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めんまは、やっぱり笑った。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』漫画版3巻

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 3 (ジャンプコミックス)あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 3 (ジャンプコミックス)
(2013/05/02)
泉 光

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   あの花は きっとどこかに咲き続けてる めちゃくちゃ出来が良かった「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」のコミック版最終巻の感想です。 テレビアニメが自分にドストライクで、今年の夏に公開される映画版も見に行こうかなと思っていますが、いやいやアニメだけじゃない、漫画版も素晴らしい!作画、演出などのレベルがすごく高いし、アニメを漫画にする上での少々の改変もバッチリうまく行っている。 アニメのファンも、アニメを知らなくても楽しめる、純粋に漫画として非常にすっきりとしています。全3巻というボリュームも収まりがいい。 アニメ版も踏まえてのネタバレありの記事になってます。 1巻2巻と感想を書いていませんでしたね。この作品に関してはどう終わるかが注目どころではあったので、完結してから評価をしておきたいなーと思っていたのですが、見事なラストでした。 アニメは毎回のように泣きながら見ていたものですが、漫画版でもボロボロになりましたよ…特に、やはりこの3巻は、強烈。本当どーうかーしてーるーみたい(泣きながら)


各キャラクターの掘り下げ、心理描写、それぞれのトラウマとその向き合い方。 大切な人が死んだあとにずっと続いていく、それぞれの物語。 足を止めていた、心を閉ざしていた、目を背けていた人々が、自分の気持ちを消化して未来にむけて歩み出す、その姿の眩しいことよ。 何もかもがとても鮮やかに紡がれている。本当に丁寧に原作を再現してくれているため、アニメのファンとしては本当に嬉しいコミカライズなのです。 感動でも緊張でも、心が揺さぶられる瞬間のハッとさせられる演出は、漫画という媒体になったことでアニメとは違った方面から俺の涙腺を攻め立てる。 そしてそこの漫画版オリジナルな魅せ方に、さらに心揺さぶられるのですよ! アニメの脚本に対してほとんど不満はなかったスタンスなのですが、漫画版ならではのやり方でエピソードの細かなリメイクがされている。しかもこれがまた素晴らしい仕事なのです。 特に今回の3巻収録分のエピソード、つまりアニメの最終2話ほどに関して言えば、アニメにも並ぶかもしくはそれ以上のお気に入り。 本当に細かな違いなのです。映す絵が違うとか、ちょっと行動が違うとか。話のメインストーリーはそのままに、ちょっとずつ変更点がある。 めんまの母親のセリフなんかは、読めてよかったなぁ。これは救われた。 アニメでやったみんなの夜の大懺悔大会はまるっとカット。 あそこで一気に心の闇が吹き出すのは強烈なカタルシスを感じたものです。アニメでかなり好きなシーンではあったので、そこがなかったのは残念かな。 ただあれを最終話Aパートに持ってきた影響で詰め込みすぎ感があったのも事実。 そのかわりに各キャラが抱えた闇は少しずつストーリーの中で吐露されており、違和感のないスムーズな進行。これは上手い。大事なピースが欠けたわけではない。別の形でストーリーの中でピタッとはまってくれていた。 原作エピソードの取捨選択や改変はコミカライズの価値を決める大切な部分ですが、そこはやはりこのコミカライズ版の技が光る。 ただ様々な変更点があるおかげで、ラストシーンはアニメ版とは少し違ったものになっていますね。これはこれで。髪型も違うし。


アニメ版最終話は本当に感動的なんだけれど、30分に詰め込みすぎてた感はやはり否めなかった。泣きつかれてうまく最後らへんは感動の飽和状態になるという異常事態になっていた俺である。 感情の波のコントロールというか、メリハリという言い方は正しいかわからないけれど、泣ける展開のオラオララッシュに体力を持っていかれる部分があったのも事実。そういうのも込みで俺はアニメあの花を最終話までひっくるめて大好きなんですけど。 で、そのアニメの最終話とくらべても、漫画版はある種さらに完成度を高めているのではないか、と思ったりもする。 なによりも涙腺崩壊したのは、めんまとのお別れのシーン。 作品の要とも言える超重要シーンでは、少年時代に超平和バスターズが、いなくなっためんまを見つける、という確かアニメでは無かったイメージが描写されており、問答無用の破壊力を見せつけてくれました。 あの花32 これはやられた……。面白いくらい泣けるわ…。 誰かも言っていた気がしますが、このセリフを少年時代のバスターズに言わせたことに拍手を送りたい。 内容は同じ。でも演出や描写するものを変えるだけで、その物語の見え方が少しだけ変わってくる。宿した意味の解釈が広がる。最終話を読んで、文句なしに「素晴らしいコミカライズだった」と結論を出すことができたのです。 「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」と、この意味深なタイトルが出てくるタイミングにも心底震えた。


あとは他におっと思ったポイントを2つほど。 1つ目につるこのこと。 なにげに漫画版で一番改変?補完?があったのは「つるこ」こと鶴見だったように思います。 超平和バスターズの裏のリーダー的ポジションであったということが、この漫画版では明確に描かれていました。その事からつるこが背負った罪悪感もより鮮明。漫画独自のキャラ掘り下げが好印象。 あの花31 掘り下げというかむしろ別キャラに進化した感すらある。ドラマも深まっています。 これで超平和バスターズをめぐる人間模様はさらにおもしろくなっていたと思いますし、大正解。漫画版で嬉しかったポイントのひとつ。 小説版の内容をうけてのものなのかな、これは。いかんせん小説を読んでいなからわからないんですよね…。小説版もそのうち読みたいなぁ、オリジナル要素あるらしいし。 そして最後の単行本ラストの描きおろしイラストを見て確信した。 ああ、これ、間違いなく泉光さんがつるこ大好きなんだわ…! 2つ目は、あの日みた花。 これは多分アニメ版でも描写はあったけれど俺が見逃していて、この漫画版でようやく気づいたってだけのオチだろうと思う。でもやっと気づけたという意味でぶわーっと気持ちが高ぶったのでどうせなら書いておこう。 最終話のラストシーン、青い花(勿忘草)が咲くわけですが、これってめんまが最後に消えていったあの場所なのかな。あの樹の下。みんなが忘れられない思い出の場所に花は咲いたんだろうか。めんまは、生まれ変わって彼らにまた会えたのだろうか。 なぜ今まで気づかなかったのか…阿呆め。本当どうかしてるみたい(2度目) しかも読み返したら過去にもこの樹は出てきていて、2巻の第8話冒頭にはこんな風にひとり取り残されためんまが描かれていました。 「ここにいるのに誰も見つけてくれない」そんな寂しい少女の風景。 あの花33 そしてこの場所で「めんま、みーつけたっ!」が来ると。それ踏まえて読むと、さらにグッと来ますね。


コミカライズにもその質はいろいろありますが、正直この「あの花」のコミカライズは完成度が高くてビビる! カットされてしまって残念なシーンはあったけれどお話としては過不足無く、カットされたシーンも大事な要素を拾って他のシーンに挿入されている。アニメからエピソードの整理がされなおされています。オリジナル要素も、アニメを見た身としても「読めてよかった」と確信できる出来。 作画担当の泉光先生はオリジナルの読み切り漫画を読んだことがありますが、きちんと話を作れる期待の新人さんと思っていたので、最初コミカライズをやると知った時は「ちょっと勿体無いな」と感じたものです。でも今や華麗な掌返し。 そりゃあ、自分が大好きな原作が、素敵な漫画にもなったら嬉しいものだよ! 出来がいいだけじゃなくすごく愛を感じるんですよね。幸福なコミカライズでした。素晴らしい漫画をありがとうございました。 次は泉光さんのオリジナルの連載を読んでみたいなー。 「あの花」そのものがまず作家さんとの相性が良かったんだろうな、ともなんとなく思いましたね。こだわりと情熱がある。背景の書き込みも凄まじい! しっとりとした情感が宿ったみずみずしい夏の風景は、それだけで何かノスタルジックな物語を感じさせてくれるかのようです。 さて、漫画も終わってしまったし、あとは8月末の映画。 めんま視点のストーリーになってるとかで、また違った角度からこの甘酸っぱいお話を堪能できそうで、楽しみです。 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』漫画版3巻 ・・・・・・・・・★★★★☆ 大成功のコミカライズ。ここまでのはなかなかお目にかかれないかも。