「正直どうでもいい?」

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いびつな君、いびつな歯ならび、いびつな愛。『不完全で不衛生でふしだら』1巻

不完全で不衛生でふしだら 1

不完全で不衛生でふしだら 1

  • 作者:すのはら風香
  • 出版社:KADOKAWA
  • 発売日: 2019年01月25日

コンプレックスでグズグズしている少年に、かわいいけど変態な少女がグイグイくる。 なるほど、好きなヤツですね・・・!

本作でデビューとなるすのはら風香先生はもとは同人で活動していて、この作品もコミティアで発表された作品がベースとなっています。これで賞を獲得し、そのまま連載化となりました。

【C91/コミティア119】創作男女本サンプル | すのはら風香 #pixiv https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=60564696

個人的にもこの同人誌が好きだったので、連載となったのがとても嬉しかったですね。主人公の腐りっぷりと女の子と仲良くなれてしまったことの感動やとまどいが程よく合わさっていて、まさに思春期のクソガキなんですよ。かわいくてたまらないわけです。

ポイントはやっぱり、コンプレックスの逆転。 主人公は歯並びが悪くて、それを気にして常にマスクをしているとうまく周囲にも溶け込めない鬱屈っぷり。どうやら過去にトラウマも抱えているようだし、完全に陰キャ。口内コンプレックスこじらせ男子。

ふしだら11

なのにその少女は、突然現れて突然顔を掴んで、そのコンプレックスに素手で触れてくる。

とつぜん顔掴んで口ん中に指つっこんで、ぐりぐり、ねっとり、一方的に愛を告げてくるのだ。俺にじゃなく。俺の口内に。

同人版ではもっと主人公の歯並びが悪くて良かったんですが、コミックス版はじゃっかんマイルドになっているかな。でも、この歪んだ関係性にビビッときてしまう。

主人公の歯並びに強い興味を持つヒロイン、麻衣子。歯医者の娘だから幼少のころからいろんな歯並びを見ているうちに、たぶんあえて美しいわけじゃない個性的な歯並びを好きになっていったんだろう。 そんなわけで主人公と麻衣子はたびたび学校で、こっそりとイチャイチャしているわけです。飯を食べてるところ観察したり、歯に触れてみたり、ハミガキをしたり。・・・イチャイチャか?これ? こんなんセックスとなにが違うんだ。なにが違うってんだ! 2度言った。

 

人様には見せられない、きっと納得も同意も得られない、ふたりだけの理解と接触の性愛。

人のコンプレックスも、美しくない歯並びも、そこにずけずけと触れてくる行為も、グロテスクなものだと思う。きつい言い方になってしまうけど、本来秘密にしていたいものだ。誰かに無遠慮に触れられたら痛むのだ。なのにそんな忌避されるべきウィークポイントに土足で踏み入って、たやすく触れてくる。そんなことほんとは許されないのに、彼女はその人のいちばん敏感なところを撫でてくる。グロテスクな行為だと思う。

けどそのグロテスクな接触が、こんな甘く映る関係性。ちょっとインモラルで、とてもクローズドな行為を通じて、恋愛未満セックス以上の世界が繰り広げられていく。 "ボーイ・ミーツ・ガール"って感じなんだよな。 やっぱり欠けたところを愛してくれる、違うもので満たして「あ、これでいいんだ」って思わせてくれるような救いの存在。都合がいい夢。そしてそれが相互であればもっといいわけで。

そういう意味ではヒロイン・麻衣子の特異性・異常性が作品のキーとなっているにも関わらず、作中ではそんなに浮いていないっていうのが意外なところかも知れない。

まぁ、だってね。かわいいもんね。

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はぁ~~~~~~~~~~~・・・・・・ コラッ!!麻衣子!!だれにでもそんなふうに微笑んでいるんだろう!? 「えっそんなことないよ!」「えっ、」「えっ。。」ってなるやーつ・・・(ED先生文脈

いや、手にしたペンチが不穏ですが・・・ いい。いいですよこれは。主人公にとって言い過ぎでもなんでもなく、神様みたいな女の子に映っている。どれだけ救われているか、どれだけ惹かれているかそれだけ主人公自身がどこまでわかっているのか・・・コラッ湯上麻衣子!いま気づいたけど名字が「ゆがみ」じゃないか!(今かよ)

 

変態性癖ラブコメヒロインとして必要な動きは十分にしてくれるし、小悪魔なのにちょっとポンコツなところが愛くるしいですね。気を引くためにあえて日課の歯磨きプレイをお預けしていたのに、主人公がとくに気にしているそぶりも見せないもんだから寂しくなって自分から言い出しちゃうやつ。はぁ~↑↑ こういうところなんですよ。いやらしいことはたくさんしてるのに付き合ってもいないし不思議な妙ちくりんプラトニックなバランスがいい。

 

 

あと、なんか興奮の度合いがやばいです。

 

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・・・。

彼女いわく、主人公の歯並びはあまりにも性的に卑猥すぎるためもはや顔面男性器と呼べる代物となっており、おもに下半身が大変なことになってしまうようです。

・・・読切版よりストレートに痴女になってんな! これが「商業版」ってことか・・・!

しかして、個人的にはもっとインモラルな方向性に行くかという期待もあったりしていたので、1巻を読んだ限りでは変態性癖ラブコメとしてちゃんと電撃系列な作りになっていると思うが、ほんのりと物足りなさもある。

もっとドロリとした要素も欲しかったなぁ。「よからぬ関係性が始まってしまったぞ・・・!」という胸の高鳴りをもっと感じていたかった。かわいらしい2人なんだけど、あのむわっと湿り気の感じる質感がもっと出ていれば最高だった。

まぁ、かと言って麻衣子の特異性が作中でことさらに話題になって彼女が学校で迫害されたりとか落ち込むような展開なんて見たくない!俺は生ぬるいラブコメ時空でねっとりしていたいんだ。俺をここに捨てていってくれ。歪んだ性癖を許しあえるこの楽園に・・・。いや彼女の性格だったらうまく生き延びるだろうな。擬態、うまいもんな。

人様にはなかなか見せられない二人だけのオリジナルの性愛を描く作品なので、ディープにゾクゾクさせてほしいなという願望はあります。「どう展開されるんだろう?」という疑問については、1巻を読み終えても依然あったりする。 頼む!心配にならない程度にくらいムードの中で切実に求め合う"ふしだら"な少年と少女を!ド性癖!あと逆に麻衣子ちゃんが自分の口の中をまじまじ観察される羞恥プレイ絶対来てほしい。

どんどん深めていってほしい、この愛しくも歪な関係の、その甘やかさを。

 

 

 

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あとどんどん濡れていってほしい。