「正直どうでもいい?」

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世界は悩み、戦い、走りつづける。『新装版 真・女神転生デビルチルドレン』3巻

<img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/61uFUsr-bVL.jpg" alt="新装版 真・女神転生 デビルチルドレン(3) (KCデラックス)" style="border:none;" />新装版 真・女神転生 デビルチルドレン(3) (KCデラックス)
(2013/07/23)
藤異 秀明

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   子供達の未来に安らぎと 幸せがありますように―――  お前が表紙かよ!!って当時の読者はみんな思ったと思う。 「新装版 真・女神転生デビルチルドレン」完結となる第3巻の感想です。 3ヶ月連続で発売されてきた新装版もいよいよラスト。 表紙はアゼル様。エレジーの父親にして刹那の叔父。ラスボスです。 「最終巻は誰が表紙かなー。刹那・未来はもう出たし、エレジーが最有力か。もしくはゼットくんで仲良し小学生3人組揃い踏みな感じで。パートナーも考えるとクール&ベールのペア表紙とかも良さそう」 などと想像を膨らましておりましたが、アゼルお父様が表紙を持っていくとは一切予想をしてなかった。ネットで最初に書影をチェックした時は思わず爆笑してしまったよww いやしかし、めちゃくちゃカッコイイじゃないですか! 禍々しい迫力にゾクゾクくる。児童漫画の皮をかぶることすらしない潔さが眩しい!さすがはデビチル漫画版! 世界を救うハードボイルド小学生漫画、復活ッ!『新装版 真・女神転生 デビルチルドレン』1巻 この血塗れた手は、世界を変える覚悟だ。『新装版 真・女神転生デビルチルドレン』2巻 3巻はまるっと最終章です。白熱のラスボス戦と、彼らのその先。


ついに顔を合わせた刹那、未来、ゼットの3人。 原宿小学校の仲良し3人組。何も知らなかったころ一緒にいた、2人のデビルチルドレンと、1人の巨大な不確定要素。 物語は一気にラストへと駆け上っていく。愛と世界を賭けた最終決戦! デビチル31 一気に全員が覚醒を果たすこの見開き、何度見てもカッコイイ…! このラストバトル付近の展開は、とてもストレートな印象を受けます。 目の前の運命に翻弄され続けた彼らが、ようやく特定の「相手」を見つけたからかな。 特に刹那に関しては、この決戦中、とても冷静に見えます。 相変わらずその戦いには傷を伴う。それでも旧来の友をそばに置くことで、なんとなく刹那の孤独が自然に晴れているような。 これまではヒリつくように冷たい心の痛みにふるえているような、人を寄せ付けない部分もあった少年だったと思います。 しかしラストバトルでの数少ない味方が、刹那が全幅の信頼を寄せるメンバーであることは、戦いの中ですら彼に安らぎを与えているように思います。 もう殺意で暴走したりしない。 一度、アゼルにブチ切れましたが、それを押さえ込んだ未来は流石。 なんだかんだで刹那は1人じゃだめな子だと思う。子供だし当然ではあるんだけれど…。 強大な敵を前にした危機的状況ですが、刹那は過去最高に安定しています。目標と信条がぴったり合わさっている。揺るぎない。 初期のころのキレッキレ刹那さんも格好良いですが、あまりにも子供が重たい運命を背負わされていたなぁ。そういう意味でこの最終決戦…特に言及はありませんが刹那の描かれ方にもラストバトルの風格を漂わせています。 見逃せないのがエレジーとアゼル、憎しみ合った親と娘の物語。 ラストバトルはエレジーにとって親殺しにあたる。当然そこに痛みや葛藤があって、ところどころにズキズキくる描写があります。 愛されたい娘と、彼女にある善の力を恐れた父親。 アゼルは全体的に見ても幼稚というか大人げない人物像に見えます。 「私とちゃんと向き合ってよッ!!臆病者!!!」 悲痛な娘の叫びにまったく耳を傾けない父。 結局最後まで、父と娘は分かり合えないままでした。世界の再生は叶えられたものの、その裏にあったエレジーの想いは、果たされぬまま…。 だからこそ過去に区切りをつけて、エレジーは未来にいけるのだろうけれど こういう親子を見ると、児童漫画としては意外な要素放り込んでるなと改めて思います。 まぁこの作品の「親」というのは、たいがいヒドイ運命をたどっている気がしますが…。 死を踏み越えて未来に進む。そのテーマはやはり一貫している。 たとえ大切な人を失っても。たとえ自分のエゴのために誰かの命を奪っても。 改善懲悪なストーリーラインにはなっているのですが、節々に読者に正義とは何だという疑問符を投げかける内容になっている。 殺したところで晴れやかな気持ちになるようなシーンもなく、やはり「死」と真摯に向き合った作品だと思いす。 エピローグは駆け足感満載ではありますが、すっきりしますね。 刹那の顔には刻まれた傷跡。きっといつまでも消えないその傷に、それを背負って生きていく刹那のこれからの人生に思い馳せる。いつまでも闘いながら未来へ駆けていく。 「絶望しない」という最後の言葉にグッと来るのは、この作品ならではの感動だと思う。


さてこっからは描きおろし漫画の話だー! 今回の新装版シリーズ1番の目玉、藤異秀明先生のかきおろしデビチル! 連載終了から10年経って、また新しいデビチル漫画が読めるとは。 この描きおろし漫画に浮き足立った当時の読者も多いはず。 内容は、旧単行本でいうと1巻と2巻の間。新装版で言うと1巻第5話の後。 未来を失い、完全に暗黒面に落っこちたやさぐれモード刹那さん。 作中もっともキレていた頃の刹那さんなので、そりゃもういろいろヤッています。 デビチル32 オイオイおいおいグロッグロじゃねーか! 憂さ晴らしをするように敵を虐殺。これでも小学5年生の男の子です…。 乾ききった刹那の心を表すように、戦いが戦いを呼ぶ荒んだ世界観がまさにデビチル! ある意味で、この作品らしい要素をきっちり抽出した特別編ですね。 研ぎ澄まされた殺意と、自分の中で暴れる焦燥、狂気…。 読者に鮮烈な印象をのこしたであろうサンドランド編の前日譚として 目覚める未来、暗躍するゼット、動き始めるエレジー一行、闇を深める刹那…と メインメンバー揃い踏みで、新しい彼らを見れて大変嬉しいです。 当時の連載中にもどんどん絵柄が変わっていった藤異秀明先生なので この描きおろしページだけまるで絵が違うのもまた一興というヤツですw あと小学5年の女の子にして未来ちゃんはおっぱいが大きすぎると思います! 当時のアシスタント、木下エースケ氏によるオマケ漫画は 全撮影を終えて打ち上げムードな役者たちの一幕…という、オマケ漫画らしい構成w こういう遊びゴコロは大好き。 エレジーが素だとこういう引っ込み思案で照れ屋な女の子、っていうのはいい舞台裏設定w これまでの登場キャラクターほぼ全員が登場して、いっそうお祭り感を強めてくれる。このオマケ漫画は幸せすぎる…! デビチル33


そんなデビチル新装版3巻でした。 これまでの感想でも書いて来ましたが、この作品は本当に思い入れがある。 漫画を読んで格好良さに震えた経験は、この作品が初めてでした。 ハードなバトルにシナリオ…何度もゾクゾクさせてもらえた。 幼少の思い出とともに、懐かしさを伴って思い出される作品のひとつでしたが、こんなにカッコいい新装版になって生まれ変わってくれて最高の気分。 二十歳をこえてじっくり読み返すと、また味わいが違って面白いです。 子供のころ読んでいた作品が文庫化や新装版化すると、ときの流れを意識せざるを得ない、複雑な悲しさも味わいもしますが…! ともかく自分にとってのトラウマ兼金字塔的な作品であり せっかく新装版として出たので多くの人に読んで貰いたいなとおもう次第。 描きおろし漫画も素晴らしいので、当時好きだった人も要チェックですよ。 『新装版 真・女神転生デビルチルドレン』3巻 ・・・・・・・・・・★★★★☆ 思い出いっぱいな作品。描きおろしも満足。いまでも少年心をくすぐる作品だ。