「正直どうでもいい?」

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毛を巡る暴走思春期じょりじょりラブコメ『スイートプールサイド』

スイートプールサイド (少年マガジンコミックス)スイートプールサイド (少年マガジンコミックス)
(2011/08/09)
押見 修造

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    …太田くん…剃ってくれない…? 押見修造先生の「スイートプールサイド」全一巻。 去年の夏に出ていたんですが買っておらず、今更ながらに読了。読んだらこれがまた面白いんだ・・・。「惡の華」にドハマりしてるのでこちらも早くに読んでおくべきだった。 「惡の華」と内容の繋がりはありませんが、雰囲気が通じ合うものがあるかも。 こちらも思春期の男の子と女の子とグラグラする心理描写が魅力的。 しかしジャンルがよくわからない。これはなんだ・・・剃毛ラブコメ


体毛が薄いというか無いことが悩みの中学生・太田。 彼と同じ水泳部で同級生の後藤は、逆に女の子なのに体毛が濃いことが悩み。 ふとしたきっかけで後藤の秘密の悩みを知ってしまった太田は、ときどき学校で後藤の体毛を剃ってあげるという謎の関係性を築きあげる。 スイート 毛が濃い、なんて女の子にとってはきっと誰にも知られたくないプライベートすぎる大問題。 しかし相手のほうから「私の毛を剃って」と頼まれるこの意味不明な、でもすごくワクワクしそうな物語のスタート地点。 女の子の毛を剃るというのも、彼女の身体に触れるというのにも、刺激が強すぎる行為ですよ。思春期男子の心臓は爆発寸前というヤツです。 その興奮たるやこうした文面だけでも相当なものだけれど、本作は漫画としてそこの描写をじっくりやってのけているのでもうドッキドキしまくり。今まで味わったことのない興奮にゾクゾクしつつ没頭する少年もうまく描かれています。 この青くささ、照れくささ、そしてスパイスのようにきいた罪悪感、いい雰囲気だ。 見てはいけないものを見ている。してはいけないことをしている。それを自分だけは許されているというのは・・・なんだろう、「なんかエロい」。 通常有り得ないシチュエーションだからこそ、禁忌的で甘美な興奮がありました・・・。 スイート2 まぁそういういい興奮だけでなく、女の子に生えるワキ毛をみてごっそり萎えまくる主人公の描写にもありましたが、そういうショックを受けるのも、そこからの少年の成長へつながる。 成長というか、マニアックな性癖を開花させかねませんが! 「毛の悩み」を軸に展開していくのも、思春期らしくていいなぁ。 体が大人になっていくこの時期、みんながみんな多分気にしている。「自分の体って、どこかおかしくないかな?」と。子供の頃からの明確な体の違いって、たしかに、毛だ。 だから「毛のコンプレックス」という要素だけでも、この時期特有の悶々とした感情がうまく閉じ込められているというか、象徴的に描かれている。昔を思い出していろいろシンクロするなあ。 加えて主人公・太田が得る興奮は、実に思春期らしいときめき。 女の子の身体。自分より先に迎えている第二次性徴。 主人公にとってふたつの未知が、眼前にあるという事態。それが彼に恐ろしいくらいのドキドキを与えるんですね。 それを踏まえてのラストも素晴らしかった。思春期の少年少女の背中を押す。 陰毛を綺麗なものとして、剃らないことを選択した印象的な結末は、「大人になることに怯えなくていい」と言っているかのようで。 変化を受け入れれればいいんだ、という優しいメッセージが込められているように感じます。


そういえば、女の子たちって中学生のころ毛の処理ってどうしてたんだろう。 昔は当然生えてないもんだと思っていた俺も、今は色々察せるようになりましたので、これは純粋に学術的興味です(キリッ という訳でそんな作品です、「スイートプールサイド」。 思春期を描いた作品が大好きな自分はジャストミート。これだよこれ!言葉に出来ないような、得体のしれない興奮に胸高鳴らせる感じ!大好物! 毛がテーマの作品ということでかなり独特ですが、しかししっかりとそれを生かした作品であり納得させられます。単なるアイデア先行のイロモノではない。 そしてこんなことやっておいて、ちゃんとラブコメになってるというのもすごいなw あとがきにもありましたが、思春期には「なんかエロい」の「なんか」が大切なのかもしれない。そういう正体不明な、でも本能に直接訴えかける何かに戸惑いながらも飲まれていく様子というのは、やっぱり自分のツボらしいです。 現在の押見先生の絵柄とはまた違っていますが、この時から作風は確立していたのだと分かりますし、絵も悪くはありません。むしろキャラ絵とか十分にかわいいくらい。 表題作ともう一つ、「超常眼球 沢田」という作品も収録。 これも思春期の性欲丸出しでとても楽しめる。全力でバカやってるなぁとw 一冊トータルでとても楽しめました。思春期漫画が好きな方なら。 『スイートプールサイド』 ・・・・・・・・・★★★☆ かつてヤンマガで連載された押見先生の連載デビュー作。未体験の興奮!