「正直どうでもいい?」

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子供の世界を往く 『マイマイ新子と千年の魔法』

飲み会行きました~。やー、あそこまでいったのは初めてですね。楽しかったです。 本題。 5月1日、映画「マイマイ新子と千年の魔法」を見てきました~。 去年公開されたものあまり宣伝しなかったので客が入らずそのまま終了かと思いきや 見た人からの口コミでどんどんと評判が広まり、ロングランを記録している作品です。 自分は浜松の市民映画館で観賞しました。 これは映画を見て感動した有志の方が映画館に直接掛け合って実現した公開とのこと。 それだけ人を動かすだけのエネルギーが、この作品には満ちていると思います。 舞台は昭和30年代前半。今から55年ほど前の、山口県防府市。 小学3年生の新子は、おでこにあるつむじ(マイマイ)のせいで前髪が立つのがコンプレックス。 ある日東京からの転校生・貴伊子がやってきた。 最初はぎこちなかった2人は、やがて空想遊びで絆を深めていく。 友達も増えて、みんなでちょっとしたダムを作って遊び始めたころ そこに小さな赤い金魚が住みつく。みんなはそれをかわいがりますが… 結論を先に言うと、大人のための子供映画。 それは昭和への古臭い懐古主義などではなく、もっと素直な…うーん難しい。 少年時代を思ってすこし切なくなる、でも前向きにあったかい気分になる。 別に激しいアクションあるわけでも衝撃な展開があるわけでもありませんが とにかく、静かな興奮と郷愁をもたらしてくれる。 まっすぐ大きな、「子供たち」を描いた作品です。 そしてところどころに映される「大人」が、それを引き立てるように対比されます。 1つ目は感じ方の違い。 貴伊子が引っ越してきたとき、彼女の父親と現地の男性との会話の中で 「なーんもない町ですがね」と話をしたように思います。 大人にとっては、不便でつまらない、小さな田舎町。 一方子供たちは川で遊び山で遊び畑で遊び、町を駆け回って遊びまわります。 そして新子は、いなくなった妹を探すシーンで山から町を見下ろし、呆然とします。 広すぎる。 この小さな体で走り回るには、あまりも、広い。 恐怖にも似た現実感は、子供たちのすぐそばにあり続けます。 なにせ知らないことが多すぎるのですから。 2つ目に、大人への憧れと侮蔑があります。 例えばひずる先生。勝手な期待と勝手な落胆。ある意味残酷な子供たち。 そして妹を探し出して、剣道の素晴らしい腕を披露してくれたタツヨシの父さん。 しかし彼は、大人としてのトラブルに巻き込まれ、自ら命を絶ちます。 子供たちをつなぎとめていたのは、大人への憧れ。 それは簡単に崩れ去り、嘲りへと変わる。 やりきれなさを抱えた子供たちは揺らぎ、そして走る。大人の町へ。 そこで見えてきたのは、父親の新たな顔だったのです。 見えなかった一面。見せようとしなかった、あるいは見ようとしなかった一面。 それから後も見事。大声でわめきながらレトロな歓楽街を走り去りますww まわりの大人たちは迷惑そうな顔。でもそれでいいのです。 大人しか知らない世界があるように、子供にしか見えない世界があります。 遊びを教えられる親になろう。そのためには今たくさん遊ぼう。子供を楽しむんだ。 そう決意して、子供たちはひとつ成長をする。 ここで不覚にもホロリ。俺の涙腺は基本ユルい。 大人になるということで、子供たちだけの幸せな世界の終焉を暗示させるような感じ。 でもそれはしょうがない話でしょう。だからこそ、遊びを教えられる、遊びを知っている大人にならなくてはならない。そういう決意。 しかしメインは新子と貴伊子の友情物語です! この作品は現代の田舎風景と、千年前の風景がシンクロする描写がもっとも特徴的。 主人公新子が生み出した空想に貴伊子は戸惑いつつも、彼女もまた空想に嵌り込みます。 2人でひとつの世界を共有する、というのがやはり印象的ですね。 彼女らは何気なく想像します。 もしかしたらここには、お姫様もいたのかもしれない。 そのまま2人は千年前のお姫様に夢中になっていきます。 友達のいない姫さま。新子は夢でそれを見て、涙を流しましました。 貴伊子は自らが姫となり、女中の少女と新たな友情を生み出します。 新子の空想は貴伊子へとつながり、完成したのです。 そして新子と貴伊子が離ればなれになっても―――― 20100502134416.jpg ちなみに彼女たちがした空想は、現実にありました。 約1000年前、その町には一人の高貴な少女がいたと実存する資料にあるのです。マジで。 その少女はやがて成長し、いつのまにやら物書きになったそうです。 書いた随筆は今なお知名度の高い作品として知られています。 彼女もまた、空想したりするのが好きな人だったのでしょうかね。 随筆とはいえ、それはやはり想像力、憧れの強さから生まれるのが文章ですから。 そのへん考えれば考えるほど上手いなぁとう感じですw 1000年前の空想世界と現実はなんの関係もないはずなのですが 時を越えてつながっているような描写も多く、神秘的で面白かったです 1000年前の姫様が川へ落とした紙が、流れ流れ金魚になり、子供たちをつないだり。 人間の想像力には、それだけの力があるということでしょうか。 そういうことを考えると、その物書きの女性の存在感が一層深まりますね。 新子と貴伊子、二人で演じ作り上げた、無邪気な少女。 やがて成長し、有名な物書きとなりました。 その女性、名前を清少納言と言ったそうです。 最後に単純な話、映像美。 揺れる一面の麦畑。 用水路を流れる透明な水。 澄みきった夜空と、浮かぶ天の川。 ひゅー…自分で書いててたまらない気分になってきました…。 トトロとかの田舎生活描写が大好きな自分は、ご多分に漏れず本作もドストライク。 とくにラストの天の川は圧倒的。映画館だとものすごい迫力でしたね。 麦畑から見えげる青空も素敵でした! 2人の少女を主人公に繰り広げられる、少年時代を綴ったやさしい映画。 この映画を100%味わうには、自分はまだ若すぎるかな。 いやいや、関係ないか。 まぁとにかく、老若男女みんなにお勧めできる、素敵な映画だと思います。 かなり満足できた映画です。 気になっている方はぜひ劇場で! 念願のDVD化も決定しましたが、監督の言うとおり、これは劇場アニメなのです。 あの空をでっかく味わってほしいです。


…で、実は5月1日は片渕須直監督の握手&サイン回もありました。 これも参加できてうれしかったです! 20100502132037.jpg 以上、「マイマイ新子と千年の魔法」感想でした~。 やはりアニメ映画はいいですね。テレビアニメは見るの時間かかりますし。