「正直どうでもいい?」

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木尾士目先生新連載、どう見ても“あの2人”です・・・他『楽園 Le Paradis 』Vol.4

新海誠監督の新作が楽しみ。

楽園Le Paradis 第4号楽園Le Paradis 第4号
(2010/10/30)
シギサワ カヤ日坂 水柯

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   ・・・好きよ・・・だから ・・・もうおしまい。 最近めっきりやらなくなった雑誌感想・・・ですが、楽園はやっておきたいなと。 まぁ正確にはは雑誌ではないんですけども。 「楽園 Le Paradis 」は白泉社より年3回発売される、恋愛をテーマにしたアンソロジー。 今回も表紙はシギサワカヤさんが担当。vol.3では出てこなかった「手」が再登場してます。 美しい夜景と紅いドレスの女性。月明かりが印象的で、ちょっと影になった部分から相手の腕が伸びてきて髪に触れている。イスに片脚乗り上げていたり。これから何が始まるのか・・・。 楽園表紙は一枚の絵に様々なドラマが潜んでいそうで、妄想の楽しみがあります。 毎回女性がひどく冷めた目をしてるのがなんだか刺激的でもあり・・・! 今回も数ある作品のうちいくつかを取り上げていきたいと思います。


愛のけものにしたがいなさい

売野機子先生新作。 この作家さんの学生が主人公&ヒロインの長編というのはちょっと新鮮・・・? 主人公が男色家なのも、ボーイミーツガールとして面白いですね。 恋愛関係に無くてもヒロインがきちんとヒロインになっているのも良い。 今作の恋愛要素はそれほど強いものではなく、未来の可能性の描くものになっていますね。 空白ばかりであることを、恐怖ととるか安心ととるか。 愛したいけれど応えてもらえない。埋らない心の隙間。 それにさっくりあっさり、素敵な言葉を差し出せる主人公のまたカッコいいこと。 ラストの「good naight mster Angel.」が完璧にハマってて気持ちよかったです。 彼女の次の夢は、きっと笑顔になれるもの・・・だと、いいな。 この作家さんの作品は、現代を舞台としたものでもどこかレトロで妙にファンタジックな雰囲気があって、安定感があるようで無い。でも読み進めている時は気持ちいいテンポで、読了後しっかりメッセージが残る。 ああ、好きだなぁ売野機子先生。再確認。

魔法使いの冷酷

二宮ひかる先生の作品。 想い人とセックス出来るが記憶を失うor本当にしたかのような記憶を貰う さて、あなたはどっちを選ぶ?という作品。 あいやー、二宮ひかるセンセの女の子はなんでこう体温を感じるのかねー。 コメディタッチで、オチの仕掛けにもニヤリ。ナイス短編。

spotted flower

新連載。木尾士目先生の作品。 WEBにて公開された第0話も合わせて掲載されています。 オタクな旦那さんと、妊娠中のその奥さんの、まったり&過激な日々を描く本作。 木尾先生らしい空気感と会話テンポは変わらず、何とも微笑ましい2人を楽しめます。 ・・・が、この2人・・・ 20101110020708.jpg なんだか・・・なんだかその・・・・・・くっそー狙ってんな木尾先生!! オタクな旦那、非オタの奥さん。2人は大学時代同じサークルに所属していて、奥さんの元カレも同じサークルのオタクだった・・・と来たら、そりゃげんしけん斑目と咲ちゃんを想起せざるを得ないというもの! そんな設定と合わせて、キャラデザ的にも2人ともどことなく彼らに似ていますね。 旦那さんはヘタレ、奥さんはオタクの扱い方が完璧。 1年近くがんばった子作りやら、安定期とは言え妊娠中の奥さんには手を出さない旦那さん、でも誘っちゃう奥さん・・・などなど、見たいようで見たくなかった、でも見れて最高にハッピーなあの2人の結婚生活!!・・・をなんとなくイメージさせられるこの作品。 単行本化は遠いと思うので、読むなら今のうち。げんしけんファンはチェック。 で、改めてタイトルを見てみます。 spotted flower spot→しみ、よごれ、まだら flower→花 と、spottedは斑目、flowerは咲をイメージさせられます。狙いすましてる・・・! げんしけん好きとしては思わず心掴まされる内容ですが、もちろんげんしけんを切り離しても、げんしけんを知らない人でも楽しめる作品なのでは。 正式にげんしけんの続編だと描かれてるわけでは当然ないのですが ほんのり、どころじゃなく色々匂わせる木尾士目先生の新連載でした 今後、もしかすると他のメンバーっぽい人物も登場するかも。期待です。 ・・・しかし、抵抗ある人も当然ながらいると思います。あの2人は結ばれないからこそだな・・・ブツブツ、って思いは自分にもあります、が、それはそれとして楽しみたいと思います。

想いの欠片

竹宮ジン先生の、がっつり同性愛を描くシリーズ。 今回は前号ラストに登場したブラコン妹ちゃんがメインとなるお話。 同性愛者と、彼らと向き合う異性愛者(ノーマル)の衝突。 あけすけな心のやりとりがされているこの話には、しばしばやたらと刺さる台詞が。 センシティブな話題を真正面から描いている、考えさせられる話ですね。 まぁ難しいことは置いといても、 思わず目覚めそうになってる妹ちゃんの今後が楽しみです。

ディアティア

おかしな風にこじれてしまった3人の仲。 でも想いはどんどん大きく強くなっていく。 上手くは言えないし、出来ないことばかりで、自信だってないけれど。 今回物語がかなり動きましたね。 前の回に桐ケ谷と葉月の関係が危うくなりましたが、今回で修復。 というか修復するまでもなく、2人の絆は確かなものだという証明がされましたね。 そして肝心の成田先輩と桐ケ谷の関係は・・・というところですが 今回ラストでついに、成田先輩やってくれましたよ! あとはまだ揺らぎ続ける桐ケ谷の想いが固まるか、ですね。 1巻完結漫画とするとそろそろ完結が見えてきましたかね。次回は胸熱くなりそう・・・!

14歳の恋

水谷フーカさんの作品。 思春期全開!素朴で微笑ましい中学生カップルの物語です。 今回は2話掲載。第2話は席替え、第3話は夏祭りでの2人が描かれます。 席替えではなんと運よく隣同士に!思わず(心の中で)ハイタッチ! 今回こんな感じの『内なる声』がやたら可愛かったw 20101110020705.jpg と思ったら、後ろの子の事情で田中さんは席を移動。和樹と離ればなれに。 2人の関係は周囲に隠しているものだし、2人とも学校では大人キャラで通っているから この展開はちょっと心苦しくはあるけれど仕方がないもの。 子供のようにダダをこねようとはしないし、出来ない2人。少し窮屈な学校生活。 しかし互いしか知らない1面を隠し持っている優越感はあるし 窮屈感をフォローするために作る2人きりの時間で、彼らはもっと深く結びついていく。 心はどこまで近くに寄り添い続けている。 でも思春期。恥ずかしいから素直に成りきれないこともたくさんある。あー可愛い! 第3話ではおんぶしたい&されたい願望を隠して、もじもじする2人。くっそ可愛い!! 14歳。コドモとオトナのハザマ。 なんだかそわそわするよね、思春期って響き。

すきなひと

日坂水柯先生の作品。 いよいよもって、2人の宙ぶらりんの関係における緊張感が高まってきた。 心通わせ、何度も身体を重ねているのに、なにかを恐がってしまう2人。 でももう限界。『云えない』苦しみを必死にかみしめて、どこに向かうのか。 さーて、そろそろ物語動きそうですよ。次号必見。

Kissing number problem

黒咲錬導先生の作品。前Vol.3の作品も素晴らしかったですが、今回も良いですねぇ! 付き合いだした男と女。けれど交際するにあたり女が出した条件は「Hをしない」。 じゃあキスは?→まぁOK ということで、とにかくキスをしまくる彼氏さん。 男はかなり一生懸命恋愛をしてるんだけど、女側は本当に冷めた表情しかしない。 甘い空気に包まれても、濃密なキスの後でも、ずっとあの目つき。 けれど些細な、本当に些細な行動に、彼女の想いは少しだけ見ることができるような。 真正面から「好き」と言われた後のおかしな目線の逸らし方とか。 でも彼女はずっと、あの見てる方が不安になるような、深い黒の釣り目のまま。 それが崩れるのは、ようやく訪れた2人の夜のこと。 自分のことを「マグロ女」を卑下した彼女は、過去のトラウマを引きずっているみたいだけど、この時間が彼女の何かを大きく変えた。初めて彼のキスに応えた。 20101110020710.jpg 自分から求めること。 恐がらず、立ち向かうこと。 愛を受け止め、愛すること。 至福のラストシーンでは、この先の彼女の幸せな未来を見守りたくなります。 粘着質なエロスは流石黒咲先生。ヒロインは眼鏡無表情ガリ・・・とこれまたフェチっぽい。 毒があるのに甘い、不思議な恋愛を描いてくれる作家さんですね。好きだなぁ。

エンディング

トリはシギサワカヤ先生。今回は女性同士の恋愛。 頼れる上司・漆原。会社の問題児・長谷川。二人が同棲してることは周りには秘密。 けれどただ甘い時間ばかりではなく、たまに衝突したりしながら 生ぬるい日々を過ごしている。 物語は漆原視点で展開。 わがままな子供をあやすように長谷川と付き合っている彼女ですが 自分からあえて堕ちるというか、泥沼にはまって抜け出せなくなる関係を心の底では楽しんでさえいるような感じ。楽しんでるというか、自分を虐めてるというか。 もちろん長谷川のことは好きだけど、彼女自身「迂闊なこと」だとはっきり認識している。 もともと世話焼きな正確なんだろうけれど、読み進めるたびにちょっと違う風にも見えてくる。 文句はたくさんあっても、現実に離れようとはしない。 長谷川もそれがわかってるから、わざと困らせてるようなそぶりが見える。 漆原は長谷川が自分に甘えてくるような捉え方をしているけれど、 実は甘えてるのは漆原も一緒なんだろう。 わがままを言われることに、要領の悪いことをするのにイラつきながらも、そんな長谷川さんを愛しく思ってることが分かる。求められてる自分に酔ってるようでもある・・・。 居心地の悪さも、確かにある愛しさも、ぼんやりした温もりに溶ける生活。 けれど。 20101110020642.jpg 答えの見つからない、恋愛のかたち。 釈然としないまま歩み続けるには、彼女たちは脆すぎた。 最後の夜、長谷川にもたれかかるように言葉を零している漆原の姿は子供のようで でも彼女の決断は悲しいほど大人だったりする・・・。 外的要因が無ければ漆原はさよならを言わなかったかと言うと、そうでもないような気も。 どっちみち真面目な彼女は、どこかで堪え切れなくなってしまったと思う。 今も昔も、漆原の「大丈夫」には変わらず安心感がないのだけれど もしかしたらその言葉の裏を知っていたのは、長谷川だけだったのかも知れない。 長谷川を失った後も、彼女は変わらず「大丈夫」と言い続けている。 傷の癒えないまま、熱を宿らせたまま、恋をしたまま。 擦りきれそうなほど切ない恋愛衝動。 これだなー、ここれですよ。流石です。大好きです。 シギサワさんの描く恋愛は甘くてシビアで、非常にセンチメンタル。 しみじみ、人間って面白。


Vol4、刊行スタートから1年が経過しましたが 雑誌のコンセプトがちっとも揺らがず、高いレベルを維持してくれている良アンソロ本。 今後とも独自の方向性を貫いていって欲しいですね。 次回、Vol.5には新たにKashmir先生、志摩時緒先生が登場予定。2月発売。 ヘロヘロになるまで恋愛を楽しもう。これぞ、楽園。楽園 Le Paradis 』Vol.4 ・・・・・・・・・★★★★ 高品質を保ち続けている恋愛アンソロジー。良い作家さん揃ってます。