「正直どうでもいい?」

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輝きだした、かけがえのない春。 『四月は君の嘘』1巻

四月は君の嘘(1) (月刊マガジンコミックス)四月は君の嘘(1) (月刊マガジンコミックス)
(2011/09/16)
新川 直司

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   君は 春の中にいる かけがえのない 春の中にいる四月は君の嘘」の1巻が発売されました。さっそく購入。 もともと前作「さよならフットボール」がとても評判がいいようで、そのうち読んでみたいなぁと思っていたら新作が出ましたので先にこちらを、と。そしてこれがなかなかに面白かった! タイトルからどんなジャンルかが予測しづらいかも知れませんが、本作は音楽漫画です。 今日はこの作品の感想をー。


小学校のころはその才能を開花させ、多くの賞を受賞。神童と呼ばれた天才ピアニスト・有馬公生は、いまはもうステージに上がることはなく、穏やかに高校生活を送っています。 11歳の秋から、彼はピアノがひけなくなってしまったのでした。 そんな彼がひょんなことからであった女の子・宮園かをりはヴァイオリニスト。 そして流れで彼女のコンクール出場の様子を見ることになるのですが、そこでの彼女の姿に公生は衝撃を受けたのでした。 20110920224822.jpg コンクールの本心なんか完全に無視。なによりも楽しそうに、自由に。 やりたいことをやりたいように誇らしげにやり遂げてみせるかをり。 コンクールとして認められないくらいに個性を強く打ちだした演奏をした彼女は、当然コンクールの審査員たちからは良い顔をされませんでしたが、会場の盛り上がりは確かなもので。 そんな常識外れな演奏を見て、彼の中で少しずつ変化が起きていくのでした。 主人公の公生くんは、精神的なストレスから、演奏中に音が聞こえなくなってしまいました。それが原因でピアノ演奏から距離を置くようになってしまっています。 でもアルバイトでピアノに触れる仕事をやっているのを見るに、椿ちゃんが言ったように「しがみついてる」というような感じは受けますね。重圧から逃れたいけれど、自分にはピアノしかない。 とは言っても第3話、子どもたちに公生がピアノを弾いてあげるシーンを見ると、演奏を止めてしまう直前のシーンでその穏やかな表情に、楽しさを感じているように見える気も。自信はなし。でもきっと、彼は本質的にはピアノが好きでいてくれているんじゃないかなと思ってます。当然。


本作のメインヒロインと思われる女の子・宮園かをりちゃんですが、彼女はかなりお気に入りのキャラクターです。物語を動かすキーキャラクターでもあり。 とにかく表情が豊か!演奏と同じく、生命力の強さを感じます。 笑顔で音楽を楽しんで、パンツみられたら顔赤くして、初対面の男にも殴りかかって。 そして音楽には真摯に向き合ってみせる。なにがなんでも音楽を奏でなきゃいけないと。 20110920224818.jpg 「悲しくてもボロボロでもどん底にいても 弾かなきゃダメなの」 「そうやって私達は生きていく人種なの」 いいですねえこのセリフ! 単純に自信家なのではなく、音楽家としての意識の強さが、彼女の音楽の源なのか。 そしてこの表情です。キリッと明日を見ているのがカッコいい。 そしてなによりこのシーン。公生にコンクールでの伴奏を頼みこむ彼女ですが・・・ 20110920224825.jpg 予想外の涙に、ページをめくった瞬間にドキッとしました。 あんなに自らへの肯定の言葉を口にしていたのに、なぜ泣いてしまうのか。 でもそりゃそうか、まだ子供なんだもの。味方は欲しいんだ。その瞬間にはこの世界の誰よりも自分を近くから見て支えてくれる、強い味方が。 願わくば、それは同じステージの上に。そしてそれはピアノ伴奏で、公生であって欲しい。 ふいに零れおちてしまった彼女の弱さが、とても印象に残りました。 それでいて公生も公生ですよ! 結局、「女の子ために立ち上がる」という男の子らしい素直で単純な決断! でもそれくらい衝動的でなきゃ、トラウマ引き摺ってもう一度ステージになんか立てないか。 男の子らしい立ち上がり方じゃないですか。大好きです。


と、わりとストーリーについてばかりお話してしまった「四月は君の嘘」1巻感想でした。 ボーイ・ミーツ・ガールの青春ムードにときめいたり、いちど道を絶たれた状態からの再生に胸熱くさせられたり。やや長いオープニングかと思いますが、それでもじっくりと読ませられます。 メインとなるキャラクターの立ち位置が固まり、そして主人公の再生が始まりました。 本当に最初の大盛り上がりがやってくるのは次の2巻なのでしょう。 それでさらに躍動感ある作品になっていってくれそうですね。 再びステージに上がるのであろう公生は、無事伴奏を成しとげることはできるのか! 今からどんな展開になっていくのか楽しみです。 詩的なタイトルによく合った、全体的に懐かしさや切なさを漂わせる、魅力的な物語となっていると思います。しかし「嘘」なんてちょっと不穏な単語、気になりますね。 さて、いよいよ物語が走り出しました。青春と音楽は、4月にどんな光景を見せてくれるのか。 『四月は君の嘘』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆ 切なくも熱い青春エネルギーを強く感じる新シリーズ。音楽漫画としても面白くなりそう!


講談社さん、作中登場する挿入歌を実際に聞ける動画を用意しているようです。 →『四月は君の嘘』をもっと楽しむために『四月は君の嘘』をもっと楽しむために その2 こちらもチェックしてみては。 [youtube https://www.youtube.com/watch?v=eRQZkeEYMko&w=250&h=220] これが作中でかをりちゃんが弾いてた「クロイツェル」ですね。 他の作品でも、Youtube等でみれる紹介動画を公式が作ってくれるケースがたまにありますが、紹介記事に使いやすくてなかなかありがたいですね。個人的にもこういうの好きです。