「正直どうでもいい?」

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2016年面白かった漫画BEST30! 前半戦 30位~16位

今年は本当に更新が少ない1年となってしまいました・・・もう仕事ソシャゲ仕事ソシャゲ なので年末くらいは一年を振り返る記事を。 前回がエロ漫画の総括だったので、今回は一般向け漫画の総括。 2016年に発売された漫画作品から個人的に面白かった作品BEST30です。 が、いざ各作品でコメント書き始めたら、最近更新が減っていることもあって書きたいこと山積みで、えらい文章量に・・・。なので分割して更新。 今回は前半戦です。だらだら書いていきますので適当に読み流すカンジで、よろしくです。 いちおうランキングっぽくしましたけど酒入れたテンションで書いてるのでわりと適当です。


<img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51KCAJ98rwL._SL160_.jpg" border="0" alt="のーぷろぶれむ家族(2) (ヤンマガKCスペシャル)" />のーぷろぶれむ家族(2) (ヤンマガKCスペシャル)
麦盛 なぎ

講談社 2016-07-20
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30.のーぷろぶれむ家族/麦盛 なぎ 全2巻。初期からは考えつかなかったシリアス展開へと進んでいったが、綺麗にまとまったと思います。 タイトルに関する通り、「家族」を描いた作品。しかも描き方が濃密だ。 主人公の母親はマネキン。いや、そんなわけはないんだけれど。主人公の父親が”壊れて”しまって、マネキンを妻と思い込んだ生活をしている。そんな秘密を抱えながら、ややコメディチックにスタートした本作。 しかしその秘密が暴かれたことで、主人公をめぐる学生生活は一変する。 主人公がせいいっぱいに日々を戦い抜く姿がジンとくるしとてもかわいらしい・・・。 しかし濃密に、思春期の、ドロリと濁った黒い分子がたしかに感じられる、ここがたまらんのですよ。非常に息苦しいあの中学校の教室の空気がページがのぼりたつようなリアリティでそこにある。 見えないルールに縛られたり、得体の知れない悪意に触れたり、もっと近づきたい相手にも素直になれなかったり、心細くて泣いてしまったり、そうして誰かを信じられなくなったり。 きっと経験があるあの束縛を、主人公は体当たりでぶつかりながら手探りで前へ進む。 儚げな印象の主人公だけれど、いざというときの苛烈な攻めがアツい。 正しい人なんていない。みんな間違えていく。でもそんな事たいしたことじゃないと、ぜんぶ包んで認めてくれる。ノープロブレム。家族がいること、相談できるだれかがいること、大切な自分の居場所。 当初、問題ありまくりな家族を描く皮肉のような意味合いで「のーぷろぶれむ家族」というタイトルになったのかと思ったが、最後まで読むとまた違った側面からタイトルも味わえる仕掛け。 2巻ラストでお父さんが「気付いていた」ことに気付いたシーンはこっちまで泣きそうになりました・・・すごい、こんなに突き刺してくるのかよ、と! そして迎えるクライマックスの爽やかな事。ラブ的な意味でも、ハッピーエンドで大満足。 それと装丁が非常に美しいです。1巻2巻あわせて、ものとして手元においておきたくなる。良い本というのは良い装丁がされているということです。 家族モノでもあるし、暴走する思春期の過ちとそれの救済でもある。いろんな角度から何度読んでも違った楽しみ方ができそうな作品ですね。 あとデビュー作もすごくいいのでオススメですよ→微熱のまま触れあって歌いあって『17歳℃』


マドンナはガラスケースの中(2) (リュエルコミックス)マドンナはガラスケースの中(2) (リュエルコミックス)
スガワラ エス

実業之日本社 2016-05-20
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29.マドンナはガラスケースの中/スガワラエス スガワラエスコ先生の連載デビュー作、全2巻。そもそもリュエルコミックスというのはコミティアありきな作家選出をしておりコミティアキッズはやや複雑な思いがあるものと勝手に思っているんですが、そんな中飛び出した本作は作家の持ち味が生かされまくったかなりいい出来栄え。 爬虫類にしか興奮できない特殊性癖持ちの男が主人公。彼のつとめる爬虫類専門ペットショップに出入りしはじめた妖艶な少女に惹かれだすも、なんと彼女はランドセルをせおう年齢だった、という年の差ラブコメ 臆病なのに悶々としまくる主人公のいじらしさがまずかわいいし、いやそんなことよりふたまわり近く年が離れている男を手玉に取る、JSヒロインゆりちゃんの魔性の女っぷりな・・・最高でっしょ・・・!!! 少女でありながら大人びていて、自分が『そう見られる』ことを知った上で距離感を測ってくるオトナなエロスも漂わせる。しかしときに彼女は年相応の、単なる12歳としての顔で涙を流す瞬間もある。この2面性よ! 末恐ろしいな・・・12歳って男性から性的な視線を浴びることにまず嫌悪感があるような年頃だと思うんですが、彼女はすでに遥か先ゆく。 逆に言えば、もっと昔からそういうふうに見られてきたという、悲しい成熟の証なのだとも感じる。 いわゆる男性的な性描写やあざとい仕草にグッと胸を掴まれますが、スガワラ先生の描く”線の艶やかさ”も非常にキャッチーな要素。そして描かれる生き物たちも愛情たっぷりに存在している。 動物たちの生態がキャラクターたちのドラマにもシンクロしたり、「生命」の持つ力をみせることでこの作品のストーリーも補強されています。 そしてなにより、ヒロインの造形が魅力的すぎる。 この瞳に見つめられたらもうイチコロってもんだ・・・。 2巻というコンパクトな尺の中で、爬虫類飼育漫画としての面も年の差ラブコメとしてもばっちり深められていく。もちろんもっと長く読みたかったことは間違いないけれど・・・ それにしてもこのラストシーンの圧倒的な爽やかさ!何段飛ばしかという跳躍! しかしこれくらいの生き急いだ、感情をコントロールしきれない恋愛感情の発露というのが、最後にしてヒロインのキャラをより愛おしいものにしてくれているように感じます。 いくつであって女は女ということか。魅惑の美少女を堪能したい、そしてきらめく年の差恋愛を読みたい方に。


AIの遺電子 1 (少年チャンピオン・コミックス)AIの遺電子 1 (少年チャンピオン・コミックス)
山田胡瓜

秋田書店 2016-04-08
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28.AIの遺伝子/山田胡瓜 オムニバス形式で綴られる人とアンドロイドの近未来系ショートストーリーズ。 少年誌らしからぬ作風なんだけど、そういう雑多な紙面こそがチャンピオンらしいなとも思う。 雑な説明をすると、なんとなく「世にも奇妙な物語」の原案になりそうなマンガです(雑) 既発表作「バイナリ畑でつかまえて」のテーマを引き継いでいるようにも思えますが、今作は特にアンドロイドに特化した内容になっている。 人間が生み出した技術としてのアンドロイド。パートナーとして社会に溶け込んだアンドロイド。 アンドロイドによって変わった未来の、その片隅にある小さな小さな個々の物語。 科学というのは人の感情とは切り離されたロジックの世界かと思っていたんだけど、本作を読んでいるとそれは違うのかもとも思った。 非常に繊細でときに理不尽な「感情」に、人はもちろん機械すら振り回されていく。 人と機械の世界はノスタルジックでときにシニカルで、毎回毎回ふかみのあるテーマに取り組んでいる。 週刊連載とは思えない濃度で毎週描かれているものだから、もうコミックス1冊読んだだけで満足感がすごいのだ。 さらりとした清涼感のある絵柄なんだけども、思いの外エグかったり、気持ちを大切にした優しい物語もある。そしてそのどれもが科学技術が世界を前へと進ませていくという事実。 1話1話はシンプルでも、何話も積み重ねることで「未来の姿」を読者にリアルに浮かび上がらせてくれるんですよね。技術の進歩やガジェットの発展へのロマンを感じる。 そしてこんなに進んだ世界なのに、どこか人間本来の「愚かしさ」が根っこにある。 あいもかわらず馬鹿げた気持ちを優先しても、それで満足だってしてしまう。人も愛も変わらず。アンドロイドが隣人となる世界のビジョンを、こんなに多面的に描けるんだなぁ。 ネタがどれだけ続くのかなぁという心配もあるけれど、願わくばいつまでも読んでいたい作品の一つ。 AIの物語でもあり、愛の物語でもあり。良質なSF作品。


ミッドナイトブルー (フィールコミックス)ミッドナイトブルー (フィールコミックス)
須藤 佑実

祥伝社 2016-11-08
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27.ミッドナイトブルー/須藤佑実 タイトル!!!表紙絵!!!装丁!!!! 三位一体のノスタルジー攻撃になす術なくレジ直行いたしました。買ってから気づいたけど「流寓の姉弟」の作家さんだった。通りでセンスのいい漫画だ。 今回も小さな世界と小さな感情でおおきく揺さぶってくる、珠玉の一冊。 しかもこれまた、「過去にしばられた人々」がテーマなのかってくらい、割り切れていない奴らばっかりでてきてもう堪らない。これでもかと性癖をストレートに突いてくる。 フィーヤンに掲載されていたということで雑誌のイメージからちょっと身構えたのだけれど、非常にかわいらしい作品集です。女心の複雑さと、その女心に振り回されるかわいそうな男たちを描いた、感傷的な人生の断片たち。 「箱の中の思い出」、整形した元生徒との再会。美しい、記憶に留めたいと思ったそれは、他者からすれば無用のものだったと。再会がもたらすのは甘酸っぱい青春のやりなおしと後悔とセトセトラ。 結局主人公が墓まで気持ちを持ち続けるお話なことからも、本作が「死ぬまでゆっくりと引きずる」作品集だと印象づけられる。まぁ死ぬまでなにかに縛られているなんて、きっと誰だってそうなんだ。 「白い糸」仲が良かった、けれど深くは知らなかった、そうして遠ざけられた憧れの先輩とのエピソード。こりゃまた青春濃度が高くて素晴らしい。 青春を取り戻すために一瞬瞳が輝く大人たち、それもまた青春なんだよな。ヒロインのキャラクター性が示唆的で、彼女自身もそう認識するように魔法のような力があのころにはある。そしてそれを失った無力感から、自らその魔法の種明かしをするシーンは、漂う切なさに泣きそうになった・・・。 「ある夫婦の記録」本作で一番ひねくれた男女が登場するセクシーな短編。妻を尊く思うすぎるがあまり触れられず、別居して監視カメラで妻を見る夫。夫の言うがまま、そして夫への小さな反抗心を伴って行われる公認の浮気。 一度壊れた関係が、ゆっくりとコーヒーの香りとともに癒やされていくラストシーンは余韻もたっぷり。大好きな作品です。 最終作であり表題作「ミッドナイトブルー」は、2年ごとの同期会に現れる、昔好きだった少女の幽霊との逢瀬を描いたリリカルな作品。雰囲気作りも一際丁寧で、少女の停滞した時空と、主人公たちの残酷な時間の流れのズレがどんどんと開いていく中、いっきにその距離を詰めていく流れはゾクゾクが止まらなかった・・・!!コミックス最後にふさわしい内容だと思います。 全体的に表紙イラストの雰囲気に非常に合っていて、みんなセピア色の記憶の中で逃れられない運命を掴んでしまった連中ばかりなのだ。 さらりとした質感のポップな絵柄も好印象です。まったりと流れていく中で、インパクトのある絵をスムーズに投入してきている感じもうまいなぁ。 万人受けする短編集だと思います。ノスタルジー全開、喪失者たちのやさしい物語。 いや、正直内容もいいけど装丁が最高すぎる。手に取った時のテンションの高ぶり。本編の良さを何倍にも引き上げているように思います。こういう相乗効果が単行本の良さだよな。俺的2016年コミックス装丁完成度No.1。


恋のツキ(2) (モーニングコミックス)恋のツキ(2) (モーニングコミックス)
新田章

講談社 2016-11-22
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26.恋のツキ/新田章 超傑作「あそびあい」に続く新田章先生の新作。なんというか、「あそびあい」の流れから見ると作者の性癖を色濃く感じる・・・いいぞ、それでいいんだ・・・俺も大好きだから・・・!! 31歳、彼氏持ちの主人公。惰性で同棲し、ときめきもなく、このままだらだら人生を消費ししていくのみの人生。かと思っていたのに映画の趣味もファッションもドンピシャ、しかも顔立ちもタイプな男の子と急接近! 問題はその男の子が高校生だということだ。なんと16再歳の差。 いけないと思いつつもどうしても心惹かれていく主人公ワコ。スリル満点・・・というほどのアドベンチャー感はないが、日常の描写がしっかりとしている分、非常にリアリティのある、『浮気』の物語に仕上がっている。 女性にとって「20後半から30を過ぎて付き合っている異性」がどういう存在であるか、生々しい言葉やワコ本人の描写とともに綴られていく。結婚は意識する。なんとなく老後のこととかのイメージも湧く。彼はサラリーマン、こっちはフリーター。なんとなく・・・合う、感じがある。 けれど女としてココロ揺さぶられるかと言うと・・・・・・No. 彼氏のふうくんはお調子者で態度もでかい、たぶんよくいる、雑なタイプの男性。リアルなキャラ。 そんなときに現れた超タイプの美少年が、なんと自分に好意さえ抱いてくれる。 本能と理性がせめぎあい・・・結果的に、ワコは自分に少しずつ言い訳を繰り返しながら――浮気をしていってしまうのだ。 さわやかなタッチでねっとりと男女の関係を描く作風は相変わらず。 目に見えない情念のようなものがページから匂い立つ。ここらへんは流石の一言。 その上、刺激的なストーリーともに飛び出す「女の本音」的部分も魅力的だ。 ワコは天然っぽくて可愛らしい女性なんだけれど、31歳という年齢がリアルに肩にのしかかっている。夢ばかり見てはいられない。けれどドラマのようなときめきに憧れる。三十路女性ならではの葛藤だ。 特に2巻、ラブホまで行っちゃってだいぶ浮気も深まってきた中で、ワコがいまの彼氏と少年を比べたとき、ひとりの女性として本気で自分の言葉で二人の男性を比較するシーンがある。この切れ味の鋭さと言ったら・・・! 年の差なんて関係無いって言うけれど、いざ直面したとき、16歳の年の差を恐れない訳がない。 自分は今31歳で、相手は高校生だ。しかも浮気の関係で。 じゃあ結婚をするとしたら?何年後だ?そのとき私は何歳になっている?子供はどうする?いくつで産める?4年付き合っているいまの彼氏は結婚を意識している。両親に挨拶へいく約束もした。そんな相手とこれから別れを切り出せる?友人たちに顔向けができる? きっと10年前なら違う結論が出せていたのだ。人にとっての10年が、どれほど重要か。 1巻からすでに胃が痛かったけれど2巻から本番。完全にスイッチが入って作者もノリノリだ。 ストレスでハゲそう。でもページを捲る手が止まらない。この本にかかれている言葉たちはどれも素直だ。それは理性で押し込めた社会常識より、ずっと熱く、そして痛みを伴う。 誰もがいけないことと知って、それでも人は罪を犯す。「浮気は文化」なんて言えない。これは卑怯者が一人ひとり背負う、本当の愛と罪の十字架だ。


月曜日は2限から(7) (ゲッサン少年サンデーコミックス)月曜日は2限から(7) (ゲッサン少年サンデーコミックス)
斉藤ゆう

小学館 2016-11-11
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25.月曜日は2限から/斉藤ゆう 終わってみれば、本当に寂しい。なんかいつもあるような気がしてたんだよな。使い慣れたシャーペンみたいな、ずっと着けてるイヤホンみたいな感じで、決して派手ではないけれど4年弱ゲッサンで連載されていた青春4コマ漫画。 主人公の男子高校生居村くんと、校則まもらない自由奔放ガール咲野さんの日常を描いた作品です。 何が面白いのかって言うと、まぁ本当にありふれた事なんですけど、この空気感。 会話のかけあい、そのひとつひとつ。激しいツッコミも無ければぶっ飛んだボケもない。 淡々とした日常の中で、たんたんと会話している。それだけなのに、テンポのコントロールやギャグのシュールなセンス、言葉選びからすべてがツボだった・・・! 咲野の言葉はなんか世の真理をついていそうで、実際はただの怠け癖だったり皮肉だったりを言っているだけなんですけれど、あのけだるい表情で言われると全部許してしまう。 個人的にゲッサンという雑誌自体に思い入れがありまして、まぁ創刊からずっと追っているので、いろんな新人さんが出てきましたけれど、別にこの作品って有名でもないし雑誌内ですごくいい位置にあったというわけでもありません。唯一の4コマ漫画という特徴はあったけれども。 MIXとか信長協奏曲とか高木さんとか、人気作の影に隠れ続けておそらく知名度もそれほど高くないでしょう。 けれど毎月読むことで心がさっぱりとしてしかも笑えて、本当に、物語が終わりに向かっていくにつれてどんどんと好きになってしまった作品でした。 もちろんストーリーの盛り上がりも素晴らしかった。 終盤ラブがコメりだした頃からの主人公と咲野のやりとりは一層可愛らしく、両思いだとお互いにわかっていてもそれを避けながら、探り合いながらふざけ合いながら、いつものトーンでおしゃべりを続けてくれた。 最終話付近では、静かに盛り上がったテンションがいっきに弾ける、最高の青春劇を見せてくれる。叫び出したいくらいに興奮してしまって自分でも「あれ、こんな作品だったか???」と混乱したりもしたw 明らかに途中からムードも変わってきたのにそれに違和感がなかったのも見事。徐々に徐々に、クライマックスへの流れが計算され組み込まれていった。いや偶然かな・・・ いや、本当に自分でも訳わからんくらい今年いきなり好きになったからビビる。 青春4コマの傑作だと思います。いろんな人に読まれて愛されて欲しい。


ハイスコアガール(6) (ビッグガンガンコミックススーパー)ハイスコアガール(6) (ビッグガンガンコミックススーパー)
押切 蓮介

スクウェア・エニックス 2016-07-25
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24.ハイスコアガール/押切 蓮介 復活を遂げたハイスコアガール2年ぶりの新刊!! シンプルに「久しぶり!」という気持ちと、大人な事情はさておきともかく内容がクッソ面白かったわけで、とにかく夢中にさせられた一冊だ。 なんせ5巻のヒキが卑怯すぎた。最高潮の盛り上がりの中で、まさかの悲劇が巻き起こり連載中断、完全に絶望させられたものである。ホント、復活してくれてよかった・・・アニメ化の企画はまだ動いているのかな・・・。 自分は正直この作品で描かれている時代をリアルタイムでは生きていないし 出てくるゲームもちゃんと触ったことのないものばっかりだ。 それでも彼らの姿になんとなく心強さや親しみを感じてしまうのは、自分自身、どうしようもなく夢中になってしまうときがあったり、ゲームやアニメといった二次元の住民たちに、自己暗示のようなものだが、自分の背中を押してもらえていると思う瞬間があったりするからだ。 ハイスコアガールではときおり風景に、キャラクターたちが思い描いたキャラクターがまるでそこに実在するかのように描かれたり、重要なシーンでは彼らに声援やアドバイスを送っている。もちろん妄想にすぎないのだけれど、 ただの娯楽じゃない。楽しい瞬間をくれた作品というのは、いつしか自分の一部になってしまうんだ。 その作品のキャラクターが自分の中で生命をもってひとりでに動き出し、激しく自分を奮い立たせてくれたりする。今巻収録の第35話のクライマックスでは、日高が自分の操作キャラを空に浮かべて微笑む。名シーンだ・・・。 没頭する趣味への愛。この描き方が素晴らしくて、羨ましくなるほどなんだよな。 そういう熱を持った作品であるとともに、まさに今、ラブコメ的にも大盛り上がりだった。 まあまず日高さんとの一騎打ち。これが読みたくて読みたくて仕方がなかった。 さらには大野といっしょにAOUに出かけるデートイベントも発生。甘酸っペエ!!!そして濃厚に時代背景を反映する懐かしゲームの数々に酔いしれる!! じれったくて仕方がないけれど、確実な関係も進歩・・・ニヤニヤしすぎて頬がとけそうだぞ。 幽閉状態の大野さんにむけてイタズラ心満点の自作データ入り「RPGツクール」を渡すハルオ。女性陣にイチャモンつけられながらときメモをプレイするハルオ。 ほどほどにクソガキできちんとラブコメ主人公をやってくれるハルオは、本当にいい主人公だな。 ともかく、ようやく連載も再開されたハイスコアガール。これからも楽しみにしていきたいです。


hなhとA子の呪い 1 (リュウコミックス)hなhとA子の呪い 1 (リュウコミックス)
中野でいち

徳間書店 2016-04-13
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23.hなhとA子の呪い/中野でいち 濃密だなー!とてもリュウらしいひねくれたテーマとエネルギッシュな勢いを併せ持つ期待の新作。 前作「十月桜」はキャッチーな設定がありましたが、今回はかなりぶっ飛んだ内容となっています。 人間と性欲とそれにともなう罪悪感、それをどう折り合いつければいいのか。 中野でいち作品と、コミュニケーションの中で不全する事故、そして己の中の葛藤、自意識への苦しみ・・・といったテーマで作品とおおく発表している、ぶっちゃけめちゃくちゃ捻くれてて大好きなんですが 今作は毒々しいほどのカラフルな極彩色の世界。そして己と戦う青年が描かれていく。 若くして社長となり地位を手に入れた主人公は、「性欲は真実の愛にとって障害となる」という持論を持ち、自分には性欲は一滴も存在しない、そうあることが正しく祝福されるべきとしてこれまで生きてきた。 しかし彼の視界に現れた妖精のような少女が突如すべてを変えてしまう。 いや、押し隠していたものすべてを暴いてしまう。 彼が奥底に秘めてきた、きたないドロドロとした欲望を。 そして誰よりもそのことに本人が傷ついて、読者にまで突き刺さってくる迫真さがある。 愛する人が処女でなければ赦せないような、いわゆる「童貞臭い」という男性性について 鋭く切り込んできている。主人公が描く理想は、実際、共感できてしまう。 100%の純度で人は人を愛せはしないのだろうか。 誰かを愛することはセックスがしたいだけなのではないだろうか。 ただただ穏やかに清らかに誰かを愛せるような人間に、自分はなれないのだろうか――― かなりデフォルメを効かせたかわいらしいキャラクターたちですが、展開されていく内容は文学的。テーマがエロスについてですが性的になりすぎず、しかしエンタメらしく疾走感に満ちた破天荒さにあふれていて、とにかくアツい。 ただ、なんとなくだけれど本作を真正面から楽しめるのは、きっと男の特権なのかな、という雑な優越感もある。女性しか/男性しか読めないという断言はナンセンスなのは百も承知なんだけれど。 いつの頃かこれを思い、いつの頃か忘れてしまう”拘り”を思い出せる気がする。 彼の新年は間違っているのかもしれない。 子供じみたくだらない理想かもしれない。 真実の愛なんてどこにも、無いかもしれない。 けれど彼が彼なりに、正しくあろうと足掻くことに、少しでも、少しでも価値があってほしい。 自分なりの正義を貫こうとすることを誇らしく思えるようなそういう物語が読みたい。 そう願ってしまう作品。ネックはちょっとタイトルがタイピングしづらいことぐらいだな。


春の呪い 2 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)春の呪い 2 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
小西明日翔

一迅社 2016-12-24
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22.春の呪い/小西明日翔 最愛の妹が死んだ。 それから私はその妹の婚約者だった男の、恋人になった。 導入のこれだけで読みたくなる。これがキャッチーってヤツなんだよな・・・(キャッチーとは ゼロサム連載作。全2巻。 今年のいろんな漫画賞でも上位にノミネートされており、漫画好きからの評価も高い作品です。それも頷ける出来栄え。こんなに心に迫ってくる、死者との対峙の物語を初連載作しょっぱなから放ってくる新人作家さん、恐ろしい・・・。 基本的に死者と生者の関係をクローズアップする作品は大好物で しかも本作なりに「死をひきずる」の先を描いてみせてくれる。 もう性癖にド直球投げ込まれすぎて精神的にしんどい。超興奮。 自分のすべてとも言える存在だった妹が亡くなり、 なのに今、その妹を心底裏切る、道徳的に許されない感情に踊らされる。 妹への執着から大切な男性にも優しくできず、家族からも厳しい言葉を投げかけられ、自分でも幸せになるならもっと別の未知があるだろうとわかっている、わかりきっているのに、 それはもう呪いのように、離れがたい。 誰も彼も、誰かに許されたいのに。いや本質的には自分に許されたいのに。 個人的にはハルのHNが「アキ」だったのがグッときました。 たまたまこの名前にしたと彼女は言っていたけれど、多分そうではなくて春⇔秋という対比から「まったく別の自分になりたい」という気持ちが透けてみえるよう。 実際に冬吾が自分とはタイプのちがう姉を見る時の視線に、敏感に反応していた春。 愛しい姉でもありながら憧れでもあり、しかし嫉妬の対象でもあったのだろう。 そして春は、自分が死んだあとにもし姉と冬吾が恋人になったら・・・という想定で、悩み抜いた末の強烈なひと文を遺してる。 ただ儚いだけの存在ではなかった。女性ならではの感覚にゾクゾクする。 そしてこれだけ難しく入り組んだ物語が、しっかりと全2巻で決着する。 最初から決めていた着地ができたと作者も言っていたし、この構成力の高さにもグッと掴まれました。個人的に長編よりも単巻とか全5巻とか、やや短めのお話の方が好きなので。 絵のタッチは荒々しいのですが、それも物語に合っていました。思いっきり心労で目んたまグチャグチャになってるやつらの顔、みんな苦しそうでとてもとても可愛いです。 終盤なんか言葉のひとつひとつが重すぎて、悩み抜いて絞りきって出した覚悟がドロドロ沸騰しているようなラストシーンにんってます。 とけない呪いに一生苦しめられていく。 苦しまなければ生きていけないふたりだから。


あの日、世界の真ん中で (ウィングス・コミックス)あの日、世界の真ん中で (ウィングス・コミックス)
小鬼36℃

新書館 2016-11-25
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21.あの日、世界の真ん中で/小鬼36℃ 鮮烈。 それは目に突き刺さるような色彩のカバーイラストでもあるし、 あまりにも剥き出しにリビドーが叩きつけられたストーリーにも感じる。 子鬼36℃先生の商業デビューコミックスは、悶々とした10代のネガティブな迷いを歌にしてぶっ飛ばす、超かっこいいクソエモ青春漫画です。 というかもう「好きな歌を自分の作品内で歌わせたい!!」という熱がガンガン伝わってくる。 きっと作者さんも大好きなんであろう、実在するとある曲が大々的に登場しますので 俺含めそういう「実在する曲と漫画のストーリーがシンクロしてすげぇいい感じになる(語彙」のが大好きなひとは、ちょっとコイツは素通りできませんぜ。要注目。 主人公の茎太はギター少年だがそれには打ち込めず、腐って過ごす田舎の少年。 しかし幼馴染の少女が陸上でスカウトされ、いずれはこの町を出るという話が出て来る。 やる気がでない、なにも出来ない、下らない自分のどうしようもなく停滞した日常。そんな中で自分の半身とも呼べる少女が、自分から離れていく不安に襲われる。 片や部活で評価され町を出る。片や自分は無気力、非生産の穀潰し――― 劣等感と無力感のあまり暴走してしまう。暴走して気づく、脈打つ心臓の音、その熱さ。 ふたたびギターを手に取る主人公。そしてそれを優しく支える幼馴染の少女・・・ もう、めちゃくちゃ青春してんなお前ら!!!って感じで大好きです。 途中からわりとサクッと主人公とヒロインが結ばれるんですが、 もうふたりとも可愛くて可愛くて、モダモダしちゃうんですよ・・・! 関西の男女はケンカのながれでセックスするという艦これの龍驤本で学んだ事象が俺の中でさらに補強されましたね。 あと日本人はDNAに刻まれてるレベルで幼馴染属性持ちだと思う。大好き。 幼馴染から恋人へのステップアップで、本人たちもギクシャクしてるし周囲もワクワクしちゃう。ぎこちないけれど確かに両思いで、きちんと幼馴染が幸せになれる。俺はいつまでもこういう漫画を好きでいたい。 しかし幸せな中でも主人公の心の不安は晴れない。むしろ幸福を手にすればそれだけ闇は彼に降り注ぐ。拭いきれない思春期の苛立ちを、少年はもういちどギターと歌にたたきつけていく。 ギターなんかで世界は変わらないと、達観したようなことを彼は言う。 この世界を呪って、つまらない日々を腐して、非力な自分を憎んで。 けれど、物語はとてもすがすがしく幕を閉じる。 この物語は少年が人生に灯る光を見つけるための、世界への必死の抗戦だ。


あにいもうとあにいもうと
ハルミチヒロ

白泉社 2016-12-22
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20.あにいもうと/ハルミチヒロ あーーーーー染みる、染みますなぁハルミチヒロ先生の漫画は・・・!!! 楽園に掲載された短編をおさめた短編集。過去作よりグッと「少女漫画」に接近しているような感じ。タイトルに「いもうと」とあるようにティーンの少女たちが多いです。もちろん、それだけじゃないので一筋縄でも行かないのですが・・・ 恋愛という一言で括りきれない、括りたくない、繊細かつ複雑なそれぞれの感情。 近親へ、同性へ、異性へ、そして自分へ。 成熟していない10代だからこその不透明さとか、機嫌の悪さとか、もうホンットかわいいなぁ。 お気に入りなのを個別に感想。 「間違っている恋」付き合っているけど経験はまだな高校生カップル。その彼女さんはどこか冷めているようで、彼氏へのこじれた想いを抱いている。「かわいそうなあなたの顔が好き」という。そしてまだ知らない世界への不安のような、ざわめきのような感覚。キラキラしているだなんて思わない、けれどひたすらに胸を焦がす甘くじれったい憂鬱。 ストーリー色は薄いんだけど、少女ならではのもの寂しい感覚がすみまで行き渡っていて、最後のモノローグへの流れも非常に美しい。何度も読んでしまう、澄み切った冬のような空気です。あにいもうと」お兄ちゃん離れができていない妹さんのお話。ギャンギャン喚くしワガママだし、非常に幼い印象のヒロインです。しかし彼女のセリフはいっこいっこがリアルで剥き身の感情がほとばしっていて、身動きが取れない。本人にすら持て余す感情を読者だって受け止めきれるわけがないんだな。 お兄ちゃんにかわいがってもらえる幼い女の子のままでいたい。まだ、あと、もう少し・・・ 彼女なりの決別(というか納得かな)が、なんとも彼女らしいふんわりさでニッコリ。 「魔法使いの娘」ちょっとファンタジックな設定で送られる、思春期女子全開のお話。これはラブコメでもあるけれど、母娘の物語だなぁ実質。娘のためを思って貞操をまもる魔法をかけた母親に、娘は立ち向かう。「ママと私は違う人間なんだから!」のセリフで泣きそうなお母さんにじんわり切なくなってしまう。。。 母親とぶつかるのも思春期らしくて、オトナの2,3歩手前でもじもじしている10代の時間をやさしく見つめていられる作品です。子供っていうのはオトナの幼虫なのではなく、別の生き物に近い。 全体的に思春期力が高くて、短編集としてテンションも統一されてて読みやすいですね。ハルミチヒロ先生はオトナな女性を描くのがうまいと思っていたけれど、そうじゃなかったんだな、女という性を描くのが本当に素晴らしい。 とっても甘酸っぱい一冊。幅広くオススメしたい。


初恋ゾンビ 5 (少年サンデーコミックス)初恋ゾンビ 5 (少年サンデーコミックス)
峰浪 りょう

小学館 2016-12-16
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19.初恋ゾンビ/峰浪りょう 超傑作「ヒメゴト~十九歳の制服~」完結後、週刊少年サンデーに舞台を移した峰浪りょう先生の新作。 ヒメゴトのことを語りだすと面倒くさくなるおじさんなので程々に留めておきますが。主要キャラクターたちが生み出す深みのある”コンプレックス”の物語と加速しまくる急転直下のストーリーが最高の青春漫画です。 セクシーな漫画でもあった前作から様変わりし、「初恋ゾンビ」は少年誌的なラブコメにほどよく作者の持ち味がブレンドされています。 男の初恋 それは恋の目覚めと、性的趣向と、たっぷりと妄想に押し固められた産物。 しかもそれは悲しいことに男の人生の奥底に眠り、一生つきまとう。 嘘と願望の防腐剤でコーティングされた、美しいままの偶像―――初恋ゾンビ』と呼ばれるそんな男の妄想上の女の子たち。 主人公はとあることをきっかけに「初恋ゾンビ」が見えるようになってしまう。省エネ主義、恋愛嫌いのタロウは、恋愛ゾンビを付き合っていくうちに学校内の人間たちの恋愛ごとに関わっていかざるをなっていくのです。 前作もそうでしたがキャラクターが非常に魅力的ですね! キャラの魅力こそラブコメでは最重要項目といえますが、主人公の初恋ゾンビのイヴちゃんの圧倒的キラキラ感、幼馴染の高身長おっぱいスポーツ女子江火野さん、主人公の初恋の張本人にしてカギを握る男装少女・指宿さん・・・ ほか、各エピソードでゲスト的に出演する男女も、みんなクセがありつつも人間臭さがあります。そこに峰浪先生の鮮やかな感情描写が重なり・・・ 人間模様の変化がめちゃくちゃおもしろいんですよね。 個人的に江火野さんを応援してるんですけど、指宿くんの赤面顔ももっと見たいんだ・・・ ラブコメとしての高揚感もピカ一。今年1番夢中になったラブコメだったかも。 すっきりとした雰囲気のなかに、粘りつくような人間の残念さが、あくまでもかわいらしい範囲で注ぎ込まれている。 そもそも初恋ゾンビの根本が「いつまでも初恋を大事にしちゃって、男ってバカだよね、しかも現実と全然ちがうじゃん」みたいな少々覚めた感覚を最初から備えているので、ところどころで読者をチクチク刺してくる。 そういうある種の愚かしさや恥ずかしさを抱えたまま、いかにして感情と現実に向き合っていくか。目を背けたくなる自分の醜い部分を、誰かに手向けることができるのか、その勇気は。 結局この作家さんは人間の弱い部分を肯定する漫画をかいてくれる。ずっとついていきたいです。 小難しいことは置いといて、初恋ゾンビちゃんがみんなムッチムチでエロくて絵面も最高です。


AV女優とAV男優が同居する話。 (アイプロセレクション)AV女優とAV男優が同居する話。 (アイプロセレクション)
時計

小学館クリエイティブ 2016-10-11
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18.AV女優とAV男優が同居する話。/時計 コミティアファン(というか俺)の心をアツくした待望のコミックス化。 というのも、本作はすべてコミティアで頒布された同人誌を商業単行本にした、いわば総集編なのだ。まぁ全部同人版持ってるけど買っちゃうよね・・・!! しかもこれまた濃密。男女のすれ違いを甘酸っぱく、ときに鋭い痛みを伴いつつ描いていく短編集。 激情ほとばしる圧倒的にエモーショナルな一冊だ。つまりエモいってやつだよ! ただ甘いだけの物語を読みたい人には毒でしかないけれど、こじれためんどくさい恋模様が大好きマンたちには大好評(俺の知り合い調べ 大きくは3つの短編から構成されており、どれもそれぞれ違った方にトガっており読み応えばっちり。 表題作「AV女優と~」は流石タイトルトラックだけあり、殺傷能力もピカイチだ。セックスを生業とする男女。他者には理解されがたいがゆえに理解者として、そして異性として惹かれ合っていくが――― 仕事としての性行為。商品としてのセックス。すれ違う肉体と心模様・・・ああ、これぞ。これぞ「妄想をトランクに詰めて。」なんだよなぁ・・・! 「兄が好きな妹と 妹が怖い兄の話」。こちらは兄妹モノ。タイトルがそのものズバリを示しているんですが、こちらはよりソリッドに「傷つける瞬間」を切り取っている。 結ばれない、報われない、幸福になれない。そんな恋としりながら、救われないと願う。それこそが救われ難い。いい表情をする思春期女子にグッときちゃうよな・・・。 個人的には最後のヒロインの仕返しが、レシートをみせるだけではなんか物足りなかった。しかしそれくらいの生活感こそが、この作品ならではの距離の完結なのかもとも思う。 「自意識過剰なあたしの話」。こちらはより自分のナカミに目を向けた、これまでよりかは明るい作品。なんだけどなんか描かれている感情が前2作とくらべても格段に生々しく、ラストシーンで笑いとともに堪えがたい程の羞恥に襲われる。あ~~~~~悲恋というほど美しいものではないけれどお前絶対に幸せになってくれよな~~~~~ってなる。 セリフにぶん殴られるような、Sッケのあるストーリー展開も見どころ。 「一日一回、~」はオムニバス形式で綴られていく様々な男女の恋愛劇。 こういった、エッセンスを抽出したのみの短編でも十分に甘酸っぱくさせられる、雰囲気作りが素晴らしいのだ。 トータルとして「めんどくせぇ」連中のモヤモヤとしたラブストーリーが目白押しの、強烈なコミックスになっていると思います。ロマンチックで残酷なリリカルポエトリー。


こいいじ(5) (KC KISS)こいいじ(5) (KC KISS)
志村 貴子

講談社 2016-12-13
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17.こいいじ/志村貴子 どこからっていうのを表現しづらいけれど、ジワジワと確実に面白くなっている「こいいじ」。 まあまずタイトルがかわいくてシンプルで深みがある・・・恋の意地。維持。 少女漫画レーベルで発売される志村貴子先生の作品ですが、非常に間口のひろい読み心地。 これまでの先生のファンにも、はじめて読むぞって人にもススメやすくて、ストレートに人間模様が面白い。 主人公は31歳の女性。子供のころからの恋を諦めずにジタバタしていくラブコメ作品。 乙女でありながらも童貞臭もすごい主人公がかわいくてかわいくて仕方ないんだけれど、しかし彼女自身も31、恋する相手は子持ちで奥さんはすでに亡くなっていて。 ほかにも面倒くさい複雑な人間関係。 初々しい想いをずりずり引きずって、気づけばもう、周囲の環境はすっかり「大人の社会」になっていた。 一度諦めた恋だとか、亡くなった奥さんへの消えない想いだとか、死者を通じて様々な感情でつながっていく人々の描き方もいい。というか、ここが大好きなのです。 もや~っとした行き場のない不安が、少女漫画というにはやや成熟した、アダルトな口当たりを生んでいる。 年相応に重ねた傷跡がスパイスとなって、この作品をなんともほろにがい空気で包んでくれる。 4巻はとくに、聡ちゃんの辛いシーンの回想が多くてちょっと、しんどかった。 ふ、と。まるでフラッシュバックのように断片的な回想やモノローグが差し込まれて その切れ味の鋭さを味わいたくて何度も読み返してしまう。 グダグダやってたまめちゃんも、4巻で最大のチャンス・・・というか転機を迎える。 急激に加速する人間模様と、それでもどこか冷え切った、”そもそも恋愛をする体力がやや衰えてきた大人たち”、ゆっくり沈みゆく陽の光のような感傷深い言葉たち・・・うむ、染みる・・・。 と、ややアンニュイに紹介はしましたが、主人公のまめちゃんのポジティブさにずいぶんと救われる。基本的にくらい顔の似合わない女。片想いのプロは、かんたんには負けてやらないのだ。 今年は4巻、5巻とストーリー的にもおおきな盛り上がりを迎えており、特に楽しかった! 少年少女より長くを生き、積み重ねたものがあるこそ、今、今なんだよと語りかける、 志村先生の新境地とも感じるオトナなラブコメシリーズです。


夜にとろける 1夜にとろける 1
志摩時緒

白泉社 2016-08-31
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16.夜にとろける/志摩時緒 しっとりポエミーな恋愛漫画の旗手、志摩時緒先生の新コミックスは楽園掲載作と同人シリーズがひとつにパッケージされた瑞々しい一冊となっております。 っていうか同人シリーズ、同人誌で読んでたときは「同人誌」感覚だったのでそう思わなかったけど、こうして商業単行本として改めて読んでみたらかなり過激でしたね・・・うむ・・・よい・・・・・・ まぁ。毎度の如く。本当に悶死するくらいのすンごいラブラブっぷりである。 いちいち書き挙げたらキリがないけれど、志摩時緒作品のヒロインたちの「恋人にだけみせる表情」の破壊力ったらない。恋によって自分も世界も変わるようなキラキラ感。好きな人に好きといってもらえる幸福は人をここまで魅力的にするんだな。 少女としての自覚――それは恋人としての、あれやこれやを、なんか早いかなーでもしたいなーしてあげたいなーでもこわいなーっていうああメンドクセーなかわいーな畜生、ともかくそんな思春期女子の臆病さと蛮勇さととびきりの愛くるしさを味わいたかったら読んでくれ。 けれど本作は甘いだけではなくて、同時にその裏側に潜む闇も描く。 「第三者の片想い視線」。 こんなのを入れてくるあたりが志摩先生いじわるだなーと思いますね。第三者なんて冷たいこと言いますけどそれなりに仲がいいクラスメイトなんですよ。けれど彼女のことはクラスメイトとして以上には何も知らなくて。ああ、何がだめだったんだろうなぁ。どうすればよかったんだろうなぁ。おそすぎたよな。いや、仮に早く行動したとして。どんな結果になってたかなんて、下らない希望を抱く方が虚しいだけなんだけど。はーあ「なんなんだよそれ」。俺か!!!中学の時の俺か!!!!!高校の時もだ!!!!殺せ!!!!!!!! でも気付かないうちに誰かを傷つけているなんて、よくあることなんだ。誰もが傷つけられて、そして誰かを傷つける。無邪気に無自覚に血は流れる。 部外者の「そんな事情」は恋に夢中は当人らは知らなくて良いことだし、知らないでほしい。 甘い甘い恋そのものが「誰か」を苦しめていく、楽しいラブコメの裏側を描くのが素敵。 その点でいえば「こいはやみ」も後半から仲良し6人組の秘密が明かされてからそういう意地の悪い構造が見えてきてヨダレが分泌されまくりだった。 序盤でダダ甘カップルの、付き合う前と後の世界の感じ方が違うっていう初々しさ超炸裂のエピソードをやったあと、じゃあそれを聞いてグループ内の男女はどう思うかという、ニヤニヤがとまらないやつです。 後半はガラッと視点がかわって、なんとも後ろ暗い、切ないモノローグで幕を閉じる。 こういうある種の”犠牲者”側の感情もしっかり描くことで、夜にいろんな色が混じり合っていく。むしろたくさんの気持ちを吸い取って分解してそして抱きしめて、夜は今日もぼくらに訪れるのだ。 夜にとろけるのは、なにも恋にはやる10代の心だけではない。美しい夜景を作っているのは飾りじゃない、だれかの仕事の灯ってことだよ。俺は仕事で脳みそとろけそうだよ(脱線) あーーーー初体験に失敗して「次もよろしくおねがいします」ってお願いするヒロインまじで可愛すぎてちょっとつらい、小岩井ちゃんん・・・ 語彙力をなくしました。もうやめます。



以上、30位から16位でした。 のこりの作品自体は決めてるんですけどコメントがまだ手付かずなので1月に入っちゃうと思います。 ではコミケ行ってきます。皆様よいお年を。