「正直どうでもいい?」

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繋がり響き合う青春模様。 『FULLSWING』2巻

FULL SWING 2 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)FULL SWING 2 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)
(2011/02/10)
武論尊、マツセダイチ 他

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   ナイスアシストだったぜ・・・! ベテラン原作者武論尊先生×ゲッサンデビューの新鋭マツセダイチ先生が送る 一話完結オムニバス青春作品「FULLSWING」の2巻で今回は更新です。 1巻の頃から応援していますが、2巻も安定して良エピソードを届けてくれています。 毎話読み切り形式なのも読みやすくて好きだったり。 では今回も1話ごとの感想なんかを。せっかく作りになっている作品ですし!

5話 早川貴文

1巻収録の第4話の脇役が主人公へと昇格。これがこの作品の基本スタイルです。 自分の恋を押し殺して園田を改心させ、自ら失恋の道を選んだ切ないポッチャリ男、貴文。 そんな彼に突然春の予感!勤め先の介護センターで知り合ったおばあさんの孫である強面ヤンキー少女と、成り行きから友達づきあいが始まるのでした。 貴文は体系からして恋愛ベタキャラっぽさ全開なのですが 非常に気骨のある男性でもあり、曲がったことは許せない強い正義感の持ち主。 口は悪いわ金髪タバコだわなヒロインの杏子は、お金のために祐二に近づいてくる冒頭であまりいい気はしなかったもの、少女らしくかわいい夢を語ったり「女の子」と扱われることに動揺したり・・・と、なかなかな乙女っぷりでテンション上がってしまいました。 ストーリーも2人の新しい関係性を想像させる終わり方もベタですが 黒髪に戻してセーラー服を着た杏子が予想以上に可愛く、気持ちよく物語が締りました。 20110223004825.jpg 普通な格好をするのがまだ恥ずかしいご様子!初々しいー!

6話 伊藤祐二

ある日帰宅すると、家の前にメイドが・・・。 それはアニメのキャラクターデザインを目指すため上京してきた、隣の部屋の柏木美香でした。この漫画でメイドが登場するのはなんだか意外な感じでしたね。 しかしやっぱりストーリー的には青春の苦味が一杯に感じられるちょっと泥臭い内容。むしろギャップでより際立っていたくらいでした。 人生には挫折も付き物。必死に編み出したものを会社に持ち込みに行ったものの「こんなもんかな」と笑われてしまった柏木。涙を流して夢を断とうとする彼女ですが、そこで祐二が放った言葉が熱いです。 誰だって最初は「こんなもん」なのです。そこで折れずに努力を続けられた人が成長できる。立ち止まっては思考しまた歩みを進める。その積み重ねが大切。 互いが互いに良い方向に影響し合っている関係も心温まりますね!

7話 柏木誠

個人的に2巻のMVPはこの作品かなと。 第6話に登場したメイドっ娘の兄が主人公に変わりまして、泣ける青春物語が展開。 突然誠の部屋を訪ねてきたのは、小学校時代の友達、野島明日美。 かつて仲良く日々を過ごした2人ですが、野島が転校しそれっきりになってしまいました。 この時の過去回想シーンがノスタルジック全開で想い高ぶらされますが 野島は元気そうに見える中に暗い影を抱えていて、それに堪え切れなくなっている。 誠の傍が自分の最後の居場所だと思ったのか、重い決意を胸に彼の元へ来たのです。 過去と現代を行き来しつつ確実に物語を盛り上げていき、そしてこの作品では初めての2Pまるまる使った見開きページのインパクト。ラストシーンもラブ的にニヤニヤできました・・・! 物語の展開もよかったのですが、構成が良かったですね。ページをめくる楽しさがありました。 全体通して青臭い「FULLSWING」ですが、その良さが存分に発揮された話でしたね。単純に小学生時代の明日美が非常にかわいかった!という理由もあるかも知れませんが! シチュエーションも凄くクサい。だけどそれが良い。

8話 大西裕希

ここでちょっと切ないフルスイングが読める第8話へ。 自己中心的な恋愛をしてきた大西ですが、恋人から「他に好きな人が出来た」と言われ動揺。納得できずわめき、ヤケになってサッカーもラフプレー連発。最初の彼はただの子ども。 けれどそこから彼は変わっていくのです。自分がすべきこと、大切にすべきことを見つける。 ただの子供でしかなかった大西の成長は胸にグッと来ましたね。 終盤、恋人の千夏にキスを求められるも拒絶されますが、ここで踏ん切りがついたのでしょう。好きな人を幸せにしてあげたい。けれどそれは自分ではもう無理なのだ。遅かった。 そして彼は彼女の手を引いて走り出します。これが彼の「フルスイング」20110223004822.jpg たとえそれで自分が涙を流しても。 人は時に自ら悲しみに突き進む必要があるのかもしれません。彼にとっては今回がそれか。 けれど今回で彼は大きく成長できたはず。ちょっと寂しいですが、いいエピソードでした。

9話 松島奈緒

幼女回ですね。(違います 物語としては女優である主人公松島がバツイチのオッサンに恋をするもの。 しかしそのオッサンの子供であるに仁美ちゃんが可愛いよはぅん! こういう無邪気さで話を和ませてくれるキャラがこれまであまりいなかったので その分仁美ちゃんの存在感はなかなか大きいものになっていると感じます。 20110223004807.jpg ちょっとあざといお着替えシーンもあり、意外と頑張ってくれるじゃないですか「FULLSWING」!喜ぶ方向性が大分おかしい気がしますが! さて普通に物語の話に戻りますと、今回の話は説得力があったなと思います。 松島がオッサンに惚れるのも、オッサンの深く静かなカッコよさがきちんと描かれていて無理がある感じになっていませんでしたしね。 松島が(女性ですが)男気を見せるラストでは、彼女はジャージ姿で登場。 松島が冒頭でお参りした神社は実は・・・と最後に明かされた真相にニヤリとしたり。 もうちょっとページ数があればよかったかなと思いましたが、上手いことまとめられていて読み心地も良好。家族もの漫画な側面もすこしあり、ちょっと新感覚。


ではまとめ。 1巻を楽しめた方なら安心して読める内容の一冊になっていたと思います。 読後感の良い(すこし例外もありますが、それも一興)エピソードが並んでいます。 しかしここまで全ての作品が恋愛がらみではあることにはちょっと不満も。友情モノなエピソードも読んでみたいなーなんて思ったりもします。このままでも十分面白いのですがw この作品で連載デビューのマツセ先生はだんだんと慣れてきたのか、絵も洗練されてきているなと感じましたね。少しずつ絵が上手くなっていっています。成長が楽しみです。 登場人物たちが全力で何かに立ち向かっていく姿を描く「FULLSWING」。 そこには当然失敗も挫折もありますが、だからこそ人生は面白い。 3巻はどこへ繋がっていくのでしょうか・・・! 「FULLSWING」2巻 ・・・・・・・・・★★★★ 良質な青春オムニバス漫画。長く続いて欲しいなと思います。