「正直どうでもいい?」

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全力の情熱は連鎖する。『FULL SWING』5巻

FULL SWING 5 (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)FULL SWING 5 (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
(2012/07/12)
武論 尊

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   振らなきゃ何も始まらないんだ。 武論尊さんが原作、マツセダイチさんが作画で連載された「FULL SWING」。 登場人物の関係が連鎖するような構成となっていた、実に青臭く泥臭い青春漫画。 ちょっと前に、最終巻となる5巻が発売されました。 個人的にはもっと続いて欲しかったんですが、単行本5冊、連載はまるっと二年ということで、ここらへんがいいタイミングだったのかなーとも思ったり。 それでは最終巻の感想を。


20話から24話の5話を収録。読み切り形式なので、特に気に入った話なんかをピックアップ。 ●20話 福本直也 柔道をめぐってのボーイミーツガール。まぁこの作品基本ボーイミーツガール。 挫折を味わっても、そこからまた歩み出す・・・そんな1シーンを描き続けた「FULL SWING」ですが、そうなるとやっぱり雰囲気も重くなりがちだった。しかしこの作品はなんだか妙にコミカルで雰囲気がいい。きっと主人公がバカだからだろう。いやバカな主人公はいっぱい出てきたが、中でも頭からっぽな感じがいいんだろうな。集中できるものを見つけられたらそれに飛び込んでいける愚直さも気持ちいい。 ヒロインの景ちゃんもまっすぐで可愛らしい!マツセさんの描く女の子は連載が進むにつれだんだんかわいくなってきているけども、5巻新登場ヒロインだとこの娘が一番好きかな。 FULL1.jpg 女の子としての楽しみを我慢している分、月に一度だけ女の子になってめいっぱい遊ぶという景ちゃん。そういう小さな取り組みもいちいちかわいい。 しかし「女のコの日」と言われると、なんか、うん。なんでもない。やめる。 あととてもどうでもいいことですが、途中のバーガーショップのシーンで急に絵が少女漫画っぽいタッチになってて笑いました。なんかキラキラしてるw ●23話 岡秀樹 過去に登場しているオッサン、岡が主人公ともいえるエピソード。 前に登場したときもカッコいいところを見せてきているオッサンですが、この話のは一段とカッコいいな!オッサンの渋さ満点です。 今回は明確に「父と子」の関係性を描いていて、これがまた胸を熱くさせられる。 FULL 2 『いつの間にか"男"と"男"になっちまうんだ・・・!』 父と子はどうやって関係して生きていくんだろうな。こういうのだったら、カッコいい。 わりとクズだったら息子も、親父の触発されて心に日を灯す。それは感謝というより対抗。借りなんか作っておきたくないよというライバル心です。こうなったらコイツもきっとだいじょうぶ。 ●24話 すべての愛すべき女たちと男たち。 最終話。どうしめるのかなと思ったら、なんとこれまで登場したカップルたちの性事情を描いたもの。いちおう少年漫画雑誌で連載されていたのに、よくやるものだと思います。 でも恋人になったらセックスの問題というのは切実なもの。と断言してしまいましたけど合ってますかね、完全知ったかぶりなんですけど。まぁ俺のことはどうでもいい。 個人的に1番好きだった小暮と潤のカップルが再登場し歓喜に沸く・・・!しかし夜にはなんかおっぱい揉んでました。ありゃーお前らやることやってたの!なんか嬉しいような残念なような嬉しいような・・・。あやっぱ嬉しいなw そして各カップルそれぞれにセックスに対して思うところがあって。 どんなに好き合ってても、時々ちょっと関係が揺らいでしまう瞬間もある。 そういうときどこまで自分から歩み寄って解決に持っていけるかってことですかね。 しかし小暮は完全にサカリのせいだよ、潤をちゃんと幸せにしてやれオイ! 全24話の完結編としてこういうエピソードを持ってくるなら、もっとたくさんのカップルたちを再登場させてほしかったかな、とも思いましたが、まぁ構成上難しいかな。 そして最後の最後にはなんとあの人が・・・という結構衝撃展開。5巻でも活躍してたのに・・・! けれどもう描かれない「第25話」への繋ぎがとてもいい。 ラストシーンのあの場にいた全員に、次の打席がつながれていくかのような。 急に終わってしまった感は拭えませんが、いつもどおりの1話ではなく確かにシリーズ通しての総括となる一話だったと思います。最後のページが綺麗ですね。


そんなこんなの第5巻。「FULL SWING」完結しました。 地味な良作、というのはこういう作品かなと思います。大きく目立ったところは少ないけれど整っており読みやすい。それでいてきちんと心を震わせてくれる。 一話完結の青春漫画ということで、そういうのが好きな人におすすめしたいです。 いろんなキャラクター、いろんな物語が散りばめられた作品。どこかに気に入るものが見つかるのではないかなと思います。 1巻から読んでいくと、新人であるマツセさんの絵もグングン上達しており、作家の成長を感じられる作品でもありました。いやぁ、初期と比べると女の子も随分かわいくなった。男キャラも凛々しい。 なにより、込められたメッセージもアツかった。 「人とのつながりを大切にしろ。自分を変える努力をしろ。立ち向かう勇気を持て」と。 情熱は人を動かす。情熱は伝わる。フルスイングは、連鎖する。 『FULL SWING』5巻 ・・・・・・・・・★★★★ 完結巻。最終話はいろんな意味で注目どころでしょう。土の匂いが漂う、熱い青春ドラマ。