「正直どうでもいい?」

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本当に私たちはわかりあえた?『タイプライターのリボン』

C82で購入した同人誌の感想。 前にも感想を書いたことがあるサークル「おくることば」さんの新刊です。 おくることば 「タイプライターのリボン」という本。創作ジャンル、オリジナル作品です。 今回も心震わせられました。いい本です。ネタバレをしたくないけどグサグサ来ます。 以前に「プラトンパルマケイアー」という本の感想を書いたことがあるのですが (感想→もっと言葉を、もっと意味を。『プラトンのパルマケイアー』) これと近からずとも遠からずな感触。設定やストーリーなどは全然違いますが、これがこのサークルさんの平常運転なんでしょうか。おそろしい。このエッジの利き方がクセになる! オススメの一冊なのですが、書き手の千歳良太さんがかいているとおり、本は完売!再販も現状予定なし!とのことで・・・いずれネットで公開してくれるようですが、いつになるやらってことらしいです。 ううむ・・・惜しい。なんとか読んでほしいなぁ。会える人には貸す勢い。 まぁともかく、さくっと感想も書いていきたいと思います。以下軽くネタバレ含む。


このサークルさんに特徴的なのは、哲学的エッセンスかなと。 今回も、作品とは独立した部分・・・章の合間などに、けっこう難しいテキストが乗せられています。 読まなくてもストーリーは楽しめるし、がんばって読んでも自分は頭こじれてきます。 しかしその「よくわからんな・・・」という印象は深く作品のテーマと結びつき、雰囲気作りの相乗効果を生む。理解できたような、できないような・・・そういうあやふやな安心と不安がふわふわ揺らぐ。だからこそ楽しめる。頭のよくない自分だけなんですかね、この感触は。 で、本作もその構成が光る一作。これがもうビックリするのだ。「プラトン」があったから怯えつつ読んでいたんだけど、前作「スイート・ドーナッツ・ホール」がゆるやか穏やかな作品だったので、どっちに転ぶかわからないドキドキがありました。 そうして新作を読み終えたら・・・「やりおった」と。 「プラトンパルマケイアー」ってのが、前半と後半でグルッとテンションを変えた構成をとっていました。狂気の匂いすら漂う雰囲気の入れ替わりにずいぶんとヤラれました。 一方で新作の「タイプライター」は・・・最後の最後でこれまでの流れをブッちぎる、強烈なインパクトを残す作品となっています。 しょせんは他人と他人。自分とは違う人間を理解することって、そんなに簡単なことかい? 理解しあえていると誤解して満足を得ているだけの独りよがりじゃないのか、と。 絶望的に横たわる、相互理解の困難。 広くみれば他者および社会との関係性を描いたもの。読んでいてそのまま自分自身に跳ね返ってくるような、シビアな問題を突き付けてくる。だからこそドキッとさせられるのです。 とまぁ内容の面白さを書きましたが、それより表面的(でも大事)なことも触れよう。絵がかわいい。うん即物的な意見だ!でもかわいいのはいいことだ! かわいらしい絵柄でエグいことも描いていくこのギャップがまず素敵です。加えて込められたメッセージも深みがあり、引き込まれます。 心が切りつけられて、傷口がじわじわ傷み続ける。 やさしい顔してかなりの曲者ですよ。何度も読んで味わっていきたいですね。