「正直どうでもいい?」

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秋深まり絆も深まる。『銀の匙 Silver Spoon』5巻

銀の匙 Silver Spoon 5 (少年サンデーコミックス)銀の匙 Silver Spoon 5 (少年サンデーコミックス)
(2012/10/18)
荒川 弘

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   真剣にやればかざる必要無いんじゃないかな銀の匙 Silver Spoon」5巻の感想。 今回の表紙はエゾノーの女の子たち。いままでになく華やかですな。 でもこの中でメインキャラと言えるのって真ん中の段の3人くらいのような気が。 ほかの娘は単行本のオマケラフでプロフィールが公開されてるますけれど、こうして表紙にまでやってくるとは。でもこういうのすごくいいな表紙だなと思います。 ストーリーにあまり絡まない人たちもこうして集合すれば、それぞれのキャラクターが見えてきます。なにより主人公の八軒視点で進む話なので、女の子たちだけのシーンってあまり無いし。 彼女たちの普段の雰囲気が垣間見えて好きなイラストです。 メインキャラじゃなくても表紙に居てもいいよな。彼らもこの世界の住人だ。 前巻→あまじょっぺー夏を噛み締めろ。『銀の匙 Silver Spoon』4巻


この巻はいつになく御影アキが素直だったような印象。 近いようで遠い距離感をキープしてきた彼女。むしろ遠ざけているような感じすらあった。 八軒も踏み込んでいこうとはしていかないんだけど、御影もふかく踏み込まれないように身構えていた気がします。アキの様子を見るに、八軒のことはすごく気にかけているようですけれど。 銀匙51 けれど今回、御影と八軒はケンカみたいな状況になってしまいます。 いつも柔軟な御影がこんなにマジになるのは馬のことであり、さすが馬バカという具合ですが、そう茶化すのもいけないな。みんな真剣。 ケンカをするってなかなかに体力を使うもので、こうなってしまっては2人の間柄も変わらざるを得ない。 ラブコメ的なときめきは薄いです。 もっとどっしりとした、力強いメッセージが込められている。泥臭くもある。 主人公とヒロインのいざこざという、まぁ結構おいしいイベントだと思うのですが、安直にそういう色恋沙汰に持っていかないのもこの作品らしいです。 でもさりげなく、縮まる2人の距離を見せてきたりもする。(方言でいじる所とか) そういえばそうだ。この作品は「さりげなさ」が粋だなとも思う。 しっかり伝えるべきことは伝えに来る。迫力たっぷりに頭に入り込んでくる。 でも何でも無いような日常会話の1つ1つや、ふと見えるキャラクターの表情がいい。みんなで日々の生活に夢中になってるのもいいなぁ。普通の生活がなんでも楽しそうだ。 さらりと大事なことを訴えかけてくるんですよね。 で、話を戻して八軒と御影の話。 今回八軒に立ちはだかった壁は、どうすれば馬と心を通わせられるのか。 通わせるというか、どう共存すればいいのか、という話。 自分だけができなくて、周囲から取り残されていく恐怖感は、かつて八軒が味わい傷ついてきたもの。トラウマになってしまっているだけに余計に焦って、失敗してしまう・・・。 ここらへんの息苦しさは、読んでいるこちらもハラハラしてしまいました。 それで御影と衝突してしまうんだけど、一連の流れのどこか居心地のわるいムードを吹き飛ばす、爽快な空が広がったこのシーンが印象的です。 銀匙52 知らないうちに誰かに助けて助けてもらって、それがめぐって自分と他者が繋がっている。 それって馬と人と同じだ。主と従者じゃなくて、「従え」と手綱を引っ張るのではなくて。 このシーンで八軒の視界が広がっただろう。馬も表情もいいなぁ。 不思議ともの言いたげたな空模様や、動物たちの表情も、味わい深い作品です。


銀匙53 さっき、この作品は「さりげなく物言う」ところがいいよねえ、と書きましたけど 大人たちのカッコよさってのも、さりげなく描かれている印象。 特別カッコつけているわけじゃないんだけど、いい言葉をくれるんだよなあ・・・! 4巻の校長先生もステキでしたが、5巻も大人たちの活躍にしびれる。 このシーンは別にコマが大きいわけでもなく、本当にさらっとあるんですが、だからこそ突然にテンション上がってしまう大人カッコよさがみなぎっている! 生徒たちが不安がっても、その不安を吹き飛ばしてやる大人たち。あっさりと許可しちゃったり、子供たちだけじゃ大変な作業を率先してやっていたり。 そうそう。子供が思うほど、大人は物分りわるい生き物じゃないんさ。 大人たちは子供たちの背中をおす。その中で自分らもついでに楽しんじゃう。いいなぁこのスタンス。イキイキしてるのは子供たちだけじゃない。エゾノーでは大人たちだってキラキラしてる! 彼ら自身はキラキラしてるなんて意識これっぽっちもなさそうだけど、俺はそう見えてしまう。 挑戦を促し、それを最大限に応援し、子供達を見守る大人たち。カッコいい。


相変わらず賑やかなエゾノーを満喫。「銀の匙」5巻でした。 ケンカして怒鳴ったり、コンプレックスを指摘され恥ずかしがったり・・・ 御影のいろんな姿が見れて、彼女の人間性を深く知れた気がします。 彼女は心を明かしてくれないので、なんとなく掴みどころがないのですが どうしても譲れない部分と大切にしていきたい想いが、見えたかな。 やっぱりいい娘ですしね。もっといろんな表情が見えていったら嬉しい。 楽しく青春を走ってる。それぞれが悩みながら苦しみながら前に進んでる。 その2つの感触がいいバランスで混ざっていて好き。農業高校が舞台の作品らしい、自分が知らなかった世界をたくさん見せてくれるのもこの作品の面白さです。 次の6巻ではいよいよ八軒のデビュー戦。どう考えてもひと波乱くらいありそうで、楽しみ。 『銀の匙 Silver Spoon』5巻 ・・・・・・・・・★★★★ 秋深まる。人との絆も深まる。いろんなことを吸収して成長していく八軒が眩しい。