「正直どうでもいい?」

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甘く切ない、だけじゃない。 『ひらり、』Vol.4

ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.4ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.4
(2011/04/23)
袴田 めら、仙石 寛子 他

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   私たちふたり 誰にも内緒だけど 普段とちょっと変わりまして、アンソロ本で更新をしてみようかなと。 新書館から発売されている百合オンリーアンソロジー「ひらり、」Vol4です。 1号目から買い続けていますが、新しいものが発売されるたびにどんどん面白さが増していく勢いのあるアンソロジーシリーズ。今回は4号目になりましたが、今回も凄かった!どんな作品が載ってるかは公式HPへどうぞ。 Vol.3までとは表紙のデザインがリニューアルされていますが、内容は変わらず。 多数の作品が掲載されていますが、なんせ多いので絞ります。特に気に入った作品について感想をつらつらとー。

自転車と加瀬さん

待ってましたの続編!Vol.2で掲載されたものの続きですね。 この作品は本当に可愛らしくてたまりません。「未満れんあい」が有名な高嶋ひろみ先生ですが、こちらも是非とも長く続いて単行本化して欲しいですね。連載枠みたいに。 今回はより恋愛感情が高まったからこそのちょっとしたトラブルが2人に訪れます。でも結局ベタベタしてるだけなので無問題。山田さんの叫びにベッドの上でのたうちまわりました・・・しょうがないこれはしょうがないですよ!ニヤニヤするに決まってるじゃないですかあー!! 互いの「女の子」な部分にドキドキしてる2人がいいですね。日に焼けた加瀬さんは、山田さんの白く柔らかな肌に。山田さんは加瀬さんの豊満なおっぱいに! 相手が女の子だからこそ惹かれてしまうんですねえ。代わりじゃなく!

永遠に少女

雨隠ギド先生の作品。雨隠ギド先生はvol.1以来久々の登場となりました。 そして個人的には今回No1に胸震えた物語がこれです。 高潔で美しく破滅的な、2人だけの世界の幸福。ストーリーもさることながら要所要所に非常に印象的なカットが用いられており、視覚的にも印象に残りました。2人のウェディングドレス姿とか。あと扉絵も凄く好きですねぇ。 20110429161033.jpg (クリック拡大) ずっと姿の変わらない幽霊の少女・みずきと、彼女を唯一見ることができ、また触れることもできる少女・みずほ。互いに寄り添いながら時を歩み、みずほは幼い子供から女性へと成長していきますが・・・みずきは、変わらないまま。 友達以上にお互いを想いあっていた2人ですが、時の流れがもたらす変化に少しずつ戸惑いが生じてしまい・・・というお話ですが、結末も素晴らしかった。素敵な未来じゃないですか・・・! 雨隠ギド先生の絵が好きなのでそれだけで楽しめてしまいましたが、「永遠」の「女の子」というテーマから、少女へのロマンも内包されているように感じたり。本当にいろいろ描ける作家さんですね。

あなたと彩る世界の色

カザマアヤミ先生は「ひらり、」初登場。 大切に思うからこそ、ずっとそばに居たいからこそ、親友の奈子に「鬱陶しい」と思われたくない主人公・理歩。彼氏のいる奈子を思いやり、自分よりも彼氏を優先してよと繰り返す。 とにかく遠慮してしまって仕方ない、臆病者な女の子が理歩です。 でもそんな風に自分から逃げていってしまうような彼女に、奈子はストレスを感じて・・・それがいよいよ爆発したとき、2人の関係は以前とはちょっと違っていました。 20110429161031.jpg 長い間いっしょにいた2人。けれど初めて手をつないで、2人して顔赤らめて。 なんかもーぅこの初々しさはなんなんでしょうね!世界って綺麗ですね。うわあ。 しかし、なんだか妙にリアリティを感じる2人だなぁと思います。感情が生々しいというか、この2人の関係って凄く現実にありそうな感じがして、けれどこんなに上手くいかないケースも多いんじゃないかなぁなんて思ってしまいます。 でもそれにしたって「彼氏よりもだよ」なんて言っちゃって、奈子の彼氏さん超涙目ですね。でもまぁ、それとこれは別腹ってことで。お肉も好きだけど甘いものはもっと好き、そんな感じでいいんじゃないでしょうか。女の子はずる賢くていい。・・・なんか凄く主題から離れてる気がします。

おとなりのせんぱい

安定してほっこりする百合漫画を届けてくれるささだあすか先生。今回も癒されますねぇ。 タイトルどおりに、お茶目で天然な先輩さんがとてもかわいく魅力的な一作なのですが、ポーカーフェイスな主人公が先輩と一緒にいることで少しずつ崩されていく様子にもニヤニヤしてしまいます。 地味といえば地味ではありますが、シンプルに整えられた作画は読みやすさ抜群。 読みきり集めて単行本化してくれないですかねー。

きれいなあのこ

第一回『ひらり、』GLコミック大賞グランプリ受賞作品。 吉田丸悠先生はこれで「ひらり、」デビューとなる新人さん。けど検索してみたら、2008年にIKKIの新人賞イキマンに「そして世界は平和になる」という作品で入賞していた作家さんでした。 さて内容は、アイドルとして活躍する主人公・木原さんと、クラスの中でもちょっと浮いてる天然娘・谷本さんの交流を描くもの。丁寧に感情や人物の表情を描いていて好印象。 20110429161006.jpg いい空気を描いてくれる作家さんだなと思います。 しかしこの作品はなんと言っても終盤の展開がすさまじいのですよ。丹念にくみ上げてきた心地いい雰囲気を残酷に引き裂くまさかのの展開に、読んでいてしばし呆然。こんな終わり方なんて・・・と思ったら、ラストはしっかり〆。いやぁビックリ。無茶苦茶引き込まれました。 みんなが思ってるより、谷本さんはいろいろ思っていたのですね。彼女は本当に素直で、だからこその悲劇が終盤に待ち受けていたのです。主人公にとっても、彼女にとっても。 百合漫画というより友情物語かなとは思いつつ、とにかくドラマで魅せる改心の作品なのではないでしょうか。ラストシーンをもうちょっとじっくり見てみたかった、というのは巻末の総評にあったとおり感じましたが、それを踏まえても高い完成度を誇る短編になっていたと思います。 今回のVol4はちょっと毒が足りてないようにも感じていたので、最後の最後にズキッとくるお話をくれたという意味でも好き。この人の作品もっと読んで見たいですねぇ。 甘く切ない、だけじゃない、女の子たちの世界。


んではまとめ。 今回も楽しませてもらいました。おなじみの作家さんから実績ある作家さんの新規参入、今回でひらり、デビューの作家さんもそれぞれが質の高い物語を届けてくれて大満足。 単行本化して欲しい作品が多いアンソロシリーズですので、単行本化できる程度には同一の作家さんの作品を連続して掲載して下さると嬉しいです。というか長く続いて欲しいな「ひらり、」。 そういえば今回4コマ漫画も増えてきていて誌面がちょっと目新しい感じでしたね。固まって配置されていたので読んでいてバランスが気になりましたが、面白い傾向。 芳文社が発売している「つぼみ」も同じ百合アンソロですが、若干方向性が違うというのは感じてます。そういえばつぼみと言えば、小川麻衣子先生の新連載?が実に美味でしたが今あんまり関係ないので省略。でも本当に続きが楽しみですよ。 今回で初めてレビューしたのですが、本当に良質なアンソロとなっていますので、気になった人は遡って集めてみるのもオススメしたいです。雑誌ではないので大きな書店などでは発売されて結構経つ号も買えるかなと思いますので。 もちろんこのVol.4からでも全然大丈夫です。基本読みきりです。好きな作家さんが参加してる号を買えば、他にもぴったりくる作家さんが見つけられるのではないでしょうか。 たっぷりまったり百合の世界に浸れる素敵なアンソロジー「ひらり、」、今後も応援していきたいです。いい漫画をありがとうございました。Vol.5は8月発売予定。 『ひらり、』Vol4 ・・・・・・・・・★★★★ 今回もレベル高い一冊。吉田丸先生は要チェックな気がする。ギド先生は流石!