「正直どうでもいい?」

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お腹が空いて…どうにかなっちゃいそう…『pupa』2巻

作品が作品なので、1巻の時と同じくグロい更新になっているかもしれないので注意。

pupa(2) (アース・スターコミックス)pupa(2) (アース・スターコミックス)
(2012/06/12)
茂木清香

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   最後に・・・お兄ちゃんの顔・・・夢にちゃんと見せて・・・ アングラ臭が漂いすぎてすごい「pupa」2巻が発売されました・・・! あーうん。2巻もグチョグチョでドロドロでした。ですよねー。それでこそです。 さて2巻はオビから非常に印象的ですね。「食べたい食べたいお兄ちゃんを食べたい!!」である。なんという勢い・・・全速力で襲いかかってきそうです。 しかしズバッとこの作品を表現している。1巻オビはまだやんわりとボカしていましたが、開き直ったかのようにこのアピール。正解なんじゃないかな。 「究極の兄弟愛とカニバリズムの新境地!!」・・・な「pupa」2巻の感想。 前巻→食べられてもいいんだよ。兄妹に愛に震える。『pupa』


さくっと紹介してみるならば、かわいいかわいい妹がある日バケモノになったというお話。理性失って人間もむしゃむしゃ食い散らかす。姿はグロテスク。 けれど妹のことが大好きなお兄ちゃんは、すべてを投げ打って妹を救おうと奔走する。 さらには彼らを付け狙う怪しい組織も近づいてきて・・・という感じでしょうか。 スリリングすぎる展開の連続でドキドキしっぱなしの作品です。 そのほか、ちょっとコレは人を選ぶ・・・という要素もてんこ盛りなわけですが、そこらへんは1巻の感想のときに書いたので見てくださればと。1巻の雰囲気は2巻になっても微塵も変化ナシ! 国が国ならきっと18禁だよねえ・・・と思ったり。 言ってしまえばすごく気持ちわるい漫画なんですよ。 どんどん人間は死んでいくし、その死に方もいちいちヒドいから気分悪くなる。 主人公たちを追い詰めていく状況も最悪で、どこにも光が見えてこない息苦しさが辛すぎる。 モチーフとして虫が多様されているため、蝶はいいとしてもイモムシやら潰れたサナギやら、不気味な描写ばっかり。エグ味しかない感覚。グロテスクなシーンもたくさんあるし、人にオススメしづらいんだよなぁ。読んでてやや気分悪くなってくることを否定しません。 ただ、そんな目を背けてみたくなる過酷な状況の中で、美しいものがきらめいている。 それはすなわち主人公である兄と妹の愛情。かれら兄妹の互いを思いやる想いの眩しさや力強さは、この作品の1番の、そして唯一の救いなんですよね。 けれどその想いは果たしてどこまで許されるものなのか・・・どこまで叶えられるものなのか・・・。なにしろあまりにも絶望的な状況なので、読んでる自分の心がまっさきに折れてしまう。 でも兄である現くんは絶対に諦めない。なんとかして妹を助けようと、もとの平和な2人だけの日常を取り戻そうと奮闘する。 現くんはこっちが吐き気がしてくるレベルに痛めつけられたりしてて、シスコンパワーまじはんぱねえと笑ってやれる余裕もない。いや、シスコンだろうと、この根性は本当にすごいよ・・・。 とは言え、2人の絶対のコミュニケーションとしてカニバリズム要素が盛り込まれているあたり、やっぱり人にはおすすめしづらい。 でも読んでてすごく魅力を感じる場面でもあることは事実。ドキドキするんだよなぁこれ。 pupa1.jpg グロい・・・けどなぜか心あたたまる1シーン。 食われることが快感となっているあたり、主人公の感覚もヤバすぎますが。 このアングルすごいですね。食べられてるのは自分ですよこれ。自分の身体が食べられているのとゆったり眺めているような・・・そんな描き方です。どこまで読者を引かせるんだよ! 極限まで、人間であることを手放してまで、お互いがお互いを助けようとする兄妹。 その姿は哀れみと感動がごちゃまぜになった不思議な感覚を産みます。


この兄弟愛がすごい!って話をした所でストーリーの話もしますか。 今後の展開を左右する重要キャラの登場、そして妹の決断、兄が見た「夢」・・・ 2巻もドロッドロにヘビーな展開が目白押しで、ガーッと読めてぐったり疲れる一冊!・・・それは褒めてるのはどうなのか・・・いや、面白いんだけど・・・。 読んでいて思ったのは、兄と妹はそれぞれを思う気持ちは強固だけれども、個々は本当に不安定な存在なのだなぁということ。 人とバケモノの境界をふわふわと行ったり来たりしている。そして当人たちは想い合ってるからいいが、それに巻き込まれる人間たちはなんの考慮もなしに殺されまくりである。だってこいつらはこの2人だけの家族を守りきれればいいし、極論言えば自分だって壊れてしまっても相手が生き残ってくれればいいんだという思考の持ち主。 そんな破滅願望チックな感情に彩られ、加えてマニアック&グロテスクな要素の数々・・・かなり不健全な漫画であることは言うまでもない。 なんにせよ、彼らの不安定さはそのままこの作品の行き先の不明瞭さを生み出している。きっとハッピーエンドにはなれっこないというイヤな予感をビシビシを感じさせるわけですが、「もしかしたら・・・」と淡い期待もいだいてしまいそう。この絶妙のバランス感覚が、余計に読者をドキドキさせてくれるのでは。 pupa2.jpg このキャラはいつ『壊れて』しまうんだろうか。そんな不安がいつも頭をチラつく・・・、 このカットもすごい。女の子の背がパックリと割れて、そこからバケモノの姿が剥けて出てきている。この作品ならではと言えるショッキングな一枚絵といえるのでは。 こういう異形のモンスターが、女の子の中から顔をのぞかせているファンタジー感・・・これもまた、実は気に入っている要素でもあるのです。 そうそう、2巻は妹さんが完全にバケモノにならないまま、背中からガケモノのパーツをはみ出させているシーンがいくつか出てきましたが、これも面白いですね。 ほのぼのな絵柄で超シビアな設定を描き、巻き込まれて傷つけられながら愛しあう2人。そして背中からは人間ならざるモノの一部が生えている。イメージとしては個人的に「最終兵器彼女」をなんとなく思い出す組み合わせですが、似ているかと言われば、どうだろうなコレは・・・。 そんなところで「pupa」2巻感想のまとめに入ります。 相変わらず独特の濃厚な世界が広がっています。間違いなく人を選ぶ!アングラでインモラルなムードが強烈ですよ・・・!しかしストーリーの疾走感も素晴らしく、一気に楽しめるシリーズ。 一見突拍子もない漫画ではありますが、読者を引き込む迫力は十分。日常パートの絵などを見て感じる本来の作家さんのタッチと、メインストーリーでの絵柄のギャップが凄まじい。このギャップがこの作品に味わい深さを与えているような気もしますね。 緊迫感MAXな本編に加え、愛しあいながらどこか遠くから眺めてしまうどかしさや切なさにキュンとくる兄弟愛も見所ですよ。その2つが俺の心にガッとはまるのです。 本編に癒しがほとんどなかった分、各話の合間にあるオマケカットや巻末の描きおろし4コマなんかはとてもほのぼのしていて、心のダメージ回復ができるような気分。かわいい・・・。 まだまだ謎がいっぱいにある「pupa」。 次の第3巻では様々な秘密が明かされていくとのことで、予定の来年春が楽しみですよ。 気になる要素と言えば、兄妹の両親の話。それぞれの動きに要注目か。 カギを握るである重要人物もだいたい出揃った感あり、話も深まっていきそうです。 逃れれない残酷な運命は、愛しあう兄妹をどこへ連れていくのか・・・! 残虐と混沌と愛情がエネルギッシュにひしめき合うスリリング・ホラー。 『pupa』2巻 ・・・・・・・・・★★★☆ どんな結末をみせてくれるのだろうか・・・気になって仕方ない一作。妹も兄もマジ健気。 追い詰められてあがく少年少女の姿って、なんだかちょっとときめきませんか。