「正直どうでもいい?」

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ヒマそうに見えて、けっこうイロイロ激動です。『凪のお暇』1~3巻

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コナリミサト先生の「凪のお暇」。セールやってたので電書で今でてる3巻までを購入しました。 マンガ大賞2018では第3位を獲得。ブレイクしてきている作品ですね。別にだから読んだほうがいいよなんて言うつもりは無いですけども。エレガンスイヴ掲載作って自分のアンテナになかなか自然とはひっかかってこないのが辛い所。

マンガ大賞ではだいたい読んだことのある作品がノミネートされていた中で唯一まったくノーマークだった作品で(個人的に「我らコンタクティ」を応援していたのですが)、しかもフタあけてみればあのメンツで第3位と大健闘じゃないですか。それでタイトルしか知らなかったのも恥ずかしかったので、読んでみたわけです。

ツイッターでもちょくちょくバズってたのか、画像が出回りまくってたんで断片的には読んでたんですけど。

んで、なるほどこれは面白い・・・!!サクサクよめてきっちりエンタメ。 コメディとして笑って楽しめる部分がまずあって読みやすいんですけど、それだけではなく。するどい人間観察から描かれる、社会の隅っこに生きている人々の毒や生きづらさ、そして日常にあるふっとリラックスできてしまう、あたたかな瞬間のバランスが絶妙。 心がゆる~~~っとなってる時に、背筋がヒヤリとする違和感や人の悪意が差し込まれる。思わぬ切れ味にページをめくるペースもあがるあがる。そして頑張ってる人が誰かを見返せるような、スカッとするクライマックスが気持ちいい構成が繰り返されていく。

そして主人公がどんどんと新しい自分を見つけていく成長と転落の様子が魅力。 空気ばっかりを読んで、読み過ぎたら過呼吸になって会社からリタイヤ。 1巻表紙のロングヘアがつやつやトゥルンっトゥルンの女子アナ風美人が・・・・・・

凪のお暇1

劇的ビフォーアフター。というかこれが地毛。そしてこの幸せそうなことよ。 ありのままに生きよう、窮屈に自分の心を押し殺してきたけどそれはもうムリだと、自分を少しずつ開放していく凪のスローライフ。 知らない街。なにもない部屋。のこり少ない残高・・・そして、たっぷりありすぎる時間!

人間関係の悩みが尽きない灰色のOL生活も今はむかし。モラハラパワハラ全開の彼氏ともおさらば。今大事なのは、クーラーすらないこの部屋で夏をどう乗り切るかだ。 節約大好きな彼女は、日々の楽しみや幸せもいっこいっこが小さくてかわいらしいのです。

ところが本人はスローで気兼ねのないまったりライフでいきたいのに、こういう性格だからか巻き込まれやすいし、悩みやすい。加えて金輪際おさらばかと思っていたモラハラ彼氏が実はかなりの依存体質ではるばる追っかけてくる。 この元カレくんがまーーーーーーーしょーーーーーもないヤツなんです。 営業成績バツグンで会社でも注目度の高い彼は、裏の顔は高圧的。簡単に凪の心を踏みにじってくる。とんでもないクソ野郎じゃねぇか。捨てて正解だわ。

と思いきや

凪のお暇2

まさかの凪にガン惚れ。捨てられてクヨクヨしっぱなしの超女々しい依存体質男でした。 営業成績もいいということは人間関係の些細なささくれだったり心の機微にだって、反応できる素質があるはずなのです。それなのに凪に対する彼の態度があまりにもモラハラチックなのは、ひとえに彼の精神年齢が小学生並みだから説。好きな子ほどいじめたくなるっていうね・・・。不憫に思えてくるけど、それでもやっぱこいつを応援する気にはまだなれないなぁ。でも正直この作品1番の萌キャラはこいつだよ。

しかももうひとり、彼女の悩ますヤツがいる。隣に住んでいるウェイでパーリーなピーポーのゴンさんだ。こいつもなかなかの曲者である。なにせ心が広くてやさしくて、クラブなんていう大人っぽい未知の世界の住人で、ゆるい時間を生きるのが上手で、そして鬼かというほどセックスが上手い・・・!28歳のうぶな凪ちゃんには刺激が強すぎる凶悪犯だ。

かと言ってモラハラ彼氏とうまくいくのも今の所ではなんかモヤッとくる。 恋愛エピソードはほどほどにして、凪ちゃんがきっちりと自立できる女性になるまでのスローライフをもっと見ていたのに・・・作者直々にクズと言われちゃうようなダメンズに板挟み。 はやく凪ちゃんに本当のお暇をあげてくれ。

 


まったりと始まる物語ですが徐々にストーリーにうねりがましていくのも大きな魅力。 その中で、わかりやすいカタルシスではないけれど、しんみりとスカッとさせられる、爽やかな展開も持ち味ですよね。

知らず知らずのうちに、人は人を評価して区別していく。 この人は自分とは違うな、とか。あの人よりすごいな、とか。 もっとエグいとこいけば自分よりショボい人生歩んでる人を見て安心したり、相手の男と元カレの年収くらべて下に見たり、まぁ人間なんてそんなもんでしょう。誰かに見られることで、見られていることを意識することで自分を確立する。空気を読む。

でもそうできない人も、あえてそうしない人もいる。

凪のお暇3

この作品に出てくる人って、精一杯いきていても誰かから陰口を叩かれたり、足元をすくわれたり、うまく行きてはいけない人々がちらほらといる。 時に容赦なくズタボロにされる姿に目を背けたくなるけれど、この作品はやさしくて、しっかりと気持ちを持ち上げてくれる。

尖った部分を持ったキャラクターがいろいろと出てきますけれども、凪の包容力のおかげなのか(彼女はたまに拒否するけれど、それでも)この作品においてそれら個性のぶつかり合いが間違いなく素晴らしい化学反応を起こしていて、見逃せない人間関係を構築していく。決してハデな作品でもないのに引き込まれるのは、人間の不安定さやアンバランスであるがゆえの魅力をうまく描いているからなんだろうな。

そのうちサクッと実写ドラマとかになりそうな予感がありますね。 主人公の凪の好感度がとてもたかい(おっぱいもおおきい)ので、彼女をとても応援したくなりますね。それにしてもダブルクズとどう向き合っていくのか。元カレくんがもう少しふだんの言動をきちんとできていればなあ。もったいねえなぁ。