「正直どうでもいい?」

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ミリオンライブのアニメ化に向けて初心者におすすめしたいミリシタMV10選

 

 

アイドルマスターミリオンライブ アニメ化おめでとうございます!!!!! 

 

 

 

 

念願の、というのがこれほどふさわしいアニメ化プロジェクトというのも近年珍しい。デカめのコンテンツはだいたいアニメ化ありきのメディア展開をされていくので。

私は「シアターデイズ」の事前登録からミリオンライブに触れました。

そこから過去のライブBDもひとしきりは集め、現地ライブへ赴く程度にはどっぷりとハマっていくことになります。

グリー版をプレイしたことがないのが悔やまれますが・・・いやでも、ミリシタの魅力はすごい。そもそもアイドルマスターというコンテンツにほぼ触れてこなかった自分がミリシタを始めたことでアイマス全体にハマれたわけで。


ミリオンライブは閉じたコンテンツであるかのように語られることもしばしば。
「他のアイマスは知ってるけどミリオンはどんなアイドルがいるのかも把握してない・・・」というようなこともきっとあると思います。

そこで、ちょうど知人にミリオンのプレゼンをする機会もあり、そのたたき台としても本記事を書きました。
ざっくり10曲くらいのミリシタのMVを見て貰えれば、ミリオンライブの魅力のようなものを触り程度には掴んでいただけるのではないだろうか、と。

ミリシタのMVは素晴らしいクオリティを連発しており、ゲームとしてたのしいだけではなく観賞に足る魅了を備えています。

 

ようは

アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ(略してミリシタ)」という音楽ゲームアプリをこれから始めてほしいんだ、っていう記事です。

 細かい部分はさておき、MVの良さ、曲の良さという点から触れていきたいと思います。

 

 

 

Glow Map

ミリシタ3周年記念楽曲。現状限りなく「最新」と呼べるナンバーです。

ミリシタの大きな特徴として「歌い分け」とよばれる、歌唱メンバーやパート分けを自由に編集できる、という点があります。
好きなアイドルで、好きな組み合わせで、好きな歌詞を歌ってもらえるということです。オリジナル音源とオリジナルMVを作れるんです。唯一無二の強力な要素。

ミリシタをプレイしているとこの凄さを凄いと感じづらくなってくるようなときがあり、それはもう完全にマヒしているワケですが、改めて考えるとめちゃめちゃ贅沢なんですよね。
歌い分け対応楽曲はほかにもたくさんあり、中には5人歌唱どころか13人モード、39人モードなんてのもあります。39人がステージに上がってダンスします。コンシューマゲームか?とんでもないデータ処理が必要と思われ当初はスマホが火を吹くと言われていましたがスタッフ曰く「試しにやってみたらできた」という謎技術。まじ?

 

楽曲「Glow Map」も、そもそも素晴らしい。

しっとりとしたミディアムテンポのイントロ、眩しさを感じさせる美しいメロディのAメロ、そこから緩やかに加速していくBメロ後半、からのサビ!グングンとスピードを上げていく構成があまりにも気持ちいい。

上記の動画は5人バージョンなので、アイドルごとの歌声の個性も比較的つかみやすいのではないでしょうか。過去の周年曲も素晴らしいですが、今回のGlow Mapはとにかく各アイドルごとの色が歌声にハッキリと出ている。終盤に「行ってきます!」というセリフが出てくるのですが、ここの表現もアイドルによって千差万別。

歌い分け楽曲は1人を選んでソロ歌唱を楽しむこともできます。気になるアイドルを見つけられたら、その娘のソロ歌唱を楽しむのもまた最高のコンテンツ。

MVとしても「きっとあったはずの7thライブ」の奇跡をここにパッケージングしている。夕方から夜へ、シアターを飛び出した野外ステージ。何度見てもグッとくる。

 

 

百花は月下に散りぬるを

 2020年1月実装のイベント楽曲。

和ロック&スカな風味のサウンドでテンポいいナンバー。曲も好みなのですが、この曲を2番めに上げたというのはやはりMVとしての完成度が抜群だってことです。

和をモチーフにしたゴージャスな舞台。スピーディかつ細やかなダンス。扇子をはじめ印象的に光を取り入れたステージ演出……。毎月実装されるイベント楽曲としていつもどおりに実装されたのですが、初見時は「ミリシタってここまで表現できたんだ!?」という驚きと喜びがありました。ワンランク上のステージに到達したかのようなクオリティ。ダンスモーションのキレの良さにひっくり返っちゃった。

加えて凄まじいのが、ノーツでその振り付けを見事に表現しプレイしながら一体感を味わえるよう作られているということ。

 

 

解説動画。振り付けのタイミング、音がなるタイミングでピタリとノーツがハマってくるので実際にプレイするとこの気持ちよさが分かってもらえるのではないでしょうか。

MVの完成度もさることながらこういった部分で一層没入感が上がる仕組みを狙ってくる。ミリシタくんの丁寧な仕事ぶりとして好きなポイントです。

 

昏き星、遠い月

 

いわゆるMTGと呼ばれるミリシタ先行のCDシリーズでも異色作。ミリラジでMVをみたときの衝撃は忘れられない。

ダークで耽美な世界観でミュージカル調の一曲で、現在でもMVは最長。イベント周回にはまったくおすすめできないけど、なんか変なことをやってるということだけは伝わるんじゃないかと思います。

ミリシタが上昇気流に乗ったMTGの先陣をきった作品でもあり、ここからいまのミリシタの飛び道具的な遊び心が増えていきます。

ちなみにMTGシリーズはかなり作り込まれたドラマパートがCDに収録されており曲の世界観をより味わえる作りになっています。

中でもこの夜想令嬢のドラマはファンが多い印象。そして6thライブでは演者によって20分近くぶっととしのミュージカル形式で披露されました。

シアターで、ステージの上で歌って踊るというミリシタの個性の象徴とも呼べる存在感を放ちながらも、いまなお孤高。

 

花ざかりWeekend✿

 

同じくMTGシリーズから「娘。」ライクなパーティチューン。圧倒的な女性人気を獲得してネットでもかなり話題となりました。これだけ知ってる、という人も多いのかも。

 

女性Pにぶっ刺さる、というか社会人P全体にぶっ刺さるのでは?アイドルソングを越えて社会人応援ソングとしても強すぎる。鬱屈した日々も、思い通りにいかない自分も、なにかきっかけさえあれば世界ごと変わっていけるような予感に胸が踊ってしまう。

 

終業のベル(ジリリ)

めくりめく変身

モブキャラから主人公

きらめく世界へ まいりましょう

 

普通の日々を送るOLがセレブパーティに参加し華麗なる夜の主役になる……これはもう歌詞も曲も天才的。ユニットメンバーも大人組で構成されています。じっさい社会人経験のあるメンバーもいるのでこの曲との親和性が尋常ではない。

一夜ひとときの花盛り。日常を戦う女性たちが、ここぞとばかり咲き誇る、このワクワク感よ。

 

ラスト・アクトレス

シンデレラガール総選挙のような人気投票はないミリオンライブですが、一風変わった投票企画が存在します。あらかじめ設定とキャラクター設定のみ公開され、プロデューサーがその役に合うアイドルに票を投じるキャスティング企画です。

 

ラスト・アクトレスは「劇場サスペンス」テーマの投票企画から生まれた楽曲。
当時シアターへの合流が遅れていた田中琴葉(CV.種田梨沙)をめぐり投票次点から盛り上がり、イベント曲として実装された時にはそれまでのイベント記録をはるかに超えるボーダーを叩き出し伝説のイベントと化すなど、様々なドラマを産んでいます。

とはいえそんなバックボーンを知らずとも楽曲もMVも個人的にメチャメチャ好き。R・O・Nを信じろ。

腕をひらひらと泳がせたり、首をかき切るような手つきを見せたり・・・

不穏なアクションを細かく見せてくる振付。スリリングな展開の曲と相まって、忍び寄ってくるような迫力が見事に表現されています。バーストアピールで客席の光の海へ落ちていく演出は、ぜひ見ていただきたい。

 

 

 探偵が指を突きつけて、直後・・・。

またこの曲は初出がミリシタではなくミリシタ感謝祭というリアルイベントでした。当時の映像も残っていますのでMVを見比べてみるのも一興。
 

dear...

各アイドルにソロ曲がすでに3曲ずつ存在するのはミリオンライブの強みでしょう。(ミリシタからの参入アイドル2名は2曲)

中でも馬場このみのソロ曲のこちらは、2014年リリースとコンテンツ初期のナンバーでありながらいまなお楽曲人気トップを争うレベルの伝説的な曲。ソロ曲として突き抜けすぎてるので、デレで言うところのHotel Moonsideに近いところがあるかもしれない。

アイドルソングとしても一級品だしキュートかつ切ない印象をつよく残していく歌詞も見所。

MVはあえて言われないと気づかれにくいけれど「ワンカット」です。アイドルのライブ映像としてそんなの現実ではほぼあり得ない、けれども巧みなカメラワークや演出、アイドルの表情とその写しかたでまったく違和感なく見終えられてしまう。

こんな名曲をこんなカメラワークで、しかも好きなアイドルで楽しめるというところの凄み。

 

 

 In The Name Of。 ...LOVE?

 

続いてもソロ楽曲。アイドルは真壁瑞希。ポーカーフェイスななかに熱い気持ちを秘めている彼女による初々しいラブソング。これはもう単純に歌が最強なので聞いて。

ポエトリーリーディングのようなAメロでは歌詞の内容にあわせてゆったりとした振り付けをしていくのですが、「どきどき」の箇所なんかでは逆さまのアングルになったり、見ている人をどんどんと誘い込むような仕掛けがたくさんあります。

一気に曲調がかわるBメロ部分、そしてサビ直前の「……らぶですか?」の突然の上目遣い。細かくフックをもたせているMV。不思議と何度みても飽きないんだよなぁ。

 

 彼女はすでにソロ2曲目もミリシタ実装されています。 

Silent Joker https://www.youtube.com/watch?v=BCv05d6CQN0

こちらもよろしければチェックのほどを。

 

 

ハーモニクス

これは完全に趣味。オルタナティブな香りの高いデュエット曲。前述の「花ざかり」と同じく、ミリシタプレイヤー外を突き刺すだけのリーチのある仕上がりだと思います。

一聴して分かる通り、この最上静香とジュリアというアイドルは生い立ちはもちろん目指す方向性もパーソナリティも歌声も、同じものを共有しているとは言い難い。ただし歌にかける情熱だけは確か。そのユニゾンの美しさと攻撃性はこの曲にもつよく現れているように感じます。濃密な”感情”をゲーム内コミュやMTGドラマパートで楽しむのも良き。ミリオンライブのセンターが先陣きってこのユニットの限界オタクをやってくれているので心強い。

MV的にはやはり赤と青の切り替えが印象的な演出と、なによりスタンドマイク!世代的にはNaNaを思い出させられる衣装もツボofツボって感じ。歌唱力オバケふたりがバチバチに歌声でバトルしだすライブバージョンも良いですね。

 

Princess Be Ambitious!!

 

うおお、めっちゃピンク!こちらは属性曲と呼ばれるシリーズの1つ。ミリシタではプリンセス/フェアリー/エンジェルの3属性があり、いわゆるキュート/クール/パッション的なものです。こちらは曲名のとおりのプリンセス感ドライブ全開で飛ばしてくるので振り落とされるなよ!って感じです。

ちなみの前述の「花ざかり」と新田目翔さんの担当曲。ミリシタにおけるキラーチューン製造マン。

ダンスはかわいらしくもかなりのカロリー消費を誇るであろうことは見ての通り。小気味よいリズムに聞いていてつい体を揺らしてしまうような圧倒的なハピネスが詰まった一曲ですね。

歌詞にも注目。ここでいうプリンセスとは守られる可憐な女子ではない。

己をみがき、高めあい、強く凛々しく美しく!さながら戦士のような迫力をもって、けれどとびきり可愛らしく歌い上げてくれるのです。

極めつけはMVには登場しないのですが、フルサイズ大サビ直前のこのフレーズ。

 

白馬じゃなくたって平気よ 王子様

 

完敗。夢見るだけじゃなく、未来も運命も掴んでいけるはずだ。

 

 

UNION!!

 

ミリシタのオタクはこのイントロを聞くと天を仰ぐという習性があります。(そうか?

ひとつの到達点。シアターデイズ1周年記念として実装された一曲。

楽曲のクオリティ、歌詞、MV、ライブでの破壊力など、ミリオンライブの中でも突出したメッセージ性と存在感を持つ曲になっているように思います。


個性(ちがい)を分かりあうことで(となりで)
無限大に 分かちあう世界
流した汗と 涙が "ひゃくまんパワー"
アコガレだって超えられる
この歌声がUNION!!
この歌声がMILLION!!

まず歌詞。これだけでもう泣けてしまうんですけど、とにかくアツいサビで歌われるこのフレーズひとつひとつがあまりにも「ミリオンライブ」を表していて、青春感やチーム感や目指すべき憧れやブチあたってきた苦難などが一挙になだれ込んできて涙袋がタプタプしてきてしまう。

この歌声がユニオン!この歌声がミリオン!の叩みかけがあまりにも強い。

そして終盤ラスサビ。

旅路は 果てしない
夢路に 終わりはない
きみと(きみと)
UNION!!(UNION!!)

ひとりじゃ 届かない
ひとりも 手放さない
行こう (見よう)
MILLION!!

ヒィン・・

ひとりじゃ届かない。ひとりも手放さない。ミリオンの姿勢はここに詰まっています。

 

MVとしてもかなりイカれていて、歌い分け対応曲ということはもちろんですが属性対応もしています。ユニットに含めたアイドルの属性によって振り付けがかわったりライトパターンが変わったり、どうしてそこまでやるんだよとこっちが逃げたくなるような作り込みがされています。マジでいくつパターンがあるんだ?億じゃきかないはず。

 

初の周年イベントということで走り方の加減がわからないプロデューサーも続出、そして運営側もそれにストップをかけられないまま熱狂の嵐は続き、Pの体力と石を燃やし尽くしていったことも有名。中には入院にまで至ったPもいたとか。UNION!!が宿すドラマのもう一つの側面。以降のイベントにリフレッシュタイムが設けられるきっかけを産んだ、血塗られた歴史である。

 

 

 

 

 

以上、ざっと10曲分のMVでした。もし初めて見るという人が楽しんでいただけたのなら幸いです。

 

また現在 「765PRO DIGITAL LIVE THEATER」略してデジシタと呼ばれるまったく新しい投票企画も始まったばかりです。

https://milishita-3rdanv.idolmaster.jp/digital_theater/

Pが「コレだ!」と思う曲を投票し、ミリシタMVをつなげたひとつのライブ作品を作り上げようという企画です。 現時点の枠は16曲分。

いやこれ・・・・・・自由にセットリストを組んでライブやっていいよって・・・こんな妄想はかどる企画あります?これヤバいオタクがSNSとかSS創作とかでオリジナルセットリストを書いてんのとまったく同じじゃん。俺たちの妄言を現実にするまたとないチャンス!テンション上がるしかないでしょ。

残念ながらミリオンの7th、アイマス初の野外ライブは中止となってしまいましたが、その気持の受け皿としてこんな企画を用意してくれて感謝しかないですね。感謝しかねぇよ。

 

今回はMVを中心にミリシタを紹介しましたが、豊富すぎる衣装、異常に早い楽曲追加ペース、かぶりのストレスゼロのガチャ体制(いわゆるキャラ整理の必要なし)、AP消費サクサクかつオートライブでながらプレイも簡単・・・などなど、などなど・・・驚くほど快適にプレイができる音楽ゲームです。
最近はちょっとメンテも増えてきましたが、ホスピタリティある基本姿勢は作品に愛着が持てる理由のひとつになりえる。あと楽なので"サブ"のゲームとしても空き時間に落とし込みやすい。

アニメ化ですこし気になりだしたような人にこそ触れてみてほしいですね。

 

 

最後に最高のGlow Mapをお聞きください。

 

 

 

 

 

 

 

 

WordPressから引っ越しました

 引っ越してきました、「正直どうでもいい?」というブログをやっている者です。

前世はWordPress、前前世はFC2、前前前世はなんでもトリビア掲示板(ユーザーたぶん10人くらい)です、よろしくお願いします。

漫画やゲーム、最近ハマってる短歌のことなどを書いていくと思います。

 

 

ひとまずデータ移設してブログ開設まで慌ただしくやってこれを書いているので、過去記事の体裁の整えたりアレコレ設定をいじるのはまた後日として……直近で書きたい記事もあるしとりあえず挨拶だけでも書いておくかという感じです。

 

いや~WordPressのブログですが、理由はよくわからないままに突然ブログ消されてしまいました。

1週間くらい放置して久しぶりにログインしてみると、様子がおかしい。過去記事も見れないしアクセス解析もエラー状態。停止中とのメッセージ。サポートに問い合わせると半日もせず返信がありました。

 

Your site has been suspended for containing content that we consider to be spam or machine-generated content. We define this as content created with the primary purpose of mass solicitation, directing traffic to third-party sites, or excessive automated posting.

Content that falls into these categories includes, but is not limited to, advertising and promotional content, duplicate content, and content written primarily for gaming search engines. This is a violation of our User Guidelines and Terms of Service, and as such, your site will not be restored.

 

「スパムコンテンツが大量に発見されたんや、ブログは復活できんスマンやで」ということらしいですが、まじで心当たりがない……。

最初は過去記事のR-18関連が抵触したのかと思っていたのですが、スパムって。(理由がわからないのでもしかしたらはてなでもそのうち同じように消されるかも……)

もともと記事データのエクスポートすらもできない状態だったんですが、メールで依頼することでエクスポートできるようには手配してもらうことができました。

しかしまぁスパム認定したサイト相手にきちんとメール対応してくださったのは流石という感じですね。

 

WordPress、無料プランでは思うようなカスタマイズもできなかったのでやや使い勝手の悪さは感じていました。有料プランは対個人用でも高いし。更にここにきてブログを釈然としない理由で消されては……ということで3代目のブログをはてなに立ち上げました。

 

それにしても、自分がはてなでブログを書くとは、という感じですね。

FC2で最初のブログをやっていたころ、同じように漫画レビューを書いていたサイトにはてなブロガーさんも多かったので、かなり意識していたのは確かですが。いざお試しでブログを立ち上げてみたらかなりシンプルにつかいやすい機能が揃っている印象。

Google BloggerやOwndも少しだけ試してあんまりピンとは来ず。次はnoteにしようかとも思ったんですが、あちらは長文を投稿できるSNS的な感触でサイトレイアウトも自由には触れないという所ではてなを選びました。

細かい部分はまた調整していきます。

 

まぁ、そんな具合で、また思い出したときにでも記事を書いていくと思いますのでよろしくお願いします。

 

 

 

 

youtube貼りテストです。Glow Mapを見てください。

 

読み解きエッセイ、あるいは解釈バトルへの手引『ぼくの短歌ノート』

 

  ぼくの短歌ノート (講談社文庫)

短歌ってなにがおもしろいんだ?

と改めて考えてもよくわからない。昔から広告のコピーなどを覚えたりどんな狙いがあるのかと裏を考えてみたりするのは好きだったので、その延長のようにも思う。

あるいは定形のなかでの様々な表現の模索だ。

5・7・5・7・7、合計31文字。そのルールはあるものの、狙いによってはあえてそこから外れてみたり、区切りよくすることもできるけどあえて句をまたいでテンポ感を変えたり。 愛唱性、いかになめらかに心地いい日本語であるか。あるいは違和感のスパイスによって魅力的になるか。

加えて「私」を強く出すことが求められる土壌も、個人的には読み応えのある文学だと思う。

とまぁ面白く感じるポイントをなんとなくは認識はしているものの、じゃあ一首を前にして「この歌をどう読む?どこが魅力?なにを面白いを感じる?」と問われても99%たじろぐばかりなんだよなぁ・・・

 

 

そんな迷える短歌ビギナーあるあるとして、やはり短歌界のほむほむことレジェンド穂村氏の解説本を大量に摂取したくなる。

氏は歌人だが、出版しているのは歌集ばかりではない。 いまはエッセイ本と、今回取り上げる短歌評論系の本をおおく手掛けられている印象。 ベスト盤的歌集「ラインマーカーズ」を読んで感じた、その軽妙な語り口から繰り出されるロマンテイックで複雑怪奇な世界観。 けれど短歌の初心者に向けた指南書であるとか、あるいは批評、もしくはエッセイのなかにもそういった穂村エッセンスは強くきらめいている。「勉強になる」というよりマジのマジで楽しく読めちゃう魔力があるんだよな。

 

穂村さんの短歌指南書・評論は複数読んだけれど、個人的に一番ハマったのがこの「ぼくの短歌ノート」だ。 (「短歌の友人」は専門的な部分も多くで、やや難しかった。。

 

ノートというだけあって、穂村さんが好きな歌を紹介していくのだが、 「この歌のここがすごいなぁ」から入り、 「どういう意図と技術がこの歌を特別にしているのだろう」という分析の流れが徹底されている。 穂村さんの思考をたどってたくさんの短歌を味わっていくうちに、歌の良さを共有できてしまう。そして短歌そのものへの興味がどんどん上がっていくのだ。 評論というと硬いが、自然な話運びでエッセイ本のようにサクサク読める。

 

いわゆる名歌と呼ばれるような歌を目の前にしても、 「魅力がどこなのかわからん」 「技術的にどうすごいのかサッパリわからん」というケースもかなり多い。自分がまさにそうなのだが。

例えば与謝野晶子の『みだれ髪』に納められている有名な歌 「やははだの 熱き血潮にふれもみで さびしからずや 道を説く君」 これひとつにしたって、味わうにはいろんなバックボーンを理解する必要もあったりする。

あの時代の女性がそもそもどういった状況で、 歌人としての女性がどのような作品を残していて、 与謝野晶子がどのような人生を歩み、どんな状況かでこの歌を生み出したか―――

そのまえに、学生時代の不勉強があだとなり 「そもそも"さびしからずや 道を説く君"がなに言ってんのかわからん😢」

という初歩の初歩の問題にブチあたることも数多い。それは俺が悪い。 現代短歌ではなく旧仮名でうたわれている歌や、和歌の領域になってきたらもうお手上げ。そもそも音読できねぇんだよ俺はよ。どんな言葉遊びが隠されているのか、比喩を重ねてるのか、もう古文の授業みたいな解読はまずひとりでは楽しめない。

そういう、もう、元の子もない状態からでもこの本を読んでると短歌が楽しめる脳みそにされてしまう。それだけ懇切丁寧なリードをされている。

さらに言えば歴史に残る名歌や有名歌人の代表歌だけではなく、ひっそりとたたずんでいる歌、 いわばプロによる作品でもない路傍の一首を拾い上げ、その歌の隠れた魅力を暴き出していく。いや、もしかしたら作者の意図以上に拡張してあじわっている部分もあるかもしれない。

歴史的背景も作者のパーソナリティもまっっったく知らないで触れた一首に心射抜かれることだってあるわけで。

むしろそういうプリミティブな感動にも、この本は強いリスペクトを持って体当たりしてくれている。 そもそも短歌は新聞歌壇もあったりアマチュアのすそ野がすさまじく広い文学なんだよな。

紹介されているものをいくつか引用する。

したあとの朝日はだるい 自転車に撤去予告の赤紙は揺れ(岡崎裕美子)

容疑者も洗濯をしていたらしいベランダには靴下揺れる(下岡昌美)

美しい断崖として仰ぎゐつ灯をちりばめしビルの側面(大西民子)

最後だし「う」まできちんと発音するね ありがとう さようなら(ゆず)

永遠に忘れてしまう一日にレモン石鹸泡立てている(東直子

潮騒』のページナンバーいずれかが我が死の年あらわしており(大滝和子)

いま死んでもいいと思える夜ありて異常に白き終電に乗る(錦見映理子)

一目で「うお!この歌好き!」となるファーストインプレッションから 「この技法、リズム感、メッセージ性、強え!」という感想にステップアップできるのは本当にありがたいし、めちゃめちゃ楽しいです。 その歌のどこに自分が惹かれたのかをきちんと言語化される快感がつねに続く。あたらしい発見の連続。「やははだの 熱き血潮にふれもみで さびしからずや 道を説く君」だって、小難しいのはさておきこの歌めっちゃいい事言ってない?カッコよくない?

この本を読んで初めて知った短歌というのも本当にたくさんある。 単純に素敵な歌との出会いをもたらしてくれる意味でもかなり身になる。

 

 

 

余談だけど、初心者から見ても穂村さんがたまに飛躍した解釈をするときもあって 「短歌はどんな自由な発想で読んでもいいんだ!」という気持ちにさせてくれる。 そしてそういうのも面白さだとつくづく思わされる。

別にこの本はその歌の正解を教えてくれているわけではない。 ただ、穂村さんというプロの歌人の読み方や味わい方を知れる。あくまでも例にすぎない。別に「俺はこう思ったんだけどなぁ」なら別にそれでもいいんだな。

これは漫画や小説、音楽でもどんな物語でも思っていることなんですが 作者が込めたメッセージを正しく受け取ることだけが正解なのではなく、 偶然その作品が宿してしまった運命のような魅力だって、間違いなくあるる。

例えばいま世界を大混乱させている新型コロナウィルスを経て世界は変容し、 2020年以前とは2020年以降では、まったく違った味わい方ができるようになった作品もある。 「天気の子」のタイミングは、まさに運命としか思えないほど神がかってましたね。

個人の体験の有無によって解釈が違うことだってあるかもしれない。 短歌はたった31文字しかないのに、そこで解釈バトルでバチバチやれるなんて楽しすぎるよな。

アイドル解釈違いでnote書くやつ。短歌を読め。

 

 

穂村さんの本、たくさん買って少しずつ読み進めているのでいったんここで読み終えた本をまとめておく。

評論系「はじめての短歌」「しびれる短歌」「短歌の友人」、

エッセイ「もうおうちへかえりましょう」「鳥肌が」「もしもし、運命の人ですか。」「現実入門 ほんとにみんなこんなことを?」「ぼくの宝物絵本」

このほかにあと文庫本5冊くらい積んでるので、はやく読まないとな・・・

 

 

ぼくたちはこわれてしまった『中澤系歌集 uta0001.txt』

以前、かなり散文的に好きな短歌を書き並べた更新をしたが →https://inmsazanami.wordpress.com/2020/01/20/tensyoku_tanka/

そこでも書いた中澤系さんの歌集についてもう少し深堀りしてみる。

短歌はここ最近ハマったところ。まだまだ多くの歌集を読めているとはいい難いけれども、この歌集は特に印象深い。

  中澤系歌集 uta0001.txt

 

「生きづらいこの世の中」を31字に表現した、天下一品の歌人の唯一の歌集。

どこで知ったのかというと記憶はあいまいだが、たしか「ねむらない樹」だったかな・・・と思い読み返した。

そうだ。vol.1の「新世代がいま届けたい現代短歌100」に取り上げられている。毎号たのしみにしてます書肆侃侃房さん・・・・。

加えて穂村弘さんの短歌入門書をいくつか読んだ中にも、中澤系さんの歌を多く目にすることになった。特にこの歌については様々な本で繰り返し言及している。

 

3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって

 

一読してヒヤりとさせられるような感覚はないだろうか。 個人的にも、1度読んだら忘れられないくらいのインパクトと覚えやすさだと思う。

「理解できない人は下がって」というフレーズの冷たい響き。そして耳慣れた駅のアナウンスなのに、どこか悪夢のようにねじれた世界観。

電車が通過する際、アナウンスはもちろん「黄色い線の内側にお下がりください」だ。 だがこの歌においてはなにかを「理解できない人」は下がるよう、その声は投げかけられる。 生命の危機を回避するためではない。 理解できない人。ルールを知らない人。なにも考えずに駅のホームに立つ人。 そういった人間を遮断するかのように。 そうすることで安全な社会を得ている。安全を仕組まれたシステムによって。

じゃあ「理解できる人」は? 下がらずに、前に進み続けるのかもしれない。時代とともに。 そしていつか轢き殺されていくのかもしれない。

 

自分にとっての常識や価値観、当たり前のルールから明らかに逸脱していることの不安感。けれどどこかで諦観の果てのやわらぎのような感触もあるような気がする。 なんだろう。行き場のない人に「あなたはあっちですよ」と、案内をしてくれているような。それはもしかすると死の世界へのいざないかもしれないのだが。

この一首だけでいくらでも時間を費やせそうだ。それくらい入り組んだ感情を、このみじかい詩は閉じ込めている。 この歌って主人公もいなけりゃ「君」もいない。殺風景なラフスケッチのようにかわいた感触。だれの、どんな感情も読み取れない。

 

我々があたりまえに生きているこの世界に、ひとしれずポッカリと大穴があいていて 下ばかり向いている人だけがそれを見つけ、覗き込んで、ずっと目が離せないままでいる。 なんだかそういう、残酷な世界のバグのような光景に惹きつけられてしまうのだ。

 

中澤系さんはこういった感触の歌をたくさん遺している。 遺していると書いたのは、調べればすぐわかることだが、中澤系さんはすでに他界している

コミュニケーションがとれない難病におかされ寝たきりになり、2009年に息を引き取ったという。

本作に収録されている代表的な連作「Uta0001. txt」は1998年に賞を取っているのだが その作品も含め、ディストピア的な世界観で非常に現代的なテーマを取り上げている。 windows98が発売されたその年の前後は、インターネットは少しずつ一般に普及を始めていたころだ。そんな時代にも関わらず、いやだからこそか、この作品は非常に現代的でありながら世紀末的な厭世観があふれんばかりに詰め込まれている。

新しい時代や技術の到来は、人間本来の孤独をより濃く深めていく作用もあるのかもしれない。 そういった時代の背景も踏まえるとよりこの作品のすごみを感じられるように思う。

 

 

ぼくたちはゆるされていた そのあとだ それに気づかずいたのも悪い

「そのあと」・・・・・・なにが起きたのかは何も示されていない。

許されていたとされるものがなんだったのか、当てはめるワードを変えればまるで景色が変わってくるところも面白く、懐の深い歌だな。例えば「恋」でもいい。「知識」でも、「命」でもいいと思う。

とは根底にあるのは「許し」の肯定感は、すでに失われているということ。許されていたことは、すでに手遅れになってから知るのだ。

この感覚。どうしようもなくなってしまった喪失感。 このポエジーが本当にひたすらに続くものだから、精神状態がよろしくないと本当にメンタルを持っていかれてしまう。

 

小さめにきざんでおいてくれないか口を大きく開ける気はない

これも社会のシステム性を感じさせる歌だ。受動的な生命。

中澤系の歌の歌はこういった不思議な表明や問いかけなど、だれかにむけた言葉で表現されている場合も特徴的だと思う。そういう評を見かけてなるほどと思った。 →現代歌人ファイルその7・中澤系 http://bokutachi.hatenadiary.jp/entry/20081022/1224676758

宛先のないメッセージのようで、それはまるで社会構造や神といった超越的な存在に向けられているようにも感じられる。(もしかしら専門に哲学を学んでいたという経歴も影響しているのだろうか) だからこれは孤独な人間が窮屈な社会のなかでせめて発したかった極限の言葉たちなのだろう。

しかしけしてこの歌集は一人の苦しみからくる歌ばかりではない。

 

長き夏の翳りゆきうす赤く染まる世界のなかに二人は

いた。「二人」いたぞ!でもなんか不穏なんだよ・・・

モノクロの世界ではなく、めずらしく色彩感覚の豊かな歌だと思う。夏。翳り。赤。 本で読んでいるとふとこういった温度感のある歌にまれに当たる。ほんの少し心を安らげることができる瞬間・・・ それでもこんな歌にも喪失感を強く香っている。だからこそ閃光を見たあとのように網膜に影がのこり続ける。焼き付いて忘れられない思い出のように。

 

はなれゆく心地したりき快楽のためにかたちを変えたる時に

状況としてはあきらかなんだが、こんな性愛の歌も「快楽のため」などどこか冷めた諦観のようなものがまとわりつく。 どれだけ深く愛し合っていたとしても、他者の存在がもたらす違和感があり続けることが「はなれゆく心地」と表現されているのではないかと思う。

ちがう精神と肉体を持った別の個体である。 快楽のためとわかっていながら、それでも寂しさが募る生物の機能。生殖のためにもたらされたシステムに踊らされるばかり。

 

ハンカチを落とされたあとふりかえるまでをどれだけ耐えられたかだ

ここまで連続して他者の存在が歌われている作品を挙げてきたが、この作品はとくにドキッとさせられる。 子供のころ遊んだハンカチ落しを思い出す。言うなればこの歌はそのルールを歌にしているだけなのだが、視点と言い回しでこうも意味深くなるかと衝撃的だ。

ハンカチおとしは言うなれば、標的をみつけその者を騙す遊びだ。 この歌はその標的となった側からの言葉だが、不思議なことに「振り返るまでを耐える」という心の動きがある。なぜか。

信じたいのではないだろうか。 まさか自分ではないだろう、そんなはずがないじゃないかと。 けれどこの歌はすでに自分が標的となっているところから始まり、自分がいつそれに気付けるのかいう、いうなれば騙されている一瞬の祈りが込められているのだ。 なんて残酷で。しかも面白い視点から放たれた歌だろう。

 

この歌集はけして孤独なのではなく、常に切ないほど他者を希求する心が描かれている。そしてその先の安堵も、絶望も、感傷も、祈望も。

 

ぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわ

そしてこれも代表作だろう。 この歌集を最後の最後を飾っているのもこの歌だ。

エラーを吐いたPCをシャットダウンするかのように言葉は遮断される。

この肉体がマシンだとしたら、いつかこんな風なエラーメッセージが流れ出すのかもしれない。なんてことない日常、安らかなシステムのなかで生命を循環させ続ける僕ら。こわれてしまったぼくたち。

終われるのだろうか。この歌のように。 こわれても、こわれつづけてもなお、生き続けなくてはならないのかもしれないんだ、ほんとうは。 なにも生み出せないガラクタとしてだれかに使われそして棄てられ、 新しいものと古いものが循環していくこの社会というシステム。 人類が社会のシステムに支配された機械のひとつのような感覚。

「ぼくたちはこわ」で途切れたことで無限の奥行を生み出している、すさまじい技だと思う。 歌集としても、この歌のこの言葉の途中で意識が落ちるという構成の美しさもある。 歌集をラストを飾るにはあまりにも完璧な一首で、この歌を100%味わうにはなんにせよこの本を読んでみるほかないと思う。

 

ネットでこの歌集をもとにした音源も発表されていたりする。

https://twitter.com/UNCIVILIZED_GM/status/1253350257997602822

いや、怖すぎんか・・・?

 

ネットを見ても、この歌集に関する話題はかなり多い方じゃないかと思う。

この本は氏の唯一の歌集だが、本当に多くの人を引き付けているのだ。

 

前回の更新よりかはもうすこしこの大好きな本について深堀してみたけど、まだ足りないな、全部を言語化できなくても、もっとすごいんだこの本は。自分では読み取れないほどの深淵があって、大切な感情があって、どうしようもなく孤独なんだ。ぜんぜん底に手が触れてない感覚がある。もっと読みたい。もっと読みたかったんだよな、中澤系さんの作品が。

 

 

 

なおもなおもその病巣は小康を保ち続けるらしと未明に

 

 

 

本当に未来はあるの 確かにあるの 『ドラえもん短歌』

  ドラえもん短歌 (小学館文庫)

 

いつだって「どこでもいい」と言う君じゃどこでもドアは使えないよね

 

ドラえもんをテーマに、ブログを通じて一般から短歌を募って制作された一冊。アンソロジー歌集と言えるのかも。

ここで見いだされたり、その後にプロとなった歌人の作品も収録。しかし基本的にはドラえもんが好きな一般の人々の素朴な視点から歌われたものが多い。

ここ1年ほどで短歌に興味を持っていろいろ読みだした自分にとって、まさに短歌初心者にぴったりと一冊だった。

とにかく読みやすい。うすめの文庫本で1ページ1首なのでマジですぐ読める。 「ドラえもん」というテーマも明快で、しかもその中で読み手ごとに違った視点で切り口で31文字の詩が詠まれていく。 サクサクよめて「なるほど!」とか「ここを突くか?」とか「わかる(わかるわ)(Ⓒ川島瑞樹)」とかが連発していくのが楽しいのだ。 すぐに一冊読めてしまうボリュームのアンソロジー歌集なんだけれど、歌の味がバラバラなおかげか妙に中毒性がある。 小学生向けに作られているような本ではなるけれど、小学生向けとは到底思えない大人の悲哀を描いた歌も数多い。 その振れ幅の広さも魅力のひとつなのだ。

例えばこんな歌

 

自転車で君を家まで送ってた どこでもドアがなくてよかった

素直にめちゃくちゃいい風景が浮かぶ。

技術は次々に進歩し塗り替えられ、いつしか世界は「自転車で君を家まで送」るような光景をなくしてしまうかもしれない。

けれどいま、まさにその幸福の渦中にいる主人公が「どこでもドアがなくてよかった」とたっぷりと余韻を残したモノローグ。これが肝なんだよな。便利な道具はもちろんほしい、でも今はそうじゃない。

ドラえもんへのアンチテーゼでもあると思うし、一方でドラえもんの漫画の中でも道具では解決できない問題や得られない幸福は描かれているわけで、様々なリスペクトを感じる。 歌自体の好みもあるけど個人的に「ザ・ドラえもん短歌」な一首だ。

 

武道館ファイナルをむかえジャイアンが不遇時代をついに語った

ジャイアンめっちゃ成功してるやん!

思わず笑ってしまう未来予想図。「ついに語った」の仰々しさとおさまりの良さも笑えるポイント。ロック音楽雑誌のインタビューかよ。

 

スネ夫って粋な髪型してるよな漢字で書くと「司」に似てる

わ、わかる気がする。思いついたまんま歌にしました、な無防備なテンションがまた面白い脱力系な一首。

 

かと思えば

奥さんがどこでもドアを持ってたらあたしたちもう会えなくなるね

いやその角度のえぐり込みアリか?ドラえもんだぞ

明らかに不倫の歌だが「もしドラえもんが本当にいたら?」という夢想を、このシチュエーションに持ってきたことで不毛な問いかけの切なさが出ている。

ドラえもんの秘密道具を「夢をかなえるアイテム」ではなく「夢のような日々を終わらせる脅威」として思い描いてるのも視点が面白い。

ぼくらの世界にいま「どこでもドア」はない。それでもそんな夢想をしてしまうのは、この関係を終わらせられるきっかけを待っているからなのかもしれない。

 

君と僕 ため息だけで会話して翻訳コンニャク出番はこない

翻訳コンニャクが必要なくらい距離ができてしまっても、そもそも会話がなければ道具の出番もないのだ。

ヒリヒリとした感覚が空気中に満ち満ちているのが浮かぶ一首。

 

あやまちはムードもりあげ楽団が変にムードをもりあげたせい

語句のリフレインが妙なテンポになっててクセになる。歌われてるのはしかも大人のビターな後悔だったりする。いいか。ドラえもんだぞ。

本当にムードもりあげ楽団が登場しちゃった世界を歌っているのかもしれないし、「私」の心がわんちゃか騒いでしまっただけなのかもしれない。ファニーな響きのかわいらしさがある歌で好き。

 

取り上げてみると、ドラえもんが実に様々な角度から鑑賞できる作品だということが改めて示されているように思う。

ドラえもんのキャラクターたちに感情移入したり、 彼らの未来をもっと踏み込んでイメージしてみたり、 ドラえもんで描かれる古きよき時代に思いをはせたり、 ドラえもんのいない、秘密道具もないこの現実で生き抜いていく自分たちを振り返ったり・・・

日本人にこれほど浸透している作品・コンテンツだからこそ共通言語として、このようなバラエティに富んだ歌集が誕生できたんだろうな。

ドラえもんのコンテンツの強度だし、歌集として企画の勝利でもあると感じる。

技巧派な歌というより素直な歌が非常に多いので、自分のようなビギナーにも優しい。マジで。やっぱ最初って歌の意味するところがわからんとマジでちんぷんかんぷん。

500円くらいで買える本なので軽率におすすめしたい。

 

 

大丈夫 タイムマシンがなくっても あの日のことは忘れないから