「正直どうでもいい?」

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取り戻せるかな、あの頃夢みたこと『はれたら明日!』

はれたら明日! (ウィングス・コミックス)はれたら明日! (ウィングス・コミックス)
高嶋 ひろみ

新書館 2015-09-25
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   ああ でも カッコわるいほうがいろいろできるな 高嶋ひろみ先生の1巻完結青春漫画「はれたら明日!」の感想です。めちゃ爽やかだぞ! 「加瀬さん」シリーズの第3巻と同じタイミングで出た一冊。 リアルのことをお話しますとこの秋転職しまして、来月から新しい職場になるってタイミングなのですが、退職願をほぼ勢いだけで前の会社に突き出してしまってから次の会社が決まらないめちゃくちゃ不安な時期に読んで、自分にちょっと勇気をくれた本が「はれたら明日!」です。 大人になってから、1度は諦めた夢を再び追うために人生をやり直す!系のストーリーで 普段読んでても好きなテーマではあったのですが 前略のような状況で読んだらもうなんかかなり揺さぶられてしまったので、久しぶりにレビュー書きたいな、と。 自分自身そんな夢をもう一度どーだとか大層な転職をしたわけでは無いですが、新しいことをやったろうというエネルギーはもらいました。きちんと前向きな青春物語であり、ポジティブな光に満ちた漫画です。


岡山の田舎から上京し、東京で順風満帆に社会人生活を送るイケメン青年原田。 同僚上司からの信頼も厚い彼でしたが、昇進の話を持ちかけられた彼は それを保留にしてその脚で故郷・岡山にふらりと帰ってきます。 懐かしの地で偶然出会った女の子は、原田がかつて教育実習で短期間だけ小学校に行ったときの教え子。 その少女・梅村ひなの前向きさに支えられながら、教師という夢を再び目指しだす原田。 かつての友、幼馴染、そして家族。自分が去ったあとに確実に変わった故郷の中で、 あがきながらたまに息抜きしながら再スタートを頑張る、大人の青春漫画。 う~~~んなんだこの清々しいストーリーは! 1巻完結ということでテンポよく物語も転がり、ラストは爽快な気持ちにさせてくれる。 主人公の原田とひなちゃんのコンビも見ているだけで微笑ましい・・・! 高嶋先生らしいかわいらしくてPOPな世界の中にはとてもとても癒やされますね。 しかしそれだけではない。 変わりゆく風景、住まう人々。見ないフリをしていたかつての夢。 一度捨てたはずのものに、真正面からもう一度向き合っていく。 そこに伴う切なさや戸惑いや、再会の歓び、うまくいかない現実への苛立ち・・・ マイナスな気持ちも、たしかな温度と重みを持って描かれる。ここが良い。 描かれている主人公たちの年齢(20代)が近いこともあってか、親近感の湧く作品。 晴れたら11 生徒であるひなちゃんとの関係性も良い。 主人公からすると恋愛的な色っぽい感情が介されず、自分を現実に向きあわせてくれる、大人になって臆病になった脚を無理にでも歩かせてくれるような、眩しくてほっとけない存在。 ひなちゃんとしては、結構ロコツに主人公に対する好意を押し出してるんだけれどもw 現実に思いが届くかどうかは置いといて、そういう距離感のまま最後まで進む。 この作品においてはそのことが心地よい。 なにより梅村ひなちゃんがかわいいんだ。本当に。 あの生命力のカタマリのような天然色のキラキラはまぶしすぎるよ・・ 晴れたら12 原田との恋愛については、幼馴染であり今は教師となった山口さんが魅力的な立ち位置だ。 同じ夢を追ったこと、学生時代の思い出、原田から一方的に距離をとられてからも、彼女は彼女なりの教師人生を歩んでいた。そして今再び、ふたりの人生が交差する。 ネタバレになってしまうので伏せますが、彼女との「憧れ」の関係性がとても好き。 第5話のふたりのエピソードは本作の1番の盛り上がりどころ。甘酸っぺェ・・・甘酢っぺえよ! 最終話での原田と父親のやりとりは静かに泣ける。 かっこわるいほうが身軽でいろいろできると気づくってのはこの作品で言われると響くなァ。 もともとこの作家さんのファンだったために何気なしにレジに持って行った1冊でしたが、いい作品だったなぁ。 仕事にまつわる大人の青春物語。 田舎の寂れた空気とか、田舎特有のやたら結婚が早いような雰囲気とか そういう部分でも「わかるわかる」なところ盛りだくさんでした。 ありがちっぽいタイトルだけど、ラストにああやってこのタイトルを盛り込まれてしまうと爽やかで好き。 『はれたら明日!』 ・・・・・・・・・★★★★ 自分にとってはタイムリーすぎた。それ差し引いても綺麗にまとまった読後感のいい物語。