「正直どうでもいい?」

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傷つきやすくて暴れやすい、沸騰気味の思春期ハート『R-中学生』3巻

更新ペース落ちててごめんなさい。いずれ戻れるかなと。

<img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41TKFGN1k0L.jpg" alt="R-中学生(3) (ヤングマガジンコミックス)" style="border:none;" />R-中学生(3) (ヤングマガジンコミックス)
(2013/07/05)
ゴトウ ユキコ

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   馬鹿だなぁ、お前ら。     バカで下品でリビドー全開な中学生漫画「R-中学生」3巻。完結です。 あーーー終わってしまったーーーー…。大好きな作品でしたよ本当に。 バカバカしくってそれがなんだか愛おしく、性欲に突き動かされてるだけのあの時代を思い出し、かすかにノスタルジックな気分にさせられ、でもやっぱり最高に下らなくて笑えてしまう、素晴らしい純度の思春期漫画でした。 とにかく若々しいエネルギーにあふれた本作。 最終巻となった3巻は、まさに作品の集大成とも言える結実を見せます。 「恥ずかしい」という気持ちとどう向き合うか。 思春期なんて自意識の塊みたいなもので…まぁ思春期でなくても恥への抵抗は人ならある。 そこで「R-中学生」は恥ずかしさを乗り越えて成長する。大人へと駆けていく子どもたちの、その眩しい背中を見つめるような確かな感動がありました。 3巻表紙は読者から見て向こう側へと歩いていくメイン男子3人。バイバイだ。 秘密のカイカン・・・傷だらけの僕らの思春期。『R-中学生』1巻 リビドー全開!とびきりビタースイート!『R-中学生』2巻


個人的にこの3巻は、上でも書きましたが、「恥ずかしさと向き合う中学生」がテーマになっているように感じました。 大きく2つの章に分けられていて、前半が椎名さんと大蔵くんのエピソード。そして後半が伊地知くんのエピソード。 伊地知くんはR-中学生の第一話のメインを務めた少年であり、納得です。 順番に2つのエピソードについて感想書いていきます。ネタバレ込み。 ●椎名さん&大蔵くん 女装趣味のある大倉くんが贔屓にしている、衣装のオーダーメイドをしてくれるブランド“α”。実はこれを社長をやっていたのが…というお話。 なんといっても楽しいのが大蔵くんのハッチャケぶりである。 恐らく友達もおらず、こっそりノートに衣装のデザインを描いていた大蔵くん。 しかし幸か不幸か、R-中学生の主人公軍団に女装趣味を発見され… これはいかんぞ…けっして癒えない心の傷を負ってしまう…!! と思ったらぽつりと言われた「かわいい」の一言に大興奮。自らを超開放してクラスでファッションショー開いちゃうまで行く。 大蔵くんがいいキャラですよ。恥ずかしさの呪縛から解き放たれてとても楽しそうなんですよ。 「かわいい」という言葉が嬉しかった。その興奮が恥ずかしさを上回った。 今までの「R-中学生」としてもかなり浮いているキャラ(まぁ濃いキャラばっかりだし、みんな浮いてるようなもんか)ですが、周囲とは違うものを持っていても鬱屈していない、キラキラした男の子で好感が持てます。まぁ歪んですれまくりなヤツも大好きですがw そういうちょっとスレちゃった女の子である椎名さんと、いい組み合わせだと思いますよ。


●伊地知くん さて、本番。椎名さん編での彼の妙な挙動はここにつながる。 女子の汚物フェチ。それは当然クラスメイトはもとより、仲のいい堀田や吉倉にも知られていない…いなかった。けれど今回彼のその性癖が、学校を揺るがす大騒動へとつながっていきます。 まぁ盗んだナプキンを隠れてクンカクンカしてたらバレちゃったという どーしようもない現行犯逮捕だったわけですが、これは重大事件です。 リアルにドン引かれ、面白がった奴らから迫害をうける。 先生は「彼はこのままだと性犯罪者。どうすれば彼を救えるか、みんなで意見を出しあいましょう」とクラス会議開いちゃう。居場所なんて学校から消え失せる。 r中学生31 しかしそんな中で少年たちの友情が熱く心に染みる。 普段バカばっかりやってる連中。それはシリアスな展開な中でも変わらない。 彼らはむしろ、バカであることを貫くことで、この危機を打ち破ろうとする。 真面目に、正しいことと信ずるため、バカをやる。 なんだろうなぁ。…この胸がスカッとするよな熱さは…!! 感動というか誇らしいというか、愚かさがそのダメさを失わないまま正当な武器にできてしまうのが素晴らしい。なんとも心突き動かします。 当然なダメなんだよ。いけないことなんだよ。でもあえてバカな方法でしか戦わないこんな奴らが、ほんと大好き。 なにが「チンブラ四天王」だよってみんな呆れたり怒ったりする。 けれどそんなの知ったことではないのだ。バカでいたい。バカなことをしでかした友のために、みんなの底にある汚れた部分だって晒すのだ。 r中学生32 そして熱狂が支配するラストシーンに向かう 全校集会で男女みんなが「オナニー!」と叫びまくる…!! もう何も言えない。突き抜けた情熱でバカなことをしでかしたら、それはそれは、心はスッキリ晴れ渡るものです。最ッ高に笑えて、感動できる場面ですよ! オナニーはこんなふうに明るみに出せる話題じゃない。当然。 デリケートな中学生だもの。友達と下ネタで話すことはあっても、例えば異性の目の前で自分のそんな恥部を晒す勇気なんて普通無い。 ましてやここは全校集会の場。こんな注目を浴びてしまえば好奇な注目を集めてしまい、いじめられてしまうかも知れない。 でも。誰か1人だけに傷つかせちゃならないと、自らそんな恥部をさらけ出す連中がたくさんいる。 やがてそんな流れを面白がる人間も乗っかりだして、最終的にはこの意味不明のテンションが支配する、全校集会でのオナニーコールへと突入する。 しかしまっさきにオナニーの告白をした女の子、中田さんの漢っぷりな…!! 普段おっとり、でも怒るとコワい。そんな二面性をもった少女なのですが この告白をするとき、彼女は至って平然と、いつものおっとり口調で「わたしはオナニーしてまーす」。女の子なんて特に羞恥が強いだろうに先陣切っちゃったよこの娘! 「私は別に、恥ずかしくないです」 「やましい気持ちがあることのが普通で人間らしくて、私はすきです」 これですよ。恥ずかしさとどう向き合うかって、ひとつの答えがここにある。 中学生としてはやや達観しているかもしれない。でも真摯な言葉だ。 こんな立派なこと、きっと男子たちは思ってもいられない。 けれどそれでも立ち上がれたのは、友達を助けるためっていう、すごく純粋な熱意。 自分たちが中心となって巻き起こしたこの前代未聞の珍事。 この日は一生ものの思い出になったろうさ。間違いなく。 沸騰したみたいな物語のテンションに滅茶苦茶ワクワクしながら読んでいて、読み終えたと思ったら、少し泣いてた。 r中学生33 馬鹿だなぁ、お前ら。 全力の愛をこめたであろう担任教師のこの一言は、まさに俺のものでもある。


そんな「R-中学生」最終巻でした。 なんかほぼ話の筋書いてしまったわけですが…この後半の展開は…本当に語りたかった…。大好きな場面です。これぞR-中学生! 最終話、みんなで帰っていく場面の、なんとも言えない寂寥感…。 でもどんな関係に落ち着くのか、もしかしたら示唆されてるような気もして、じんわり胸に染み渡る幸福感…。甘酸っぱい夕暮れが胸に染みる…。 「俺もオナニーしてます!!多分数えきれないほど今までやってます!!」 と絶叫告白したら、好きな稲沢さんから「ちょっとかっこよかった」と言われちゃう吉倉ァ!!!うまくいってね。 最後、みんな伊地知くんにある程度の理解を示して許せたのは 「他の人とちがう欲求を持っている自分」を、少しでも認識しているからかもな。 ひっそりと、誰にも知られないように隠している本心とか欲望とか…みんなあるはず。特に性に芽生えた中学生で、一切無いなんてことがきっと無い。 心の奥深いところで生まれた共鳴が、最後に爆音のオナニーコールに化けた。そう思うと、やっぱり素晴らしいクライマックスだと思います。 思春期の繊細さが、その殻をぶち破る瞬間が見れた。幸せなことです。 「中学のころ学校でさ、全校集会中に男子も女子もオナニーって叫びまくったことあったんだ」 「なにそれ、どういう状況よ」 「よく分かんないけど、でも俺も一緒になって叫んだなぁ。今でも思い出すと興奮してくるわ」 なんて、同僚との何気ない飲み会のネタのひとつになったりするかも知れない。 バカだなぁ、でもあの頃はムチャクチャだったな…なんて苦笑交じりに思いながら、思春期の眩さを思い出して涙が出そうになったりする。 あの日を。それ以外のどうでもいい日も思い出して、胸の奥がキュッとなる。 彼らにも、きっとそんな未来が待ってる。子供は大人になる。忘れ去られる日々があって、ずっと鮮明に刻まれる一瞬がある。 中学生にしか歩めない馬鹿げた日常がある。あったのだ、きっとそれぞれに。 時に逃げ出したり、時に熱くなりすぎちゃったり、暴走したり泣いたり傷ついたり。そんな愛すべきしょーーーもない時間は、中学生にこそ許された宝物のようなひと時。R-中学生に届けられる、あの頃のときめき。 …うん。浸って書きすぎた!反省。 「R-中学生」これにてお終い。エバーグリーンな魅力を放つ思春期漫画。 モヤモヤしてばかりだったあの時代は、思い出になって暫くすると何故だかキラキラしだして困る。自分と重ねて楽しんだり、そうでなくても、思春期を通過した者の心になにかしら感触を残す、傑作だと思います。 『R-中学生』3巻 ・・・・・・・・・★★★★☆ 素晴らしい最終巻でした。敏感思春期ハートの傷と熱、突き刺さる。 淫らで清々しい、痛くて柔らかくて冷たくて、ちょっと泣ける。こんな青春。