「正直どうでもいい?」

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あまじょっぺー夏を噛み締めろ。『銀の匙 Silver Spoon』4巻

銀の匙 Silver Spoon 4 (少年サンデーコミックス)銀の匙 Silver Spoon 4 (少年サンデーコミックス)
(2012/07/18)
荒川 弘

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   ぐあ―――っ!! 甘塩っぺ―――っ!! 銀の匙4巻の感想ー。もう発売して結構経ってますが関係ないない。 荒川弘先生の最新シリーズである農業漫画。一見すると地味ですが込められたメッセージは自分に寄り添ったもので、けっして縁遠いものではない。 高校生たちの賑やかな日常、切実な悩みを切り取った内容でもあり、実に青春です。 4巻は3巻からひきつづき夏の章。 そこから季節はうつり、次なる秋の章もスタートします。 前巻→食べろ、生きろ、学べ。生命の物語。『銀の匙 Silver Spoon』3巻


「生命」について考えるこの作品。 八軒が育てた豚丼(という名前のブタです)は、食用肉になって八軒のもとに帰ってきた。そんなシーンからはじまる4巻です。 大きな決断をできた八軒ですが、その結末は。夏の章の総括となるエピソードです。 銀44 どんなに悩みこんでいても、うまい飯を食べたら笑顔がこぼれてしまう。 友人たちと楽しそうに食事をする八軒を見ると、良かったと思ったものですが でもやはり、八軒は晴れやかな表情は見せてくれてなかったように思います。 前に進んだけれど、考え続けようとする。悩み続けようとする。 それはとても苦しい道だろうけれど、八軒はそれを望んでいるんですよね。 知らん顔してのうのうと生きていくより、ちゃんと現実を見ていきたいんだろうな。 彼の真面目さは誠実さのあらわれです。クラスメートたちもちょっと疲れているようなそぶりも見せているんだけど、でも八軒はあえて自分から苦悩に向かって行く。 銀41 目をそらしても怒られはしないことなんだろうけれど。 もっと簡単に考えれば、もっと楽に生きていられるんだろうけれど・・・。 家畜動物について、ほかのクラスメートたちは「もっと楽に考えればいいのに」とオススメする基本スタイル。直接的に言わなくても、「八軒、がんばってんなー」と、みんなで見守っている様子です。 きっとほかの生徒たちも、子供のころに現実に直面している。その現実とともに育ってきている。だから冷静に現実を捉えられているんだけど、冷静になりすぎている感もある。 どうしようもないことがあることを知っている。どんなに悩んでも答えが出ないことを知っている。そんな歴史をみんな一様に歩んできたのかもなぁ、なんて思う。 農家の子らがどんな割り切り方をしているのかは自分は分からないけど。 彼らにとっては、八軒の初々しさって、結構こそばゆいものなんじゃないかなー。 クラスメートたちはかつての悩みをもう1度掘り返して、再び考える機会になっているようなシーンも見受けられる。 答えが見えない議論だけど、大激論を交わすまではいかないけど、生徒たちの中で「生命とどう向き合っていくか」が響き合っているのがまた素晴らしい。 響き合った上で、「メシはうまい!うまいは正義!」と落ち着くのが良いよなw ちゃんと考えて生きていこうとする姿勢は、読んでいる自分にも伝染する。 自分も、この大地に生きている人間なんだよな、なんてちょっと大層なことを考えてみる。 一言で言えば面白いんだけど、そう簡単に言い切るのもすこしだけ戸惑う。簡単なことのようで、簡単なことなのかな。うっかり思考の渦にはまっている。 でもこうして自分まで頭悩ませてる時点で、やはりこの作品を楽しめてるかな、と。 この作品が訴えてることって、「ちゃんと現実を知ってほしいけど、知った上で明るく健康に生きようぜ!」ってことだと思うので、今日も肉がうまい! ホントは今日食べてないので明日食べるか 


銀42 話が変わりますが校長先生がカッコいいじゃないの・・・(唐突) 悩む八軒に、周囲の人間はいろんな言葉を投げかけます。 でもこの校長先生の一連のセリフは、中でもイチオシに心に響きます。 「生きるための逃げは有りです。有り有りです。」 「逃げた事を卑下しないで、それをプラスに変えてこそ、逃げた甲斐があるというものです。」 何倍もの人生を歩んできた歴史を感じさせる余裕たっぷりなアドバイス。 ふんわりとした中に力強い肯定が込められている。あーいいなー先生。 こうしろ、ああしろみたいな強要より、よっぽど心に染みますよねこれは。 「逃げた甲斐がある」なんて言葉、聞いたことなかったですよ。でもビビッときました。考えのもっていき方1つでちゃんと前向きになれるんだな。 銀43 それとまた話は変わりますが、そろそろ御影について描かれるかなという予感みたいなのが。 思えば御影って、本作のヒロインポジションにいながら、彼女の内面描写ってびっくりするほど少ないんですよね。八軒にしかモノローグがない作品ではありますが、御影はほとんど何を考えているのか見えてこないキャラクターかもしれない。 八軒との距離も、近いようで遠い。むしろ遠ざけているような感じすら。 でも八軒を気にかけているのは間違いないのです。 4巻終盤の展開なんかは、これから御影について深く描かれていく布石かなとも思いましたが、どうか。 あえて深いところを見せないように描かれてきているキャラだと感じています。 彼女の一挙一動にドキドキさせられてる八軒もかわいいですがw ブラジャー騒動はオチがあるのは見え見えでしたが、なんというガッカリ感・・・! そんな感じの第4巻。 シリアスな一面をピックアップして感想に書いた感触はありますが 今回の「夏の思い出」前後編なんて過去最高にバカらしいエピソードですし、ちょっと特殊な環境にある学園漫画として十分に楽しめる。懐の深い作品だなと思います。 生命とどう向き合うか、という主題とは巻を増すごとに向き合ってきましたが、ひとまずはこの4巻の夏の章でひと段落かな。八軒を成長させた夏だっただろう。 5巻は来月10月。わぁい来月には読める!更新が遅れただけです! 『銀の匙 Silver Spoon』4巻 ・・・・・・・・・★★★★ あまじょっぺー夏。ちょっと特殊なこの学校だからこそできる青春送ってます。