「正直どうでもいい?」

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過ぎ去りし青春、今ここにある青春。『君と僕。』10巻

君と僕。(10) (ガンガンコミックス)君と僕。(10) (ガンガンコミックス)
(2011/09/17)
堀田 きいち

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   高校最後の夏が始まる君と僕。」の最新10巻、先月出ました。いよいよ2ケタになりましたか。 表紙は祐希&千鶴のなかよしコンビ。今回彼らの関係がメインの回も。 アニメも放送中で、原作どおりのマッタリ感と、学生たちが日常をただ楽しむだけのノスタルジックな光景が際立つ仕上がりとなっています。まだ1話が放送されたばかりなのですが・・・。 ではせっかく久しぶりの新刊なので感想を。さらりとですが。


●10巻は引き続き修学旅行編からスタート。 春くんに春が来たぞ!最初からメリーに好かれていましたけども、彼自身がだれかと恋に落ちたということはこれがはじめてで、なかなかにニヤニヤするエピソードとなっていました。 2人の恋の行方は果たして・・・? と気になりますが、この結論はこの作品らしいなぁと感じましたね。 この作品は何気ないエピソードでもあとから振り返ればかけがえのない時間だったと思えそうな、甘い青春を送っているのですが、今回のような目立ったシチュでの展開でも同じ。 20111013000416.jpg このエピソードでは、春くんと祐希というほんのり珍しいような気がする?組み合わせがピックアップされたシーンがありました。個人的にはここの祐希がたまらないのです。 ぼんやりしてるようで人の心に敏感で、遠まわしにですがなんとか春くんに行動を起こさせようとしてる感じがいいですねえ。「俺は悠太ほど優しくはないからね」という言葉もいい。 もしかしたら傷つけるかもしれない、それでも春に後悔させないために、あえて口にする言葉。祐希の友人との距離感は非常に心地よいものだと思います。まぁ、そりゃメインみんなかな。


●それ以降は普段通りの学校生活に戻りました。 次の巻に続くおおきな変化をあったりなかったりといった感じです。 しかし第45話と48話、あきらが登場するエピソードは、大人と少年それぞれが見る・感じる青春の違いが込められているようで印象深いです。 45のエピソード2は、大人たちが飲み会ではしゃぐ(はしゃいでるのはあきらだけか)お話なのですが、青春を終えたものたちがそれを懐かしみ、あるいは青春の延長線の上にあり現在までに続く関係、いわば「青春の残り香」に思いを馳せる内容。 大人になってなくしてしまった感覚はたくさんあって、それを仕方ないものとして受け止めてしまえる強さも身につけた。でもあのころの楽しさは、輝きは、いつまでたっても忘れられない。今や自分はそれにあこがれるだけの存在になってしまったけれど。 そして第48話はあきらが現役高校生と青春しちゃうようなお話。 あきらは大人でありながらそのルックスや幼い内面から、制服さえ着ればまったく違和感なく学校をうろつけるような人物。しかし彼が、リアル高校生との間に感じるささいなギャップ。 20111013000413.jpg 優勝したら、先生がジュースおごってくれるってさ。がんばらなきゃな。 ・・・労働の対価としてジュース一本のおごりじゃ、大人の世界じゃわりに合わない。でも少年たちは、そんなどうでもいい目標のためにがんばれる。まぶしいくらいの単純さ。 そしてこれにあきらも苦笑い。 間違いなく、彼もまた大人になってしまっているのです。かつての何かはもう薄れている。 寂しいけれどそれが現実で、この後に続くタイムカプセルもまたノスタルジックでした。 人がみなきっと憧れる「青春」の日々。きっとそれを通り過ぎた人にした、あのころの輝きをちゃんと見ることなんてできないのかな。 感傷的になる大人たちがみせる曖昧な表情が、この巻の大きな見所でしょう。


●もういっこ、悠太の内面をさらりと描いた第47話「独白」もクール。 12ページの短編エピソードなのですが、これも心にのこるものでした。 20111013000410.jpg 集団の中で、いつも「自分」を強くは出さない悠太。彼自身、自分に主体性がないことをちょっとだけ気に病んでるような様子が伺えます。 それでも終盤のモノローグで綴られる彼の心情がまた鮮やか。 「何になっても来週が楽しみだ」で閉じられるのですが、そう確信を持てるのは、今がとても楽しいからにほかなりません。彼のまわりには黙ってても面白い奴らが揃ってますからね。 ある意味では、悠太は自分の娯楽性を大幅に周囲に依存している、ということで。彼がどれだけ今の日常を気に入っているかが伺えるのです。 「あいつらと一緒にいれば、いつだって楽しいに違いない」なんて絶対口にはしないであろう確信に満ちたメッセージが透けて見えます。きゃーん。悠太は大人っぽい形で青春を楽しんでるのかもしれませんね。ニヤニヤ。


ってことでざらっと気になった点にふれていきました、「君と僕。」10巻。 「超面白い!たまらーん!」というふうではなく、「おっ、いいねえ、この空気」という感覚のまま、10巻にまでやってきました。今後ともこんな感じでいってもらいたいところ。 さて、コミックス11巻は3月27日発売。限定版もあるようです。 なぜか応援団なんて似合わない熱血集団に仲間入りしてしまった祐希! いよいよ次の巻では彼が本気をみせ・・・・・・てくれるのでしょうか本当に。 3年生だし、そろそろ進路の話にも本格的にはいってくるかも? いつもよりちょっと早めに出る11巻、楽しみにしたいと思います。 『君と僕。』10巻 ・・・・・・・・・★★★☆ ゆるゆるセンチメンタル。思わずキュンとくるシーンが盛りだくさん。