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百合カップルに片思い男の子の三角形 『彼女とカメラと彼女の季節』1巻

彼女とカメラと彼女の季節(1) (モーニング KC)彼女とカメラと彼女の季節(1) (モーニング KC)
(2012/05/23)
月子

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   私の中にも この画を焼き付けて 忘れられないようにしよう 発売してひと月たちましたが「彼女とカメラと彼女のキセツ」が面白いです。 作者の月子先生はいろんな雑誌でチラホラと名前を見かけていましたが、これが初単行本なんですね。モーニング・ツーでの連載作品が本作。 タイトルからして登場している「カメラ」が、物語を動かすキーワードとなる作品。 んでもって本作、百合要素強めです。イェス、百合漫画! とは言え男性キャラも普通に登場してストーリーに食い込んでくるので、女の子だけの世界という風にはなっていない。百合に男が介入するのか・・・とか、百合はあんまり読みなれてない・・・とか結構思うところはあるかもしれませんが、この男の子がとてもいいキャラなのですよ。 青春の匂いが濃い作品でもあって好み。さらさらと感想書いて行きたいなと思います。


●あかりとユキの暖かくも切ない関係 主人公・深山あかりは高校三年生。ふとカメラをきっかけに、いつも1人でいる物静かな美少女・仙堂ユキと出会ったあかりは、彼女の不思議な魅力にとりつかれ、いつの間にやら恋に落ちる。 それまで女の子に恋をしたことなんかないであろうあかりですが、思いっきりユキにヤラれてしまっている。もうメロメロ状態。 でも確かにユキはカッコいい。あかりの感じ方とはちょっと違うだろうけれど、個人的にはユキはかわいいというよりかはカッコいいという印象を受ける。 好きなものをスッと愛せる素直さとか、誰かの敵になることを恐れないところとか。 それで行動力もあるし、飄々としているけど自分の大切なものを大切にできている生き方か。 でも何を考えているか掴みづらくもあって、いつのまにかフッといなくなってしまいそうな。 ちょっとボーイッシュかつクールな印象とは違った、女の子らしい眠り方とかにはグッときましたねえ。ううむ、主人公のあかりが散々ユキへのあこがれをはじけさせまくっている作品なので、否が応でもユキさんが魅力的に感じられる!もちろんイヤなわけがないけど。 かのかめ2 あかりがユキのそばにもっともっといたくなって辛坊たまんなくなっているのは1巻の中でも十分に感じることで、熱く切ない恋に身を焦がす様子が心地良いです。 あかりは自分の気持ちを、きっと伝えようとは思っていない。 もう何度も何度も悶え転げるくらいに好きになってるのにねえ。 2人はみるみるうちに仲良くなっていて、一緒に布団で寝たりお風呂に入ったりと、年頃のおなごがやりたい放題ですよ。いや年頃だからか。 でもうかっれぱなしな気分を打ち砕く要素もいくつか登場し、なかなか安心させてくれない。 迫る卒業のタイムリミットもそれの1つ。 青春っぽいなぁと感じるイベントがいくつもあって、実にこっ恥ずかしいわけですが、そういう感覚になるのはきっと偶然じゃなく。限りある日常を意識させられる。 「カメラ」によっていろんな写真を取る2人。それは今の青春の日々を写真に残したいと思っているみたいで、写真をとるという行為そのものがなんだかジンと来てしまったり。 高校3年生。すぐ目の前には将来への決断が待っている・・・かも。そんな時期だからこその不安だとか胸の高なりだとか、みずみずしい思いが詰まった作品だと思います。 ●いわゆる女子高生社会からの脱出 あかりはもともと普通の女子高生で、友だちグループが外れそうなことをしないよう、真面目すぎず遊びすぎない存在だった。女子高生としてありがちで正しい窮屈さの中で生きていました。 見えない女子高生のルールに違和感を覚えながらも、それに反発する理由もなく。 けどそこから羽ばたいたあかり。ユキと一緒の時間をたくさん過ごせて幸せそうですが、それをよくは思わなかったりからかってくるような女の子もいます。 どういうのがリアルなのかはわかりませんけど、読んでて非常に居心地がわるい、チクチクと悪意が刺さってくるような感覚を覚えるシーンもあり、ウヒヒィ。女こええ。 かのかめ3 でもかつての友人(と言えるのかどうか)に対してマジギレするあかりも面白い。 自分もいたコミュニティを「その低俗な世界」と称し、完全に離別をしたのがこのシーンでしょうか。珍しく真剣な怒りに震えるあかりの表情、迫力あって好き。 けれどそこでまたも輝きを放つのはユキさんなわけでして! 有象無象の女子高生らに対してのユキさんお言葉が笑っちゃうくらい痛快! こりゃもう、読者もユキさんの魅力にキュンとなってしまうってもんです。 ●香川くんいいキャラしてる 力強い思いで結ばれるあかりとユキですが、本作にはもう1人の重要キャラがいます。 それが香川くん。百合作品でありながらも、男性キャラが堂々とストーリーに食い込む。 でもこの香川くん、すごくいい子なんですよね。実に恋する男の子だ。 ガッチリと結びついた少女2人に、そのそれぞれに不思議と関連する少年・香川。この三角関係も注目所でしょうね。というか彼の存在がこの作品を面白くしている。 単なる百合には収まらせず、かと言って百合としての大事な物を損なわせない。 人間そのものも、ストレートで迷いの無い性格で勢いがある。作品を動かしていく力があるし、きっとこの先のカギもにぎる人物だろうなと思う。 かのかめ 百合漫画と聞いてちょっと遠のいて閉まっている人も、スッと受け入れていけるんじゃないかなと勝手に思うのは、彼の存在があるからだろうか。 三角関係ものとしてとてもかわいい三人なんですよ。ニマニマしてしまうな・・・。 ただしこっからどう転ぶかわからない作品でもあります。 ハッピーでもちょっと切ないエンディングだろうと、どちらも楽しめそうだ。


だーっと書いてきましたがまとめでも。 「彼女とカメラと彼女の季節」は、どこか甘酸っぱい女の子の世界がある作品。 時折顔をのぞかせるチクリとした悪意もこの作品の味。 メイン3人それぞれに個性があるし、すごく可愛らしい。もちろん主人公もだ。 だからこそこの三角関係、どう展開していくのかがとても気になるのです。 百合ものとしてもしっかり盛り上がっていいなー。 絵も見やすく性別を問わない魅力がりますし、不思議と艷を感じるタッチ。 あとこの作品は主人公がどうものを見ているのか、一人称的描き方が強い。 女の子が思う、女の子のかわいいところ。 そんな視点がいくつも散りばめられていて、男としてはなるほどなと思う箇所も。 でもところどころのかなり男寄りな視線でユキを熱く見つめるあかりも描かれていて、女の子も結構下品なものの味方をする時もあるんだねえと感じたりもw ノーブラで制服が水で透けた場面を写真に収める主人公。かわいい変態め。 ストレートな性欲をのぞかせる一瞬にドキドキしたり、近くて遠い距離に切なくときめいたり・・・自分はあかりちゃんが好きなのか、彼女が感じる世界そのものもなんだかキラキラしてる。 カメラ、百合といった要素が目立つ作品ですが、読む人を選ばない普遍的な面白さがある青春漫画でもあると思います。 『彼女とカメラと彼女の季節』1巻 ・・・・・・・・・★★★★ 甘酸っぱくもどかしくなる、百合ペア込みの男女三角関係漫画。