「正直どうでもいい?」

漫画 音楽 娯楽

亡霊を背負い戦うものたち。 『ハンザスカイ』6巻

ハンザスカイ 6 (少年チャンピオン・コミックス)ハンザスカイ 6 (少年チャンピオン・コミックス)
(2011/04/08)
佐渡川 準

商品詳細を見る

   逃げんな 週間少年チャンピオンにて連載中の「ハンザスカイ」も6巻が発売。 これまで1巻~5巻の表紙は、並べてみると半座の成長具合を分かりやすく見て取れましたが、その一連の流れはここらでいったんストップでしょうか。 しかし今回の表紙は不敵に笑う半座、ということでこれも6巻の内容を表していますね。 一冊の大部分が主人公・半座の試合であるこの6巻、今回もテンション上がる内容です!


インターハイ予選準決勝、半座ら御門高校があたったのは東嶺大市川高校。 名のある高校というわけではなかったが、4強の一角・照明高校を破りのし上がってきた注目株。加えて半座とあたる先鋒・結城選手は、なにやら半座との因縁があるようで・・・。 というのも彼は半座と中学校が同じ。半座は彼を認知してはいませんでしたが、当時の半座は単なる喧嘩野郎で校内の知名度は高かったようで、まぁしょうがない話。 しかし結城は半座に対して並々ならぬ感情を抱いているようで、試合前から半座をバカにした発言をするなど、強烈な挑発を仕掛けてきます。 ひたむきに空手を続けてきた彼にとって、半座が同じ舞台に立っているという現実は空手への、そしてそれに一生懸命に生きてきた自分への侮辱・・・・・・と結城は考えている。 半座が身勝手な拳を振るっていた横で、自分は空手の鍛錬を重ねてきたのだから。 場違いな不良を全力でブチのめしてやろうと、そしてこれまでの自分の人生を証明してやろうと、冷静を欠き半ば躍起になっている様子が感じられます。 半座としては、ただバカみたいに喧嘩をしていたころの自分をいまだに引きずっている相手なので、ちょっと戦いにくかったり。作中では「亡霊」と例えられていましたがそのとおり。結城も半座自身も、過去の半座の呪縛が完全には解かれていないまま。 だからこそ、押される一方だった半座が繰り出した反撃の一撃目に大興奮! 20110419213708.jpg (クリック拡大) その幻想をブチ殺す!と言わんばかり。 結城の放った攻撃を避けるでもなく受け止めるでもなく、前進し攻撃に転じています。 この一連の流れは半座らしいなぁと思うと同時に、過去を振り切って見せたことの感動もあり! しかしこれに頭に血が上った結城はブチ切れ。 半座が喧嘩ではなく予想以上の「空手」をしていて、その上自分から点を取ったということが彼のプライドを傷つけました。「どこまでナメてんだ」と激昂しものっそい顔芸を披露。 そして新たに繰り出される独特の「ステップ」に、半座はまたしても苦戦を強いられます。 必死に食らい付くも追いつけない、縮まらない点差・・・しかし試合の決着は、予想だにしない形に。読んでてびっくりしましたとも。 20110419213651.jpg 試合終了後の結城。文字通り、拳に込めた想い。かつての自分は、亡霊だ。 きっと変われる。もっと強くなる。昨日より、今日より。 だから逃げるな。自分の弱さから。この悔しさから。亡霊を背負って行け。 彼は中学校のころからすでに、半座と比べて自分が負けていると感じていたように見えます。半座に空手の世界に立ち入って欲しくなかったのは、自分を守るためだったのかも。 世界が違うなら、勝ち負けが分からないままにできる。自分は奴より優れてると思い込める。 そんな風にごまかしてる自分を見ないようにしていたのが、これまでの彼でした。 けれどきっと、彼はこの試合で何かを得られたのだと思います。負けたからこそ。半座と戦ったからこそ。ここからですよ、彼の空手は。だってまだ一年生なんだ。


まとめ。 今回は主人公である半座を掘り下げた内容となっており、2人の少年の過去と今がぶつかり合う非常に熱い内容となっていました。 というか読んでいてむしろ相手側の結城にも深く感情移入してしまったかもしれません。 172ページの歪んだ笑いといい、最後の無念の表情といい・・・何気にかなりいろんな表情を見せてくれたキャラクターでもありましたが、彼の背負うドラマがなんにせよ魅力的でした。 このハンザスカイは相手校にも「負けられない理由」をしっかりと持たせている作品。 丁寧に、力強く、試合で対決する2人を描いてくれる作品だなと、しみじみ思います。 毎試合異なった試合展開で飽きさせませんし、「燃える」と一口に言ってもその方向性も様々。今回は半座もカッコいいですが、全てを終えた結城にこの巻の真髄を見つけたり( しかしもちろん半座の試合運びもよかった。「ルールのあるケンカ」と空手を例えていますが、そのとおり。これは空手であり、試合であり、ケンカではない。バカ正直に突進することばかりが美徳なのではない。軽やかに横にステップしてからの上段蹴りは爽快! いい感じに少年漫画をやってくれてます。いまかなり好きなスポーツ漫画。 続く7巻もまた熱い展開が続くみたいで、単行本で読むのが楽しみです。 『ハンザスカイ』6巻 ・・・・・・・・・★★★★ 一冊ぎっしりと試合!今回も魅せられましたねぇ。表紙もかっこいいです。