「正直どうでもいい?」

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同居8年目のあったか優しい日常。『喰う寝るふたり 住むふたり』1巻

喰う寝るふたり 住むふたり  1(ゼノンコミックス)喰う寝るふたり 住むふたり 1(ゼノンコミックス)
(2012/11/20)
日暮 キノコ

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   ・・・てゆかまだされてないし・・・プロポーズ 「喰う寝るふたり 住むふたり」1巻の感想です。 ゼノンで連載されている日暮キノコさんの単行本。雑誌がノーチェックなので表紙とあらすじ文で惹かれて購入。 穏やかじっくり心が温まる漫画でした。もう寒くなりましたし、この漫画でポカポカ温まるのもいいのではないでしょうか、とか適当言ってみる。 学生時代から付き合って10年、同棲8年。でも結婚はまだ。 そんな三十路直前カップルを描いた作品。 まったり同棲してる男女の生活をのぞくような内容です。 特徴的なのは1つのイベントを男女両方の視点から描く、ザッピングストーリーであること。前半が男視点、後半が女視点みたいな風に。 前半では見えてこなかった裏側や、あのシーンでこのキャラはどんなことを考えていたのか!など、答え合わせをするような面白さがある。 シンプルというか素朴な同居カップルの日常にも十分に癒されます。 →コミックゼノンのHPで試し読みができるので、ぜひ。


「いっちょお互い実家帰ってみるか」「合コンに誘われたんだけどどうしよう?」とか他愛もないようなお話から さらっとプロポーズしたのにさらっとしすぎて伝わってなかった、など、結構マジメなお話まで。 大事件は起きません。だからまったり、日々の生活の中の2人の姿が見られる。 で、結構すれ違ったりしてムッとするときがあるんですよ、お互いが。 意思疎通はできてない。まぁそりゃそうだ、他人だもの。100%思ってることが伝わるわけがないんだ。10年連れ添っていたって、それは当然。 その10年の積み重ねを偉大に感じるのは、分かり合えてるかどうかってことより、ちょっとムッとしちゃってからどうやって仲直りするかってところです。 もちろん相手がどういう人間かは分かっているだろうけど、ムリに一方が歩み寄るってこともしていない。2人はすごく自然なカタチの関係なのだ。 それは例えば珍しく作ってみた朝ごはんのおにぎりだったりする。いやそういうスペシャルな事なんてなくても、メールだったり、挨拶だったり。 第1話「恋人以上、夫婦未満」はそういう何気ない日常の暖かさがすごく染みた。 男女別視点のおもしろさもすごく生きていて、一発で心掴まれる出来。 でもちょっとしたすれ違いの原因作ってるのは、結構彼氏さん側な気がするなぁ・・・w 彼氏の余裕を見せようとなぜかノリノリで彼女を合コンに送り出したり、プロポーズ伝わってなかった・・・ってしょんぼりして態度ヘンにしちゃったり。やーね男子って!バカだから! ああ、でも彼女さんも結構ハナシ聞いてないときあるし、お互い様で。 第2話で印象的だったのが彼氏さん・のんちゃんのモノローグ。 「彼女がいないと俺は本当にすることがないのです」「この8年で俺はリツコなしじゃ俺でいることできなくなっちゃったのか…」と、1人のときに寂しさが吹き出す瞬間。と同時に自分への情けなさも少々感じている様子。 で、帰ってきた彼女の寝顔を見てホッとしてコレ。 くうねる1 「とことんリツコの相方になりつつあるってことなんだな」 「リツコなしじゃ俺でいることできなくなった」ことの捉え方が逆転している! 1人の生きることに戻れない。それをネガティブにうけとるかポジティブに受け取るか。 彼女といっしょにいることが普通になった。2人セットが当たり前になった。 ひたすら1人で生きていくようなたくましさは無いけど、それは別になくってもいい強さでもある。相手がいるならそれでいい。自分の変化をいいものに捉えられたなら、それは成長とも言えるんじゃないかな。 日常のささやかなイベントを通じて、いかに自分は相手のことを大切に思っているのか、どれだけ大好きなのか、ってのを再確認していく流れがほんっとにニヤニヤする。 テンションあがるニヤニヤではなく、ゆったり穏やかに「いいねぇ・・・」と和むタイプ。 くうねる3 一緒に暮らしているから、寂しい「ばいばい」もいらない。 今や当たり前になったそのありがたさとぬくもりを見つめ直す。 交際10年、同居8年。お互い三十路直前。 初々しさはいまさら無い。めちゃくちゃに燃え上がるような恋でもない。 でも体に染み付いてしまうくらいに年季はいった「好き」は、高い破壊力を持ってます。 疲れないように熱すぎず、でも心も体も温まる。お風呂みたいな恋愛。(その例えでいいのか


同棲8年・・・いや、さっさと結婚しろよ!! ってのは主人公の周囲はみんな思うことの様子。そりゃそうだ。二人の両親も結婚マダー?(チンチン)状態。 しかし彼女のリツコさんの親父さんがいいキャラで。親父さんとリツコのエピソードは思わず目頭が熱くなる・・・!そして思わず笑ってしまうw くうねる2 不器用だけど、娘を心配に思う親心がにじみ出ていて、グッとくる! 「それなら安心した」のさわやかな、しかし味わい深い表情もいい。 三十路近く、そろそろ結婚してもいいんじゃない?な時期の男女の微妙な心理も描かれていて、こちらの心を刺激します。 しかし・・・高校生だったころのリツコを見ると、大人になって丸くなったねぇと微笑ましくなること必死w 社会に出るとこうなるか。それとも彼氏ののんちゃんのおかげなのかな!


そんな感じの「喰う寝るふたり 住むふたり」1巻でした。 とても居心地がいい、リラックスして読める漫画。 熱くなりすぎないけど、年季が入って頑丈な安心感を備えた愛情がにじみます。 たまにすれ違うけれど、今さら「あいつキライ!」なんてカッカしちゃうような中学生男女マインドはもう卒業してる。仲直りの仕方も自然でしかしやさしさに溢れていてほんわかー。 でもこの2人は色々と上手に付き合えているよなぁ。10年愛を貫く難しさについて描くエピソードもあるけど、のんちゃんとリツコは不思議なバランスのよさがある。 そういえば下世話な話だけど、1巻のうちでは彼らの性事情は描かれなかったですね。まぁシモの話題やると一気に生々しさが増すし、加減がむずかしいかな。 シモの話題がないぶん、さわやかで読みやすいことは確か。 今後ちらっとだけでも描かれれば、俺がこっそり喜ぶだけです。うむ! 同居カップルものですが、結婚を意識させる小話も結構あります。 今後のお話の流れとしては、やはり結婚に向かうのかなぁ。 いや、しばらくはカップルのままだら~っと暮らしていく彼らがみたいな! 最終話に結婚式当日の男女別視点やってくれれば完璧、感涙。 作者もオマケ漫画で自虐ってましたが、たしかにこのザッピング形式、どこまで続けられるかが難しそうなシステムではある・・・!ネタは続くのか・・・! でもここがこの作品の特徴だし、なによりとても面白いポイント。頑張って欲しいなぁ。2巻以降も楽しみです。これはいい同棲漫画ですわー。 『喰う寝るふたり 住むむたり』1巻 ・・・・・・・・・★★★★ 自然体で安定感のある同棲カップルの日常。じんわり暖まれる内容。