぐっていく」というテーマを上手く活かし、未来つながっていきます。 なにより物語の少年少女たちって、ラストで大人になった姿を見せてくれてこそかなと思うので、個人的にはとても嬉しくなりましたねw そこに大きなカタルシスはなくとも、しみじみと味わい深い感動がありました。 そして1番最後に素晴らしい余韻を与えてくれる「あとがき」の存在も大きい。 作者自身からの言葉もいちいち胸打つのです。


そんな一冊でした。子供たちの日常は、いつだってちょっと眩しい。 「魔法行商人ロマ」が少年漫画にしてはちょっとダークな雰囲気の強い作品でしたが、こちらは全体的に微笑ましくかわいい作品となっていますね。 性別も年代も問わず読めるんじゃないかなと。嫌う人間は少ないんじゃないかなと思う作品です。さくっと読めて、読み返しても楽しめそうですねえ。ぼーっと何も考えなくても楽しめる。 そしてこの表紙、いいですねえ。走りまわる子供たちの夏の空はやっぱり合う! 表紙の雰囲気がそのまま本編にも通じているので、表紙買いで大丈夫! なんでもないように続いていた日々が、思い出になった途端に輝き出す。 心地よく、懐かしい匂いの風を感じられるような作品でした。 『彗星★少年団』 ・・・・・・・・・★★★☆ まとまりある満足感を感じさせてくれる作品。小学生漫画の王道ですね。