「正直どうでもいい?」

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さよなら思春期の中の幻、ウシハル。『ウシハル』5巻

ウシハル 5 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)ウシハル 5 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
(2012/01/30)
ゴトウ ユキコ

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   ウシハルが好きだ。 ゴトウユキコ先生の「ウシハル」第5巻。これにて完結となります。 童貞にだけ美少女に見える「ウシハル」と少年をめぐる、思春期のエネルギーがいろんな方向(大半がエロい方)に爆発した作品でした。 マニアックかつちょっと刺激的なエロスで魅せてくれたのもお気に入りな点。 最終巻ということで当然展開も巻きに入っており、切ない。 以下、結構ネタバレを含んでしまうのでまだ見たくない人は回れ右。


童貞を喪失してしまい、ウシハルが見れなくなってしまったと絶望する清春。 気になる幕引きだった4巻の続きは、・・・実はあっさりと解決するんですが、またちょっとしたところで展開がどんどん完結に向けて走りだすのです。 男子中学生たちの微笑ましく頭の悪いやりとりを見守りる・・・そんないつもどおりな流れがやってきますが、その一方で清春は重大が決断を迫られる。そして彼の選択は、避けては通れない現実に真っ向から挑むというものでした。 ウシハル2 ウシハルとの交わること。 ウシハルのことが大好きだと自覚した清春はウシハルに告白をし、ウシハルもまたそれを受け入れるのでした。それをすれば2人は恋の幻は、本当に消えてなくなってしまう。それをハッキリと理解した上で、愛を結ぶというこの強く儚い選択よ。そーおーよーウーシハールーをー・・・続きは浮かばなかった。 クライマックスとなるこの場面、これまで想像出来なかったような切なさが充満してます。 胸の奥がジクジクと痛むいたむような、それでいてなんて刹那的でロマンチックな場面なんだろうかと。読みながら脳が揺さぶられる想いでした。 ちょっと不思議な形で人とケモノの愛を描いた本作でしたが この部分をごまかさずに描いたのは流石と言うか、嬉しかったです。 思春期の中学生にとってはセックスなんてきっと遠く手の届かないもので、清春なんてうじうじした草食系にとってはなおさら。 実はこの作品の結末の予想として「僕とウシハルのちょっと刺激的な日常は、これからも続く!」みたいなこともありえそうだなぁと思っていたので、こういうしっかりとした答えを出して個人的に非常に嬉しかったのです。 というかむしろこんなにちゃんと「物語」が出来上がるとは思ってなかったのは秘密。 で、ここから最終話の話を。 ウシハルとよく似た人間の女性と出会う大人清春・・・そんなシーンで「ウシハル」は幕を閉じるわけですが、明確な答えを与えてくれない終わり方ですねえ。 ほんのりハッピーエンドなような、どこかズレてるような可笑しさ。 あの女性がホントにウシハル・・・であることはない。普通に人間社会に溶け込むことはウシハルには不可能なので。ということは完全に他人の空似か。それともウシハルの生まれ変わり? 色々と想像はできそうですが、ウシハルと瓜二つの女性と出会ったしまったのが、嬉しくもありズブズブの泥沼でもありそうでもありw またしてもウシハルと似た容姿の女性を好きになったら、所詮少年時代の延長にすぎないというか。未だにウシハルの面影を追っていてはちょっと・・・!と思う所もありますが、素直にゾクッとウルッと来る部分です。 きっと男なんて未練だらけで、叶えられなかった恋のことばかり思い出しちゃったりして。清春が思春期から未だ抜け出せないことも示唆されてるみたいで、不思議な感覚。 まあすべての判断を読者に委ねているので、ファンは好きなように想像すべし。 理屈がどうとかより、まずなんとなく救われた気がした、その感覚がとても大切。 一人の少年が思春期の夢から解放されたのか、あるいは夢を見続けるのか。 面白い角度から少年期の終わりと、大人になることを描いているのかも知れません。 この先の様々な広がりをいくつも思い描くことができるラストでした!


清春とウシハルをめぐるメインストーリーから離れ、サブキャラ陣のお話も区切りが。 特に印象深かったのが吉野さん! 彼女が起こした行動もまた、彼女にしては珍しくド直球に青春くさい。 でもこれ、いろんな意味で切なかったですねえ。報われることはきっとなかっただろうし、それをわかった上の判断だっただろうし。 またこの5巻の各話の合間には、未来の各キャラのワンシーンラフカットがあり。 あのキャラがいったいどんな未来を歩んでいるのか・・・ちょっとだけ覗けるのです。 あの中学生男子たちが、それぞれ意外な進路を歩んでいてニヤニヤしましたw そんな風に、最終巻として必要なまとまりはしっかりとあります。 しかし一方で、若干の打ち切り急ぎ足・・・な感じはやはり否めないもので。 個人的にスピリッツというフィールドにはやや合っていなかったのかなとも思いますが・・・月刊スピリッツの方で最初から最後までまったりとやっていて欲しかったような。 最後まで楽しめたことは間違いないですが、月刊ペースが合ってたんじゃないかななんて。 でも、あとがきを読んでゴトウ先生にありがとうをちゃんと届けたくなりましたよ。 このブログでも1巻から5巻までずっと取り上げてきました。いい作品でした。 程よくマニアックなエロスと、思春期の男の子と女の子のもやもやした世界観。 「R-中学生」でザクリと胸を一突きされてからゴトウユキコ先生の作品を追い出しましたが、これからも間違いなく追っていきたい作家さんの1人です。 「ウシハル」という物語をありがとうございました。連載お疲れ様でした。 性経験のないものだけが見れる美少女な牛。まさに童貞ロマン。 さよなら思春期の中の幻。でもそれが現実に叶うことだって、あるかもしれない。 『ウシハル』5巻 ・・・・・・・・・・★★★☆ 完結巻。それぞれが歩む未来に笑顔がこぼれます。エンディングもとても印象的でした。